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【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。

作者:炎の剣製
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0093話『旧第十六駆逐隊のとある子の不満』

 
前書き
更新します。 

 




突然だけど少し話そうか。
『第十六駆逐隊』は誰で編成される艦隊だ?と聞かれたら誰を思い浮かべるだろうか……?
一般的には雪風、初風、天津風、時津風の四人が挙げられるだろう。
ならもう一つの『第十六駆逐隊』と聞かれたら答えられる人は結構減るのではないか……?
旧第十六駆逐隊……この編成はあまり知られていない事が多い事だけど過去に実際にあった編成だった。
黒潮、初風、雪風の三人がそれに該当する。
私も第二次世界大戦時の過去の資料を調べる目的で偶然にこの編成を知ったのだ。
黒潮と言えば親潮と一緒に組むパターンが多いが、まだ当時は第十五駆逐隊の僚艦である親潮にまだ実装されていない艦娘である『早潮』に『夏潮』の三人が完成が遅れていたために黒潮の錬成も兼ねての第十六駆逐隊への編入となっていた。
同時に天津風と時津風もまだ完成していなかったので先に完成していた雪風と初風の二人に黒潮の三人で揃って第十六駆逐隊と呼ばれていた。
この三人で観艦式にも参加した事があるのはコアな人なら知っているかもしれない。
それなので艦これが運営を始まった当初は雪風は一人だったと言われるが黒潮がいたために一応は駆逐隊は組めるようにはなっていたのは知っている人は知っていそうだな。

……少し話を戻そうか。
そんな三人が珍しく一緒になって執務室へと来ていたのだ。
黒潮が執務をしている私の机に腕を伸ばすようにぐてーっと腕を広げながらとある事を話す。

「なぁなぁ司令はん。なんか最近思うんやけどうちら陽炎型は大本営から嫌われているんやろうか……?」
「黒潮さんはどうしてそう思ったんですか……?」

雪風が興味ありますと言いたげに黒潮に聞いていた。
そして初風は一人我関せずに小説を開いて一人黙々と読んでいた。
いったい初風はなにをしに来たんだ……?

「まぁそうやね。早潮に夏潮がまだ実装されていないけどな。他は大体揃っとるんやからもうそろそろ陽炎型にも改二を一人くらいは実装してもええと思うんよ……」
「あー……」
「その事でしたか!」
「私は別に気にしていないけど……」

私は少し前から思っていた事なので言葉を濁す感じで答えるしかできず、雪風は「納得しました!」と元気よく答えて初風は本をパタンッ!と閉じて興味なさげに溜息を吐いていた。
だけど私もそれで納得した。
黒潮の不満はなんでうちら陽炎型には誰一人改二がこないんじゃこらー!という訳である。

「まぁそれでもし雪風が改二になったとしてこれ以上どこを上げるんだ?……って性能を誇っとるんは分かっとるしなぁ……」
「そんな事はありません。雪風はただ運がいいだけで能力的にはそこまで強くありませんよ」
「はいダウトー」
「そんなー!?」
「そこは私も黒潮に賛成しておこうかしら……? ユキは自己評価が低いのよ」
「そうでしょうか……?」

うん。私もそこには賛成しておきたい。
雪風はうちの最終バッターだからな。
霞と一緒にいつもだいたいはラストを決めてくれるからね。

「まぁともかくな。うちも早く改二になりたいんよ」
「そうは言っても大本営が全決定権を持っているから私が何かをしたとしてもどうにもならないことだし……来るのを待つしかないのだから我慢するしかないんじゃないか? ほら、そんな事を言ったら夕雲型のみんなだって誰も改二は来ていないじゃないか?」
夕雲型(あの子達)はまだ伸びしろがあるからええやん。陽炎型(うちら)は器用貧乏なところあるからなぁ……」

それでまた黒潮は机にカエルのように伸びをしていた。

「……そう。そんなに改二になりたいんなら大本営にお願いでもしてみる……?」
「いやー……そこまでして改二になりたいかというと迷いどころなんよね」
「はっきりしないわね。まったく……」

それで何度目かになる溜息を吐く初風。
それとは一方で雪風は自身が改二になったらどうなるだろうと予想しているのかどこか上の空だった。
そして次に言った言葉で室内の温度が少し下がる事になるとは思わなんだ……。

「雪風がもし改二になるとしたら……響さんがヴェールヌイさんになったみたいに丹陽(タンヤン)になってしまうのでしょうか……?」

どこか雪風は寂しそうに笑う。
これはいかんな。
雪風が急に気落ちしている。
ヴェールヌイも今も少しだけ日本艦でいたかったという気持ちがあるのだから雪風もそう思うのは仕方がない事実なのであった。
それを初風も感じ取ったのか雪風の背中をさすりながらも黒潮を睨んで、

「黒潮姉さん……ユキを悲しませるようなことは言わないでくれる?」
「……え? 雪風の改二の話は雪風自身が話し出しt『なにか……?』いえ、スミマセン。ナンデモナイデス、ゴメンナァ……」

初風のきつい睨みで黒潮はたちまち顔を青くして雪風に平謝りしていた。
それで雪風もようやく現実へと戻ってきたのか「ど、どうしました……?」という天然ぶりを発揮していた。
先程のは無意識領域での雪風の思い出だったか。
一人で孤軍奮闘した話が多いからなぁ……。

「雪風。そう焦ることは無い。まだまだ改二実装は遠いだろうがどうにかなるだろう」
「はい! わかりました!」
「ううぅー……雪風の笑顔がまぶしすぎてうちの心が汚れているみたいや。……そうやね、焦っても仕方がない。いつか来るのを願って待ってるのが得策やね」
「ま、そうね……」

それで初風もようやく黒潮に同意したのか合いの手を入れていた。
雪風はどういった事態でこんな展開になったのか分かっていないのか首を傾げていた。

「ユキはユキのままでいていいのよ?」
「……? はい、わかりました初風さん」

それで黒潮の改二になりたいという駄々も終わったのか私はある事を聞いてみることにした。

「ところで今日はまたどうしてこの三人できたんだ? 天津風や時津風、親潮も一緒に連れてくればよかったじゃないか……?」
「ちっちっち! わかっとらんなぁ司令はん。たまには古巣のメンバーで集まりたいって言ううちの親切心で今日はこのメンバーなんやで」
「そうか。……それで本音は?」
「……親潮が忙しそうで寂しかったんや。雪風たちも天津風と時津風がなにやらしているみたいなんで寂しさを共有したいんやなと思って誘ったんや」

黒潮はすぐに本音を言ったので寂しかったんだなと自己完結しておく。
だけど初風はあえて追及していく構えで、

「あら……? 私はユキと一緒にいられればそれだけでいいわよ?」
「初風ェ……そこはあえて嘘でも気を使ってくれてもええんやよ……?」
「別にそこまで気を遣う関係でもないでしょう? 同じ陽炎型なんだから相談くらいは乗ってあげるわよ」
「あえて落としてからの上げてくる感じ……初風、キミィやるなぁ」
「どうでもいいわよ」

初風はあくまでマイペースで黒潮に対してはざっくりとした対応を取っている。
うん、見ている分には面白いな。

「黒潮さん! 相談ならいつでも引き受けますよ!」

ビシッ!と手を上げて雪風が表裏なく本音を言うので黒潮も思わず涙を流しそうになったのか、

「雪風はええ子やねぇ……姉としては嬉しいわ」
「ありがとうございます!」

そんな三人のやり取りを見ていて常に中心には雪風がいるんだなと思う私であった。
雪風は良くも悪くも陽炎型の良心だからな。

「えらいぞ雪風。これからも陽炎型のみんなの中心にいてやってくれ」
「はい、わかりました!」

眩しい笑顔で答えるために私も心が洗われる気分だったのは内緒だ。
それで初風が何かを想ったのか雪風を抱きしめながら、

「……あなた。ユキはあげないからね?」
「ははっ。嫉妬とは可愛いな初風」
「もう……調子に乗らないの」
「わかったわかった」

それからやっと黒潮も調子が戻ってきたのか初風をからかうなどをして少しばかりの間だけど執務室は和やかな空気だった。


 
 

 
後書き
今回は珍しい組み合わせで話を書いてみました。
駆逐隊の組み合わせは結構ありますから色々と書けますよねー。



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