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歌集「春雪花」

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 夕されば

  雲間より差す

    紅に

 恋そ儚く

    思ふ淋しさ



 夕方…傾いた太陽が雲の間から西日を差し、辺りを紅く染めている…。

 あちこちに家路を急ぐ人々…車や電車の音…。

 今更ながら…ここに恋しい彼の記憶はない…。
 それが無性に悲しくなり…叶わぬ恋を引き摺るように生きる自分が虚しくなる…。

 いつかは消えゆく儚き恋…そう思い淋しさに見上げた空には、夕暮れの紅に染まった雲が見下ろしていた…。



 露雨の

  集め流るる

   魚野川

 眺むもなきや

    君ぞ恋しき



 梅雨時季の郷里では、そこに流れる魚野川が雨で増水し、川幅が広がる。

 あぁ…もう、そんな郷里の川を眺めることもあるまい…。


 恋しい彼に…もう会うことなどないように…。



 
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