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魔法少女リリカルなのはエトランゼ(異邦人) 再構築

作者:ケン009
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2部 P・T事件
5章 宿命が閉じるとき
  宿命が閉じるとき

「プレシア・テスタロッサ、もう終わりです。次元震は私が抑えています。
駆動炉もじきに封印されるでしょうし、そこには皆が向かっています」

 その声の主――リンディ・ハラオウンが凛とした声でそう告げる。

「忘れられし都”アルハザード”。
そして、そこに眠る秘術は存在するかどうかも曖昧なただの伝説です。
もし、”アルハザード”があったとしても、
この方法はずいぶんと分の悪い賭けだわ。
……あなたはそこに行って、何をするの? 
失った時間を取り戻そうとでもいうの?」

プレシアは僅かに目を瞑りその後、すっと目を開く。

「そうよ、私は取り戻す。
こんなはずじゃ無かったあの時を私は取り戻すの・・・」

「・・・プレシア・テスタロッサ、あなたは・・・」

プレシアの言葉に、リンディが驚いたように声を上げると、

少年の声が聞こえた。

「世界は、いつだって……こんなはずじゃないことばっかりだ!!
ずっと昔から、いつだって、誰だってそうなんだ!!
こんなはずじゃない現実から逃げるか、
それとも立ち向かうかは、個人の自由だ!
だけど、自分の勝手な悲しみに、無関係な人間を巻き込んでいい権利は、 どこの誰にもありはしない!!」

 それと同時にクロノが最深部までやってきた。
クロノは頭から血を流しながらそしてS2Uを杖にしながら
プレシアの元に歩いていった。
その後にフェイトが間に合った。

「・・・母さん」

「・・・フェイト」

 プレシアとフェイトはお互いを見つめながらそう呟いた。
プレシアは見た目では何も表情に変化は見えなかった。
しばらく無言で二人はお互いを見つめ合っていたが、それは唐突に終わりを告げる。

「――っ!? ごほっ、ごほっ!」

 プレシアが口元を押さえながら激しく咳き込んだ。
最後に使用した次元魔法が、プレシアの体に負荷を掛けたことと、
もはやその体を蝕んでいる病にプレシアの体は限界まできていたのだ。

「か、母さんっ!?」

 突然咳き込み始めたプレシアにフェイトが駆け寄ろうとするが、

「・・・何しにきたの・・・?」

「わ、わたしは……」

 プレシアは顔色を青くしながらも気丈に立ち、
フェイトへと厳しい言葉を投げ捨てた。
フェイトはその言葉を聞き、駆け寄ろうとしていた足を止めた。
プレシアはさらにフェイトへと口を開く。

「……消えなさい。もうあなたに用はないわ」
「…………」

 フェイトは何も言えず黙ってしまうが、
その瞳はしっかりとプレシアへと向いていた。

「――あなたに、言いたいことがあってきました」

「…………」

 フェイトの言葉に、
僅かに意表を突かれたような表情となる
プレシア。
フェイトが自分から何か言ってくるとは思っていなかったのだろう。

「わたしは……わたしはアリシア・テスタロッサじゃありません。
ただの人形なのかもしれません」

「…………」

 プレシアは黙ってフェイトの話を聞く。
 フェイトは少しだけ目を瞑り深呼吸した
後、すっと目を開けると口を開いた。

「だけどわたしは、フェイト・テスタロッサは、あなたに生み出してもらって育ててもらった。あなたの娘ですっ!」

「……っ!?」

 フェイトの言葉を聞き、
プレシアの表情が一瞬僅かに動いた。
しっかりとこの子をしっかり見るように
一瞬だけ聖母のように顔になったが、すぐにいつもの顔に戻り

「今更、あなたのことを娘と思えと……あなたはそう言うの?」

「あなたがそれを望むのなら、わたしは世界中の誰からも、どんな出来事からも・・・あなたを守ります。
わたしがあなたの娘だからじゃない。
あなたがわたしの母さんだから」

 フェイトが力の篭った瞳でプレシアを見つめ、
最後まで自分の想いを口にした。
プレシアは笑顔をフェイトへと向けた。

「ふん、いまさら家族ごっこは必要ないわ。私の娘はこのアリシアだけ」

「かあ、さん……?」

 困惑するフェイトを余所に、
プレシアは自分が持っていた杖を地面へと静かに打ちつけた。 
すると、プレシアを中心に巨大な魔方陣が展開されたかと思うと、収まっていた揺れが再び起こり始める――《時の庭園》が崩壊を始めたのだ。

『まずいっ!? 艦長、クロノくん、まもなく《時の庭園》が崩れます!
このままじゃ、崩壊に巻き込まれます!』

「っ!? 了解した。……フェイト・テスタロッサ!」

 エイミィの言葉から、まもなく《時の庭園》が崩壊することを知り、
クロノがフェイトへと叫ぶ。
だが、フェイトはプレシアを見つめたまま動かなかった。

「つかれたわ・・・もう、行くわ」

「なら、わたしもっ!」

「邪魔はしないであなたの顔を見るのも嫌なんだから、ふん!」

「母さん……っ!」

「もう、時間ね。そうそう私の旅路の同伴者はアリシアだけ…
リンディでしたっけ?
この場所に一人死にぞこないがいるからきちんともって行きなさい」

「プレシア・・・」

 プレシアがそう呟くと、揺れが激しさを増し、
プレシアが立っている地面にも亀裂が入り始める。

「母さん……っ!」

 フェイトはプレシアの元へと走り寄ろうとするが、
地面が激しく揺れているため、それは叶わなかった。
そして、プレシアが立っている地面も崩壊を迎え、
プレシアはアリシアとともに空中へと投げ出され、虚数空間へと落ちていく。
しかし、そんな状態にも関わらずプレシアの表情には笑みが浮かんでいた。

「いっしょに行きましょう、アリシア、今度は離れないように。
そして・・・」

 プレシアは虚数空間へと落ちながらも、フェイトへと笑顔を向ける。

「っっ!? アリシア! 母さん!!」

 フェイトはプレシアへと手を伸ばすが、
その手が届くはずもなく、プレシアは笑みを浮かべたまま、
アリシアとともに虚数空間へと消えていった。
プレシアとアリシアが虚数空間へと落ちていくのを、
フェイトたちは呆然と見つめていた。

 だが、そんなに呆然としている暇はない。
時の庭園の崩壊は始まっており、
もはやゆっくりしている暇などなく、
このままでは皆、虚数空間へと飲み込まれてしまう。
そんな中、フェイトは未だにプレシアとアリシアが落ちていった方へと手を伸ばし、呆然とそちらを見つめていた。

「フェイト、早くここを離れないとっ!」

 アルフの言葉はもっともで、時の庭園の崩壊は止まらず、その揺れも激しさを増してきていた。
だが、フェイトはその声を聞いてもその場から動こうとしなかった。

「ッ!? フェイト!?」

アルフが先ほどよりも焦った声を上げていることに気付いたフェイトは、俯いていた視線を上げた。

「っ!?」

 時の庭園が崩壊している影響から、壁が崩落してきており、フェイトの上から巨大な岩が落ちてきたのだ。

「フェイトォオオオッ!?」

 アルフが心配から声を上げた。
 フェイトはぎりぎりのところで当たらなかったが、
その岩はフェイトが立っていた場所を壊していきして
フェイトはなんとか残った地面にしがみついていた。 
下は虚数空間であり、落ちたら戻ってくることはできない。
もしかしたらここから落ちたら二人に会えると思ったのかもしれない
でも人は生き残るために無意識に動いてしまう。
フェイトは腕に力を込め、しがみついていた地面へと這い上がる。

「フェイトちゃん……!」

 それとほぼ同時に、
砲撃魔法で壁を破壊してやってきた
白いバリアジャケットを纏ったなのはが飛び込んできた。
なのはは少し周囲を見渡した後、フェイトの姿を見つけ、
飛行魔法で近くへと飛んできて叫ぶ。

「飛んでっ! こっちに……っ!」

 なのはは天井から落ちてくる瓦礫を避けながら、
フェイトへと精一杯手を伸ばした。
そんななのはの姿を見た後、フェイトは僅かに逡巡すると、
覚悟を決めたような表情となり、
最後にプレシアとアリシアが落ちていった方へと視線を向ける。
そして、フェイトはこちらへと手を伸ばしているなのはへと手を伸ばしながら地面を蹴った。

「っっ!」

「フェイトちゃんっ!」

 なのはがフェイトの手を取り満面の笑みを浮かべ、
そんななのはの表情を見て、フェイトの表情も綻んだ。


 全てが満足な結果ではなかったのだが最悪の結果は避けれたとみんなが思った矢先
驚愕の連絡が入った。 

[リンディ提督、綾さんが・・・]

エイミィから報告があったのはこのすぐだった。
 
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