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レーヴァティン

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第十二話 港においてその三

 自分達の世界で見慣れたその十字を見たうえで中に入った、すると中も左右に並んだ席に正面の礼拝堂にスレンドグラス、それに十字架の主とやはり見慣れた光景だった。
 その中に入ってだ、彼はまず人を呼んだ。
「誰かいるかい?」
「はい」
 すぐにだ、彼等の世界の神父の服を着た中年の男が出て来た。その彼が久志に聞いてきた。
「何用でしょうか」
「何用かっていうとな」 
 久志は神父にすぐに言った。
「人を探してるんだよ」
「そうか」
「ああ、こっちの世界に来た奴がな」
 久志は軽い口調だが単刀直入に言った。
「いるって聞いてな」
「この教会に」
「そう聞いてだよ」
「来られましたか」
「ああ、それでいるかい?」
 神父に軽い口調のまま言う。
「そいつは」
「お待ち下さい」
 これが神父の返事だった。
「今は奥で書を読んでいまして」
「聖書をかい」
「はい」
 その書をというのだ。
「そうしています」
「そうか、真面目な奴なんだな」
「ただ真面目でなく」
 神父は久志にさらに話した。
「非常に聡明な青年です」
「頭がいいんだな」
「僧侶の魔法だけでなく」
 さらにというのだ。
「魔術師の魔法もです」
「どちらも使えるのか」
「立派な司祭になるでしょう」
 その彼はというのだ。
「間違いなく」
「こっちの世界に来ててか」
「そうです」
「俺もだよ」
 久志は笑って神父にこうも言った。
「外から来たんだよ」
「そうでしたか」
「そうは見えないかい」
「東の島の方だと思いました」
 神父が見たところだ、久志はそうした外見だというのだ。
「御顔立ちや髪の毛、目の色を見ますと」
「ああ、東のか」
「はい、東の島の方はです」
 彼等はどうかとだ、神父は再び久志に話した。
「黄色い感じのお肌にです」
「黒い髪と目でだよな」
「彫の薄い御顔立ちですので」
「ああ、アジア人だな」
 その顔立ちは何かとだ、久志は彼の世界でのことから話した。
「要するに」
「アジア系とは」
「ああ、こっちの言葉だよ」
 そこから先は久志は話が長くなると思い話さなかった。 
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