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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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意外な攻略法

 
前書き
フェアリーテイル終わっちゃいましたね。残念です。もっと続いても良かったのになぁとか思ったりするけど、部屋の本棚に漫画が溢れてきてたからこれでよかったかもと納得させることにする(笑)
次はアニメの方ですね、個人的にはディマリアにシェリアとカグラが剥かれるところがちゃんと放送できるのか、それだけが心配です(笑) 

 
「イザベリーもやられたか。残すは私だけになってしまったようだな」

小さく息をついた後、ボソッと呟いた黄緑色の髪をした青年。彼の瞳に映るのは、ターゲットを守るために立つ三人の少女たち。

「シリル、シェリア、来るよ」
「わかってるよ」
「大丈夫!!任せて!!」

藍髪の少女が白髪の老人と翡翠色の長い髪をした女性を避難させつつ、前に立つ二人に警戒を促す。

「天空魔法を使う三人・・・いや、今使えるのは二人か」

三人の姿を見ながらそう呟いた青年は、チラリとこの場から立ち去ろうとする老人を視界に捉える。

「隙あり!!」

その目の動きをシェリアは見逃さなかった。自分たちから意識を外したホッパー目掛け、黒い風を纏わせた右腕を向ける。

「天神の北風(ボレアス)!!」

勢いよく放たれた神の風。それは瞬く間に敵である青年を・・・

ヒョイ

飲み込もうとしたが、軽やかなステップであっさりと回避されてしまった。

「え・・・」

自分たちが意識から離れていると思っていたはずなのに、まるで予想していたかのように交わされたことに目を白黒させるシェリア。だが、彼女は驚くことよりも先に、敵との距離が詰まっていることを気にするべきだった。

「ハァッ!!」
「キャッ!!」

黒風を軽く交わしたホッパーは、自ら近づいてきた少女に拳を振るう。技を交わされたことに驚愕していたシェリアは、反応が遅れその一撃を受けてしまった。

「シェリア!!」
「ウェンディ!!こっちはいいから!!」

友人がやられたことに動揺して足を止めようとした天空の巫女に待ったをかけるシリル。それを受けて自分がやらなければいけないことを思い出したウェンディは、敵に隙を見せないように部屋から出ていこうとする。

(ニヤッ)

「!!」

狙われている二人を撤退させつつ、自身も退避しようとしていたところ、突然目が合ったホッパーにギョッとする。

ダンッ

そして視線があったと思った直後、先程まで距離を取れていたはずのその人物が目の前にいたことにさらなる恐怖が掻き立てられた。

「フッ!!」

ただただ驚かされていた少女に、何も思考させる時間を与えず蹴りを放とうとする。

水竜の盾(ウォーターシールド)!!」

だが、ウェンディの前に水の盾が地面から現れ、彼の攻撃はカットされてしまった。

「ほぅ、いい反応だね」

感心したようにシリルの方へと振り返るホッパー。そこには倒れているシェリアを庇うように前に立つシリルの姿があった。

「お前の相手は俺だ」
「いい目をしている」

真剣そのものの目をしている少女?を見据え、一度ターゲットから完全に頭を切り替えるホッパー。互いを睨み、しばし膠着状態の二人。先に動いたのは、小さな水の竜だった。

「水竜の・・・」

体を捻り、頬を膨らませ魔力を高める。そして目一杯魔力が高まったところで、一気にそれを解放する。

「咆哮!!」

小さな体から放たれた、それに似つかわしくない威力の水の波動。それに対し、青年は体を横にずらしあっさりと回避した。

(え!?今シリルが打つより早く動いてたような・・・)

先の敵の攻撃により引くに引けなくなってしまったウェンディが、存在を気付かれないようにドアからわずかに顔を覗かせているが、そんな彼女はホッパーの動きを見て疑問を持っていた。

「本当だ・・・」

それに対し、シリルは何かを確認し終えたのか、ボソッとそう呟いた後、わずかに笑みを浮かべる。

「シリル!!気を付けてね!!」
「大丈夫!!」

最初に攻撃を受けていたシェリアからの声に背を向けたまま答えると、水竜は全速力で突進していく。

「残念だけど、君たちの攻撃は私に当たることはない」

一直線に突っ込んでくる小さな竜を、冷静に見ている青年は、水を纏った拳を握り締めるその姿をじっと見ている。

「水竜の・・・鉄拳!!」

何の小細工もなく、力での勝負に持ち込もうとしているのか、そのままの勢いで拳を振るう。それを見極めたのか、ホッパーはわずかに頭を動かしそれを回避しようとする。

ゴンッ

「!?」

余裕の表情で交わしたはずのホッパー。しかし、なぜかずらしたはずの顔面に小さな拳が突き刺さり、後方へ倒れそうになる。

「くっ・・・」

予期していなかった一撃に驚愕の表情を浮かべた後、すぐに姿勢を立て直しギリギリで踏ん張ると、続けざまに向かってきている少年の動きを再度じっくりと見つめる。

(この感じは・・・蹴りか?)

冷静に観察した彼は、次に少年が放つ攻撃が蹴りであると推測。

「水竜の・・・鉤爪!!」

その予測は見事に的中。シリルはジャンプしながら、ホッパーの腹部目掛けて蹴りを打ち出す。

(やはり間違ってない。だが、念のため大きめに避けて・・・)

先程の反省を生かし、いつもよりも大きめに体を動かして回避しようとした瞬間、まだ届かないと思っていたはずの攻撃が、青年の脇腹を撃ち抜く。

「何!?」

信じられないような出来事に思わず声が張り上がる。その後も次々に放たれる少年の攻撃を全て受けてしまう青年は、それがどう言うことなのか、わけがわからずにいた。

(どういうことだ?なぜ私が動きを見極められない!?)

ホッパーの魔法は敵の動きの全てを見抜くもの。脳の活性化されている部位を見極め何を考えているのかを読んだり、筋肉の動きから敵の次の動きを見極めることができる。
そしてそれは全ての人間・・・いや、動物から物体まで見極めることが可能だった・・・しかし、今彼が戦っている相手は全く動きを見極めることができない。筋肉の動きから推測される動きと、実際の動きが微妙にずれているのだ。

(男から女にされているから?いや、最初のブレスは見極められたからそれはない。ではなぜ・・・)

いくら考えても結論にたどり着くことができない。敵の動きを正確に把握できる分、わずかにズレるそれが彼の思考を鈍らせ、動きを悪くし、結果さらなる悪循環へと陥っていた。

「仕方ない。まだ早いが・・・あれを使う」

劣勢に立たされ、勝敗が決するのも時間の問題かと思われた。しかし、ホッパーが突然目を手で塞ぐと、彼の体から一気に魔力が放出される。

「「「うわああああ!!」」」

あまりの魔力の放出に戦っていた少年も、見守っていた少女たちも吹き飛ばされる。

「いってぇ・・・」

壁に衝突し、頭を押さえながら体を起こすシリル。先の衝撃によってボヤけた視界を正すべく、頭をブンブン振った彼は自身を吹き飛ばした人物を見据える。

「さぁ、ここからが本番だ」

その人物は先程と姿が変わっていた。いや、正確には体のある一部だけが大きく変化していた。

「なんだ?あの目・・・」

先程までの青年の、通常の目から一転、充血したかのような真っ赤な強膜とオレンジ色の瞳。それはこの世のものとは思えないような、異常な雰囲気を醸し出していた。

「これは私が師匠に教えてもらった力。全ての身体能力を向上させることができる」

バカ正直に力を説明するのかと疑問に思ったシリルだったが、その言葉に偽りがなく、魔力が遥かに膨れ上がっていることに気が付く。絶対に破られない自信があるから能力を語れるのだと、少女はすぐに悟った。

ヒュンッ

変化した目を大きく開いた瞬間、シリルの視界から敵が消える。

「ぐあっ!!」

そしてその直後に襲われる激しい痛み。その理由は、ホッパーが高速移動して拳を叩き込んできていたからだった。

「あいつ超速い!!」
「シリルが追い付けないなんて・・・」

シリルは滅竜魔法の魔水晶(ラクリマ)を目に入れているため、通常の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)よりもさらに目がいい。それなのに、今の青年の動きは反応することができなかった。

「ゴフッ・・・」

思わず膝をついたシリルにさらなる攻撃を放とうとしたホッパー。しかし、突然彼が口を押さえる。彼は誰からも見えないように手のひらを見ると、そこには鮮血がこびりついていた。

(持ってあと数分・・・急がなければならない)

ホッパーがこの奥の手を出さなかったのは、肉体的に大きなダメージがあるため。できることなら、この技を使わずに仕留めたかったのが彼の本音だ。

(いけるうちに行く!!)

時間的にわずかしか持たないと彼はわかっていた。そのため間髪開けずにシリルへと向かっていく。

「シリル!!」

隠れてこの場から撤退しなければならなかったはずなのに、思わず扉を開き叫んでしまった天空の巫女。だが、彼女の心配は無用の産物だった。

ドゴォンッ

ホッパーの一撃によって爆発が周囲を襲う。あまりにも重たい一撃に最悪の事態が脳裏を過っていた天空の少女たちだったが、煙が晴れて現れた少女の姿に、驚愕と嬉しさを見せた。

()()()も奥の手があったんだ。まぁ、当然こっちにもあるけどね」

ホッパーの渾身の一撃を受け止めた少年の髪の色が、見守っていた少女と同じような藍色に変化していた。そして、顔に浮かんでいる無数の鱗。

「やっぱり俺は、本番に強いのかも」

以前ウェンディに見せつけられた、自分の意志でのドラゴンフォースの解放。それを彼もやりたくて、必死に修行をしていたのだが、なかなかものにできずにいた。しかし、今やっと・・・この土壇場の場面でその力を手にすることができた。

「くっ・・・ゴホッ」

敵の予想外の成長に表情を歪ませ、さらには肉体にかかる負担に蝕まれてどんどん苦しくなってくるホッパー。しかし、彼は目的のために、ここで引くわけにはいかなかった。

「水竜の・・・翼撃!!」

ドラゴンフォースを自らの意志で開いた水竜が、両手にドラゴンのような翼を作り出し、ホッパーを攻める。例によって回避しようとしたホッパーだったが、またしても動きを読みきれず攻撃を受けてしまう。

「ハァッ!!」

受けた攻撃に怯むことなく、シリルの体勢や力の入り具合から、逃げることができないと思われる場所に拳を叩き込む。

スカッ

だがその攻撃は無情にも空を切る。そしてそれをあっさりと回避した少女から、さらなる追撃を受けた。

(なぜだ!?なぜ動きが読めない!?)

避けられるはずの攻撃が当たったり、当たるはずの攻撃が交わされたりと、予期せぬ事態に頭が困惑し、動きがどんどん悪くなっていく。

「滅竜奥義!!」

目的を果たすまであと少しだったはずなのに、まるでそれが夢だったかのように、手の届かないところにあったかのような錯覚に陥ってしまう。

「水中海嵐舞!!」

右腕で渦を巻くドラゴンの水が、すでに限界を迎えつつあった青年の土手腹を捉える。ドラゴンを滅するために生み出されたその技を受けたホッパーは、その場に膝をつき、地に伏した。

「し・・・信じられない・・・こんなことが・・・」

力を使い果たしたからか、先程までの変化した目が元通りの状態へと戻ったホッパーは、まだ理解が追い付いていないらしく、ただ呆然と地面に突っ伏している。

「やった!!シリル!!」

それを見て真っ先に彼に駆け付けたのは、国王たちを守るためにこの部屋から撤退したはずの恋人。

「あれ!?ウェンディいたの!?」

逃がしたはずの人物が真っ先に抱き付いてきたことにシリルは動揺していたが、飛び込んでくる彼女をギュッと抱き締める辺りが彼の優しさなのかもしれない。そんな二人の様子を、シェリアや部屋に戻ってきた国王とヒスイ姫が嬉しそうに見つめている。

「一つ・・・教えてくれ・・・」

戦いが終わり、これから残りの暗殺部隊たちを拘束しなければと思っていたところ、目の前にいるそのグループのリーダーが、顔だけを上げて目の前の人物たちを見上げる。

「なぜ・・・君の動きが読め・・・」

そこまで言ったあと、青年はシリルの足元を見つめたまま固まり、その直後、顔を伏せて失笑し始める。その意味がわからないウェンディたちは、そんな彼の姿を目を白黒させ見下ろしている。

「まさかそんな方法があったとは・・・意外すぎて思い付かなかった」

何を言っているのかわからずウェンディやシェリアたちは顔を見合わせた後、彼が見つめていたシリルの足に目をやる。すると、全員がその意味に気が付いた。

「あ!!シリル左右の靴違う!!」

今日一日中一緒にいたはずなのに、全然気が付かなかった。それは、シリルの靴が、右と左で違うものになっているのである。

「それ・・・レオンの靴だよね?」
「うん。貸してくれたんだ」

リオンから対策を考えておいてくれと言われていたシリルは、ホッパーの強さの理由がわからず、その当時意識を取り戻していなかったレオンに助けを求めていた。そして、その声が届いたのか、意識を取り戻した少年から、敵の力の正体を聞き、今回の対処法を思い付いた。レオンが作戦から外れていたこともあり、彼と自分の靴のサイズが違うから、微妙にバランスを崩すことができ、相手の読みを鈍らせることが可能だったのだ。

「面白い発想だ・・・素直に負けを認めよう」
「そうしてもらえるとありがたいです」

倒れて動けない敵の手首に魔封石を使用した手錠を填めると、無理矢理立たせて牢屋へと連れていこうとする。
目と鼻の先にまで来ていたはずの目標が阻まれ、さぞ悔しいだろうと思われた。しかし、なぜか青年は、小さく笑みを浮かべていた。

(このプランは失敗したが、まぁいい。目的は十分に果たせただろう)

誰にも気付かれないように笑みを見せた後、ガッカリしたように項垂れつつシリルたちに連れていかれるホッパー。だが、彼の真の狙いは、まだ終わっていなかった。



 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
久々に更新というか、久々に作品に手を付けたというか・・・
とにかく、国王暗殺編のバトルパートは終了です。
次でこのストーリーも終わり、本編に返っていく予定です。長かったです・・・ぶっちゃけ飽きてきてた(笑) 
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