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夢幻水滸伝

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第十二話 西の動きその七

「酷かったとか」
「友達と思っていた者に裏切られたそうでおじゃるが」
「それでかなりやさぐれていたとか」
「実際入学時は酷かったでおじゃる」
 彼等が通っている八条学園高等部の話だ、現実世界での。
「あの時は本当にどうしようもなかったでおじゃるよ」
「そもそも見かねた両親が広島から神戸の学校に行かせた程で」
「寮に入れてそうしてでおじゃるな」
「場所を別にしてそこで更生してもらおうと」
「それで、でおじゃったが」
「成功やったな」
「全くでおじゃる」
「井伏君と会えて」
 山陽の棟梁である彼と、というのだ。
「ほんまよかった」
「全くでおじゃるよ」
「一年の時同じクラスで激しくぶつかって」
「何度もだったでおじゃるな」
「同じ広島出身でもいた地域が違う彼とそうなって」
「そして次第に打ち解けてでおじゃる」
「今では腹を割った親友同士」
「そうなってよかったでおじゃる」
 敵である彼のことをだ、夏目はこう中原に語った。
「麿もそう思うでおじゃる」
「山本君は決して悪人ではない」
「むしろいい方でおじゃるな」
「だからこそ更生出来たんやな」
「真の友を得て」
「まさに、しかし」
 ここでだ、中原は眉をしかとさせた。そのうえで夏目に対して強い声で言ったのだった。
「それではいそうですかとはいかんな」
「麿達は敵同士でおじゃるからな」
「ではどうするか」
「もう答えは出ているでおじゃるよ」
 夏目も中原に確かな顔で返した。
「戦でおじゃる」
「そして勝つ」
「そうするでおじゃる」
「そろそろ夜やけど」
 中原は周りを見た、もう日暮れ時である。
「敵は来るやろか」
「麿なら攻めるでおじゃる」
 夏目は中原にその狐の顔で答えた。
「確実に」
「そうするか、あんたはんなら」
「するでおじゃる、ただ」
「ただ?」
「夜襲で来るでおじゃるか」
 こう中原に問うたのだった。
「果たして」
「夜来るもんやろ、こうした時は」
「いやいや、軍師さんならどうするかでおじゃる」
「軍師はんなら」
「うちのでおじゃる」
 芥川、彼ならというのだ。
「どうするでおじゃるな」
「軍師はんなら」
 どうするか、中原は彼の頭の中で考えて夏目に答えた。
「夜襲みたいなことは」
「せんでおじゃるな」
「こうした時は」
「あえてでおじゃる」
「敵の裏をかいて」
「むしろ夜にあえて気をつけさせて、でおじゃるな」
「朝に」
 中原はここではっとした顔になった、その狸の顔が。 
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