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IS~夢を追い求める者~

作者:かやちゃ
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最終章:夢を追い続けて
  第53話「私も動かなきゃ」

 
前書き
―――...私達も、変わらなければ。

再び学園side。
秋十と言うより、マドカを中心とした女性陣メインです。
 

 




       =マドカside=





「ふっ、はっ....!」

「甘いよ!」

 私となのはの木刀がぶつかり合い、私の木刀が弾かれる。
 御神流の一つ“徹”の効果だ。これのせいでまともに受けると衝撃が貫通する。

「そぉりゃああっ!」

「えっ!?」

 私は別に二刀流ではないため、弾かれた事で素手になる。
 でも、それで終わるつもりは毛頭ない。これは剣の戦いじゃないからね。
 なのはの腕を掴んで、思いっきり背負い投げを繰り出す。

「っ...!」

「はぁっ!」

「くぅっ....!」

 投げた際に、空中でなのはは体勢を立て直す。
 そこで、着地した所に掌底を放ち、それを防がせる事で私はそこを通り過ぎる。

「......。」

「...仕切り直し...だね。」

 弾かれた木刀を拾い、仕切り直しとなる。
 お互い、動きに慣れてきたからか、決着が付かなくなってきたなぁ...。

「二人共、悪いがそこまでだ。」

「シグナム...。」

「先生が呼んでいる。」

「了解。すぐに向かうよ。」

 シグナムに中断させられ、私達は校舎の方へ向かう。





「先生!...って、これは...。」

「なに、癇癪を起こしただけだ。既に鎮圧してある。」

 校舎にある食堂の一角。そこに冬姉はいた。
 そして、傍には頭を押さえながら正座している生徒が二人...。

「...ISが使えなくなった事で、皆さんの心が不安定になっているんです。それで、このような事が起きて...。織斑先生がいなければ、影響は広がっていました。」

「そう言う事...。...冬姉、私達を呼んだ訳は?」

 アミタから経緯を聞き、とりあえず私は冬姉に呼んだ理由を聞く。

「お前たち...それとお前たちが信用できる者に生徒のまとめ役を担ってもらいたい。本来は教師の仕事なのだが、外の警戒と内側での怪しい動きを何とかしなければならないからな。」

「内側...もしかして...。」

「教師にも女尊男卑の連中はいる。むしろ、今まで表立っていなかったのかと驚く程だ。」

 教師も教師で様々な対応に追われている。
 学園長も取材の対応でてんてこ舞いになってたし、外への警戒も怠れない。
 なるべく生徒を不安にさせまいと奔走しているらしいけど...。

「(“外への警戒”をしている時点で、こうなるのは目に見えてるか...。)」

 正座させられている二人は、不安や恐怖、怒りや苛立ちなどが混ざったような複雑な表情をしていた。

「(私達も、秋兄みたいに色々やっていかなくちゃ。)」

 今日は休日のため、秋兄は一日中なのはの家に行っている。
 あの桜さんに迫った恭也さんによる修行を受けるためにね。
 ...だから、私達も何かやっていかないと。

「それと、だ。マドカ、お前には一夏の様子も見てくれ。」

「えっ、私が...?」

「いつもなら私が見ていたのだがな...。私にも都合があってな。」

「んー、気は進まないけど、わかったよ。」

 あいつなんか、もうどうでもいいと思ってるんだけどね。
 冬姉も、もう姉としてではなく、教師としてしか見てないし。

「あれ?でも秋兄には...。」

「既にメールで伝え、了承の返事が来ている。」

「あ、もう済んでたんだ。」

 秋兄にも既に伝えてあるらしい。

「では任せたぞ。私はこいつらを連れて別室で朝食をとる。」

「はーい。」

 騒動を起こした人と一緒に食べる気分ではないだろう。
 だから、冬姉はその二人を連れて、別の場所で食べる事にしたらしい。

「...とりあえず、今の話をセシリア達にも話しておかないと。」

 各組に二人は纏め役が必要だろう。
 一組は代表候補生が何人もいるし、四組も私と簪、なのはで十分だろう。
 だけど、二組と四組はそれぞれ鈴とシグナムぐらいしかまとめ役に適している人を知らない。

「(それに、いつ皆に限界が来るかもわからない。)」

 ISが動かせなくなった今、IS学園の状況は非常に不安定だ。
 先日あった桜さん達の襲撃でユーリが攫われた事も影響して、生徒の皆も非常に不安になっている。...そこに、また襲撃などの事件が起きたら...。

「...考えるのは後だね。なのは、シグナム、朝食を取ったらいつもの面子にさっきの話を伝えておいて。」

「分かった。」

「マドカちゃんはどうするの?」

「私はもう一つ仕事があるから。...気は進まないけどね。」

 反省してればいいんだけどねー。
 未だに顔見せとかすらないって事は、それもなさそうだし。
 とりあえず、適当なメニューを持って行こうかな。







 寮の一番隅とも言える場所。そこにある部屋に、私は料理を持って来た。
 ノックなんてする必要がない。冬姉から貰っておいた鍵を使って開ける。

「...ふぅん、案外大人しくしてるんだ。」

「....マドカ...?」

 まぁ、普段は冬姉が面倒見てたんだから、暴れようにも暴れられないからね。
 鍵もかかっているし、大人しくしていた方が楽なのだろう。

「もしかして俺を...。」

「そう思っているのなら本当に頭が沸いてるね。私にだって洗脳された記憶があるんだよ?もしお前に人権が適用されてなかったら、今この場で殺してもいいくらいだよ?」

「っ.....。」

 まさか助けに来たと思うとはね。
 本当、いつまでも懲りない奴だよ。

「人の心を弄んだ癖に、いつまでも思い通りになるとは思わない事だね。...と言うか、これは桜さんや秋兄、冬姉にも言われてる事だよね。」

「うぐ....。」

 近くにあったテーブルに朝食を置いておく。

「懲りないのなら相応の末路が待ってるだけだけどさ、私たちはお前に構ってられないんだよね。IS学園を含め、世界中が大混乱。私たちは桜さん達を止めないといけない。...まぁ、白式に見限られたお前に言っても関係ないけど。」

「また、あいつが....!」

 冬姉はどこまで話したのかな?忙しいからあまり話せてなさそうだけど...。

「なんで、俺とあいつでこんなに扱いが違うんだ!あいつだって世界中を引っ掻き回して...!」

「はぁ?お前と一緒にしないでくれる?桜さんは...いや、桜さんと束さん、及びついて行った人たちは、お前が関与した事を尻拭いしているようなものだよ?」

「は...?どういう事だ...!?」

 私も桜さんが去る前に聞かされた事だから、詳しくは知らない。
 けど、本来ならISは今とは違う形で知れ渡っているはずだったらしい。

「束さんはね、本来ならあの時点でISを公表しようとする事はなかったの。だって、女性にしか使えない欠陥を抱えていたんだから。それを“原作”だか何だか知らない展開に沿わせようと、お前が洗脳して仕向けたんでしょ?ほら、お前が関係している。」

「っ......!」

「ここで馬鹿みたいに責めてあげようか?“お前のせいだ!”ってね?」

 ...っと、ここでこんな奴と話してる場合じゃなかった。

「せいぜい、後悔しておくんだね。自分が何をしでかしたのかを。」

「ぐ...くそ....!」

「じゃあね。私だって忙しいんだ。」

 扉を閉め、鍵をかけておく。
 さて、一度食堂に戻っておこうかな。





「....そう言えば、二年と三年はどうしてるんだろう。」

「二年はお嬢様が、三年はお姉ちゃんがいるけどー...確かにどうしてるんだろうねー。」

 自販機の前で一休みしながら、私はふと気になった事を呟く。
 すると、いつの間にかいた本音が私の呟きに答えてくれた。

「生徒会だけじゃ、手が回らないだろうし...もしかして、冬姉が忙しいのってそっちの対処に追われているからかな?」

「そうなんじゃないかな~?先生、まどっち達の事信頼してるし、任せてるんだと思うよ~?」

「だよねー。...ところで、本音は簪の所にいなくていいの?従者なのに。」

 特に、今の状況は芳しくない。
 安全確保のためにも付いているべきだと思うんだけど...。

「かんちゃんにはなのちゃんが付いてるから大丈夫だよー。御神の人は要人警護も得意だし、私より強いからねー。」

「...それもそうだね。なのは、滅茶苦茶強いからね...。」

 なのは曰く、自分はまだまだ“完成”していないらしい。
 ...うん、確かに恭也さんはさらに上を行くよ?でも、それで完成してないんだ...。

「あ、そうだ。お姉ちゃんからなんだけどねー。ゆーちゃんの元姉の...誰だっけ~?まぁ、その人とか、女尊男卑の思考の人達が怪しい動きしてるってー。」

「一応、冬姉から聞いてたけど...。ふぅん、ユーリの元姉が...ね。」

 多分、ユーリがいなくなってまた調子に乗っているのだろう。
 ...あいつ同様、懲りない奴だね。

「ありがと。こっちからも警戒しておくよ。...と言うか、会ったら問い詰めてみる。」

 虚さんだけだと手が回り切らないだろうし...ね。
 と言うか、ユーリの友人として、元姉とは言え蛮行は許せない。

「...女尊男卑の風潮に染められた人とそうでない人が、男女両方で出てきたみたいだね。」

「女性の方は分かるけど~、男性もなの~?」

「“ISが使えなくなった”と言う事態に便乗して、無関係な女性をも巻き込んで復讐してる奴らの事だよ。今まで虐げられてきたという事を免罪符に、自分勝手してるからね。」

「あー...。」

 既に、IS学園にもテレビニュースである程度知れ渡っている。
 だからこそ、さらに生徒の皆は外出する気をなくしていた。

「確かに虐げてきた本人に対して、何らかの報復を与える事を否定はしないよ。けど、無関係な人を巻き込んだり、“女性だから”と言う理由だけでそれをするのは...正直、女尊男卑の連中と何も変わらない。」

「そうだよね~。皆仲良しが一番なのにね~。」

 それはそれとして、これからどうしていくべきだろうか。
 しばらくは冬姉に言われた通りにクラスの皆を纏めていればいいけど...。

「(...IS学園も、長くはもたない。)」

 ISが使えなくなり、世界中はその対処に追われている。
 IS学園もてんてこ舞いで、政府などからの支援もなくなっている。
 ...おそらく、長く持って一年。襲撃などの事件があればさらに短くなるだろう。

「(タイムリミットは短い。それまでに、仲間を集めて桜さん達の居場所を特定...とまでは行かなくても、この混乱している世界を変えれる力を集めないと...。)」

 そのためには、私達も変わらなくてはいけない。
 秋兄や冬姉に頼ってばかりじゃなく、私も私にしかできない事をやらなくちゃ。

「何か決意した感じだね~。私に手伝える事があったら手伝うよ~?」

「...そうだね。じゃあ、まずは...本音からも友人とかに声を掛けて行って。本音ならそのふわふわした雰囲気で不安定な精神も落ち着かせられるだろうし。」

「お~。任せるのだぁ~!よーし、早速行ってくるね~。」

 ...ああ見えて桜さんを唸らせる程の切れ者だ。
 少なくとも“裏”に関わっている分、マイナスの結果は出さないだろう。

「....ままならないねぇ...。」

 自販機で買ったジュースを一飲みし、私はそうぼやく。
 やる事は多い...けど、どれから手を付けるべきか...。







「...む、マドカか。」

「ラウラ。それにシャルと箒...後、静寐も?」

 昼食を食べ終わり、一部生徒に怪しい動きがないか見回っていると、ラウラを筆頭にして一組の皆がそこにいた。

「...正直、私にこんな役目は合ってないと思うんだけど...。」

「何を言う。兄様に鍛えてもらった分、他の者より経験がある。それがISの動きでの話だとしても、その経験が普段にも生かされる。だから恥じる事はない。」

「うーん...。」

 ...なんだか、静寐は場違いだと感じているらしい。
 ラウラに同行させてる訳を言われてもピンとこないらしいし。

「セシリアの方は?」

「一組の方に残ってもらってるよ。誰かが見ておいた方がいいからね。」

 世界中が混乱している今、IS学園での授業は止まっている。
 高校生としての基礎知識などの授業はあるが、IS関連の授業は滞っているからね。
 そして、食堂での食事も大抵クラスで固まっている。安心感を求めるためにだ。
 中には仲がいい人と食べた方が安心できる人もいるみたいだけど...。
 だから、セシリアはクラスを纏めるために残っているようだ。

「本音から聞いておいた。碌でもない事を考えている生徒がいるとな。」

「そうなんだよね。このご時勢に余計な事をしてくれるよ。」

「一年の方は私達が見ておくつもりだが...。」

「問題は先輩方だよねぇ...。」

 先輩方にも専用機持ちや代表候補生はいる。
 ...だが、だからと言って私達のようにISを動かせる訳ではない。
 しかも、その専用気持ちすら怪しい動きに加担している可能性もあるのだ。
 それだと、生徒会長とかだけじゃ、手が足りないんだよね...。

「...よし、私が警戒しておくよ。」

「大丈夫なのか?」

「これでも桜さん達と一緒にいたんだよ?大抵の事は何でもできるし、それに、怪しい動きをしている連中の狙いは、おそらく私達。...と言うよりは、ワールド・レボリューションに所属している人だね。つまり、私や秋兄、シャルやフローリアン先生達だね。後は、元男性操縦者として織斑一夏。」

「....そうか。」

 本音曰く女尊男卑の思想の連中だし、少なくとも秋兄とあいつは確実だろう。
 そして、桜さんが所属していたという理由で、同じ所属の私達も...と言う訳だ。

「先生にも言っておくつもりだけど、シャルも気を付けてね。いつも味方が傍にいるとは限らないから。」

「う、うん。...マドカこそ、気を付けてね。」

「大丈夫。こういった類には慣れているから。」

 亡国企業にいた時の経験が活きる時だね。
 ただの学生や教師に負けるつもりは毛頭ないよ。

「じゃあ、私は私で色々調査してみるよ。そっちは任せたよ。」

 普段は桜さんや秋兄と同行としていたけど、久しぶりに単独行動だ。
 冬姉や、生徒会長とは情報交換とために関わったりするけどね。





「...やっぱりそう上手くはいかないか...。」

 しばらくして、私は一息つきながらそうぼやいていた。
 単独行動はできても、情報収集は得意じゃないからね。私。
 いつもはスコールやオータムから事前に情報を貰ってから行動してたしなぁ...。

「...あの二人も桜さんについて行ったからなぁ...。」

 うーん...前情報の有無でここまで変わるとは...。

「(...そういえば、以前生徒に亡国企業の人間を忍ばせているって聞いたっけ?)」

 私の洗脳が解かれて、会社を立ち上げてしばらくした頃。
 スコールにそんな話を聞かされた覚えがある。

「(でも、名前を聞いてないんだよね。コードネームは覚えてるけど。)」

 確か...スコールと同じ苗字で、“レイン・ミューゼル”だっけ?
 うーん、それっぽい人にそれとなくこの名前を呟いたらいいかな。

「(何年生かもわからないけど、聞かされた時期から考えて...三年生かな?)」

 聞かされた時点で入学しているようだったから、合っているはず。
 亡国企業の人間なら、今の状況でも平静を保っているだろうし、そういった人を探そう。





「.....んー....。」

 夕食の時間。再び食堂に様々な生徒が集う。
 三年生が固まっているエリアで、私は適当に歩きながら件の生徒を探す。

「(ついでに怪しい生徒も見つけられたらいいんだけどね...。)」

 さすがに食堂でそんな怪しい動きはなかった。
 ...と言うか、件の生徒っぽい人すらいなかった。

「(後は...はぐれエリアかな?)」

 基本的にクラスや学年で固まっているけど、一部はそうでない人もいる。
 大体が隅の方だったり、グループとグループの間のテーブルとかにいる。
 そう言うのを纏めてはぐれエリアって呼んでるけど...まぁ、どうでもいい事か。

「(...って、この状況でイチャつくって凄いな...。しかも女子同士。)」

 ふと、女子同士でイチャついている...正確に言えば、片方が今の状況で滅入っているのを癒していると言うべきかな。
 そんな二人がそこにいた。どうやら、二年と三年生らしい。
 癒しているのは三年生の方だ。

「(女性同士のカップリングが増えたのも、女尊男卑の影響かなー。)」

 視線に気づかれないように逸らしつつ、どうでもいい事を考える。
 ...どちらかと言えば、女尊男卑の風潮で女性同士の恋愛がおかしく見られなくなったから、増えたというよりも表面化したのだろう。

「...じゃあ、飲み物取ってくるから、大人しく待っとけよ。」

「わ、わかったッス...。」

 そこで、三年生の方が席を立ち、飲み物を取りに行くらしい。

「(.....ん....?)」

 その時、私は違和感を感じ取った。
 なんというか、歩き方が普通じゃなかったのだ。
 普通じゃないと言っても、一般的な歩き方ではないってだけで...。
 ...つまり、“何かしら心得ている”歩き方な訳だ。

「........。」

 ...これは...もしかすると、もしかするかな?
 一応、なのはみたいな武術を習っているだけっていう前例もあるけど。
 いや、なのはもなのはで親や兄が“裏”に関わってるんだけどね。

「(ちょうどすれ違う。...カマかけるだけでいいかな。)」

 無反応だったらハズレ。反応を示せばアタリだ。
 知らなければ反応があっても独り言を聞いただけって反応だろう。

「....レイン・ミューゼル。」

「っ....。」

 ...かかった。まさかの当たりだ。
 ここまで簡単に見つかるとは思ってなかったけど...好都合。

「...後で話をお願いします。」

「ちっ...迂闊だった...わかったよ。」

 コードネームで呼ばれた事から、相当警戒されているようだ。
 まぁ、仕方ない。私もそれが分かってて言ったのだから。
 だけど、これで協力者が得られるかもしれない。
 ...彼女さんも巻き込むかもしれないけど。

「場所は?」

「学生寮の裏手でいいでしょう。時間は手が空いたらいつでも。」

「分かった。」

 場所も指定したし、後は何とかして協力してくれるか頼みこまないとね。







「...さすがに、夜も暑くなってきたかな...。」

 今は夏。もうすぐ夏休みの時期だ。
 あの後、適当に怪しい人がいないか見回った後、私は待ち合わせ場所に来ていた。
 しばらく待ちぼうけするだろうから、自前の小説を読んで時間を潰している。

「....割と早めに来ましたね。」

「手が空いたらいつでもと言っただろう。」

 食堂で会った女生徒改め、ダリル・ケイシーさんがやってきた。
 ちなみに、名前はあの後虚さんに聞いた。

「ダリル・ケイシーさん...ここではレイン・ミューゼルと呼びましょうか。」

「...アタシの聞き間違いじゃなかったか...。...お決まりの言葉で悪いが、どうしてその名前を知っている?」

 最大限警戒した状態で、彼女は聞いてくる。
 元々穏便派に所属していたとはいえ、コードネームが知られてたらこうなるよね。

「コードネーム“M”。それが以前の私の名前です。」

「.....“同類”か。」

「まぁ、そういう事ですね。貴女の事...と言うより、貴女のコードネームはスコール本人から以前に聞かされた事がありまして。」

「....はぁ、無駄に警戒して損した。」

 溜め息を吐き、彼女は力を抜く。
 同じ亡国企業の人間だと知って、少しは安心したのだろう。

「なぜ今更アタシに接触しに来た?スコールからは任務の必要がなくなったから学園生活を満喫しろと言われたんだが...。」

「これは亡国企業としてではなく、私個人の用ですから。スコールもオータムも、桜さん達について行っていますから関係ありません。」

 通りで接触してこなかった訳だ。
 ...で、満喫した結果スコールみたいに女性同士のカップルに...。

「お前個人か...。」

「...簡潔に言えば、情報収集を手伝ってほしいんです。三年生の方を。二年生と一年生は私と生徒会長で補うので。」

「情報収集....もしかして、怪しい動きをしている奴らの事か?」

 どうやら、少しは知っているようだ。話が早い。

「そうです。ISに乗れなくなった今の状況に乗じて、何やら企んでいるようで...。」

「なるほどな...。まぁ、フォルテも巻き込まれたら嫌だから協力するぜ。」

「助かります。」

 フォルテ...おそらく、彼女さんの事だろう。
 あの人は一般の生徒と言った所だろうから、巻き込みたくないのもわかる。

「しかし、スコールとオータムもあっち側か...。」

「ただ世界を引っ掻き回すのが目的ではない....と、関わってきた私達は思ってます。」

「...信頼してるんだな。」

「やる事為す事が非常識でも、根は良い人ですから。」

 まぁ、それでも疲れるんだけどね。
 シャルのお父さんもその非常識さに胃薬買おうとしてたし。
 せっかく解放されたのに今度は桜さん達に苦労しちゃってたよねあの人。

「話はそれだけです。...では、頼みました。」

「ああ。アタシに任せときな。」

「はい。...あ、それと...ISときっちり“対話”すれば、今までのように乗る事ができますよ。多分、その内冬姉から話が行くと思います。」

 それだけ言って、私達は分かれた。

 とりあえず、これで協力者を得た。
 後は、怪しい奴らを炙り出していく事になるが...。

「(...うーん、その前にまた何か起こりそうだなぁ...。)」

 ダリル先輩と別れた後、ふと空を見上げる。
 まるで、これからの事を表すかのように、空は雲に覆われていた。

「(...私も、なのはやシグナムと腕を磨き続けよう。)」

 秋兄はどんどん強くなっている。今までの努力の成果がついに実り出したのだ。
 だから、秋兄に負けないように、私も強くならなきゃ...ね。











 ...待っててよね。桜さん、束さん、スコール、オータム。
 それと、お母さん、お父さん。.....突っ走った事、後悔させてやるんだから。











 
 

 
後書き
まだ懲りてなかった一夏(転生者)君。
もうスポットは当たりませんが、チョイ役としてまだ出番はあります。(予定)

そして、マドカが裏で色々と動いています。
一応楯無とかはその動きに気づいていますが、事前に交渉してるので黙認しています。 
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