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歌集「春雪花」

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 夏の宵に

  蝉の遠音の

    侘しける

 わが心根は

    君に届かず



 暑い夏の宵闇…遠くからは鳴き止まぬ蝉の声が響いてくる…。

 連れ合いを求め…生を紡ぐために鳴き続ける蝉…。

 鳴く価値すらない私には…ただ侘しいばかり…。

 私の心など知る由もない彼…この宵闇は、まるで牢獄のようにさえ感じてしまう…。



 日も絶へて

  想い灯すや

   星影の

 綴るものなき

    恋ぞ虚しき



 日も暮れて…寂しさの増す暗い夜が世界を覆う…。

 雲間にぽつりぽつりと垣間見える星々は、旧き物語りを呼び覚ます…。

 遠い昔、どれ程の恋が生まれ…消えていったことだろう…。

 全てが記憶される訳ではない…。

 私のこの想いも…いずれは過去となり、人知れず消えてゆく…。


 虚しいだけの恋…侘しいばかりの人生…。


 これが私…なのだな…。



 
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