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ハルケギニアの電気工事

作者:東風
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第03話:魔法覚えて有名人!?

 どーも~! 板東太郎ことアルバートで~す!!

 両親に許可を貰って、魔法の訓練を初めてから2ヶ月がたちました。
 まず初めに1週間掛けて杖と契約しました。(普通はもっと時間が掛かるらしいです。)
杖は、父上がこの時の為にと用意してくれていた、20サント位の小振りの物で、手にもしっくりなじんで最高でした。
ただ3歳児には20サントでもちょっと長いようで、端から見ると杖を振っているのか振られているのか解らないような感じです。

 杖との契約もスムーズに出来ましたから、まずコモンスペルの練習から開始しました。

 魔法の実習は、屋敷の外にある訓練場で行いました。普通の野球場が10個位入りそうな広場ですね。
父上や母上といっしょに行きましたが、相談した時に決めた通り、最初は母上が先生になりました。
そこで思ったのですが、スペルの唱え方にも性格がでるんですね。いつものおっとり(天然?)とした性格のままで、ふわっとした感じでスペルを唱えてくれるので、初めての訓練でも緊張なんて、まるでありませんでした。
 お約束として、まずライトやレビテーション、ロックとアンロックなど、初歩のコモンスペルを一通り習いました。

まずここで母上を驚かせることになったのが、母上が使うコモンスペルの魔法を一回見ただけで、全部、完璧に使うことが出来た事です。ライトなんて杖の先が爆発したかのような光で、しばらく残像が残って周りが暗く感じたくらいでした。
 母上も呆気にとられたようですが、コモンスペルが予想より上手くできたので、気を取り直してすぐに系統魔法の確認に入ることにしました。

 系統魔法は神様との約束通り、一番感覚的に合うのは土系統でした。スクウェアは保証されていますからね。
 ただ、母上に落ちていた石ころを渡されて、試しに何かイメージしてこの石を練金してみなさいと言われ、鉄を練金したらジト目で見られました。
 僕は初めて系統魔法を使う訳ですから練金できるのはせいぜい青銅位と考えていたようです。しかし生前の現代社会では、身の回りにある金属と言えばまず鉄でしょう。他にはアルミニウムやチタン、ステンレスなどですが、青銅なんて金属は美術館や公園の銅像位でしか見ることがありませんから鉄の方がイメージしやすいのは当然だと思います。
まあ、3歳児がいきなりラインレベルの魔法を使うのもアレなのでしょうが。たぶん元素記号や原子モデルなんかをイメージできればどんな金属でも練金できると思いますよ。

「いったい、何でいきなり鉄を練金出来るのかしら?初めての練金なら普通は青銅でしょう?それにあなたの年で鉄なんて練金したら普通魔力の使いすぎで倒れると思うんだけど全然平気みたいだし。
もうちょっと子供らしくても良いと思うんだけど、アルバートの身体ってどうなってるのかしら?トリステインのアカデミーあたりに教えたら喜んで連れて行って、徹底的に実験動物扱いしてくれるでしょうね。」

「母上、何気に僕を売る気ですか?冗談じゃありません。解剖なんてされたくないですよ。」

 まったく、この人は何を言い出すんでしょうか。父上も苦笑しています。

「練金はイメージが大事だと仰ったのは母上ではありませんか。僕がたまたまイメージしやすかったのが鉄だっただけで、特別なことをしたわけでは無いのです。実際今のところ気分も悪くならないし、魔力切れにはならないと思いますから、問題無いのではないでしょうか?」

 危ない危ない。ちょっとまずかったかな?まだ解禁になっていないはずだけど、ある程度魔力無尽蔵が発動しているようです。とんでもないチートなんですから気をつけた方が良いようですね。

「問題無いとは思えないのよね。ジョン、あなたも笑っていないで、同じ土メイジなんですから何か解らないかしら?」

 母上は苦笑状態の父上に話を降ります。

「いや、いけないいけない、思わず笑ってしまったよ。それにしてもアルバートは我が息子ながら不思議がいっぱいだな。ディティクトマジックで見ても特に異常は感じられないし、身体的には問題ないようだから大丈夫だろう。ソフィアも心配しないで良いと思うよ。」

「そう?あなたは土メイジだからアルバートが土メイジに素質があることで喜んでいるのでしょうけど。私は、そう簡単に納得できないのよ。」

 母上、父上を見つめる目が据わっていますよ。

「それじゃあ、次は水系統の魔法を試してみましょうか。」

 次に水系統を試してみました。
 イメージしたとおり、コップに入れた水がふわふわと空中に浮き上がって、自由に形を変えます。面白くなって犬や猫の形に変化させて僕の回りを歩き回らせたり、お手、お座り、伏せなんてさせてみたら、また母上がぶつぶつ言っていました。
よく聞こえませんが、父上も引きつった笑顔になっているところを見ると、これもやりすぎだったようです。でも水系統の魔法も上手く使えることが解り、最後には母上も喜んでくれました。

 その後、火と風の魔法も試してみましたが、こちらはまともに発動すらしませんでしたから予定とおりと言うことでしょう。

「だいたい解ったわね。アルバートは土系統が一番で、次が水系統だわ。この分なら両方とも間違いなくトライアングル以上になれるわ。」

「そうだね。私達二人で教えることが出来るからうれしいよ。それじゃ、今日はこの位で終わりにしてお昼にしようじゃないか。初めてにしては少しがんばりすぎたからアルバートも疲れておなかも減ったろうからね。」

 父上も嬉しそうですね。

「はい、解りました。父上、母上。有り難うございました。」

 次の日からは、父上にゴーレムの作り方を習ったり、母上に回復魔法とか秘薬の調合とかの基本を教えて貰ったりで、2ヶ月があっという間に過ぎたのでした。

 それから、さらに半年が過ぎた頃、僕の魔法訓練が想像以上に早く進んでいるため、そろそろ自分の部屋があった方が色々と良いだろうと両親が僕に部屋をくれました。
 20メール四方はある大きな部屋ですが、ここにベッドや机、ソファーに本棚に秘薬の実験器具などよく使う物を置くと、恐ろしいことに少し狭く感じてしまいます。
日本にいた頃住んでいた家ならすっぽり入ってしまうような広さなんですけどね。とても3歳児の子供部屋には見えません。

 それから専属のメイドもつきました。アニーと言って17歳の娘でとてもかわいい顔立ちの身長150サントくらい。栗色の髪に茶色の瞳でメリハリのあるナイスバディーです。
良く気がつく優しいお姉さんといった感じで、生前の日本では考えられない事ですね。
僕はメイド喫茶とやらにも行った事がなかったので、リアルメイドさんはハルケギニアに来て初めて見たわけですが、自分専用のメイドさんなんて夢でしか見られなかったような体験です。

 部屋を貰ってまずやった事は、神様から貰った持ち物の確認です。
ドアにロックの呪文を賭けて窓のカーテンも閉めます。覗き見されないように異常のない事を確認してから『王の財宝』を出してみました。

 まずは64式小銃です。僕が自衛隊にいた時に主に使っていた自動小銃です。
その前に使っていたM-1カービン銃の方が軽くて良いのですが、この64式小銃は今の僕にはかなり重いです。レビテーションが使えて良かったですよ。
この銃は少し重いことが欠点ですが、癖も少なく使いやすい銃でしたので大きくなったらどうしても使いたいと思っています。これでも隊内での射撃大会や群、方面隊などでの射撃大会でいつも優勝していたんですよ。200~300メール位なら確実に当てられますから、魔法の届かない遠距離からメイジの無力化もできます。箱形弾倉も7.62ミリ弾薬も確認しましたが錆もなく問題無いようですね。

 銃剣は未使用品のようなので使う前に良く研がないと行けませんが、これは後で良いでしょう。本当に固定化の魔法って助かります。どこにも故障らしいところは見つかりませんでしたから。

 一旦64小銃を元通りにしまってから9㎜拳銃を出します。
こちらは自衛隊の幹部が使うものでしたから当時は余り持った事がなかったのですが、僕個人としては好きな拳銃です。コピーの元になったベレッタの初期モデルは僕が最初に買ったモデルガンでしたからね。フィンガーガードがあって持ちやすくって命中率も良いんですよ。こちらも一通り確認して戻します。

 そんな感じでごそごそ持ち物確認をやっているとあっという間に時間がたったようで、気がついたら外は暗くなってきました。
 もうすぐアニーが夕食の知らせに来るでしょう。見つかるとややこしくなるので全部『王の財宝』にしまって、本を読んでいることにしました。

 そんなこんなの毎日でしたが、時にはちょっと遠出をする時もあります。その日も朝から良い天気で、ハイテンションな母上に連れられ、アニーを含めたメイドさん3人を伴い、森まで秘薬の材料を取りに行きました。
 最近、水のラインになったので魔法の訓練がてら秘薬作りの手伝いをするようになりました。その一環で薬草や薬になる木の葉、木の実なんかを取りに森や山に良く行くようになったわけです。

「アルバート、そっちの葉先が丸い草を取ってくれる?痛み止めの秘薬に使う薬草なのよ。あっ、そっちの葉はちがうわよ。それは良く効く毒薬に使う草よ。それを使ったら永久に痛みを感じなくなっちゃうわよ。」

「母上、冗談事ではありません。まるっきり正反対の薬じゃないですか。そういう大事な事はしっかりと教えて下さい。」

「あら、冗談だなんて嫌ね~。今ちゃんと教えてあげたでしょう。だから大丈夫なのよ。」

「何が大丈夫なのですか?そんな根拠のない大丈夫なんて聞いたことがないですよ。あっ、これは傷薬に使う薬草だ。」

「ほら、ちゃんと覚えているじゃない。やっぱりアルバートなら大丈夫、大丈夫!!」

「………?なんだかな~。」

 これは自分でも色々調べて予習、復習をしっかりやっておかないとえらい事になりそうですね。治療のつもりで暗殺になりましたじゃ洒落になりません。

 こんな調子で母上からは水系統の魔法、父上からは土系統の魔法を習い、水系統がラインになっただけでなく、土系統はトライアングルになりました。
 もっとも、秘薬作りは神様から与えられたチート能力の内なのでメイジのクラスには関係有りません。母上には内緒ですがオリジナルの秘薬もすでにいくつか作っています。
 その中でも最高の秘薬は2種類あって、1つ目は生きてさえいればどんな病気でも完全に直す事ができます。コレラ、チフスなどの伝染病でも、癌、白血病や破傷風、狂犬病などの病気、それに脳や心臓疾患など考えつく全ての病気に効果があります。
もう一つの薬は怪我用の薬で、腕や足を切り落とされても傷口をくっつけてこの秘薬を付ければ、あっという間にくっついて元通りです。さすがに流れた血液までは増やせないので、そちらは別の秘薬の増血剤を飲ませる必要がありますが、この秘薬が広まればハルケギニアの死亡率が一気に低くなる事は間違いないでしょう。
ちょっとやりすぎた気がしますから、万一僕や家族が戦争とかに巻き込まれた時のためということで今は隠しておきましょう。こんな秘薬があることが漏れると危ないことになりますから。
 DQにでてくる世界樹の葉があれば死人でも生き返るのでしょうけど、そういえばハルケギニアでは世界樹があるって聞いた事なかったな。DQのようにどこかに生えていたらいいのに。



 訂正します。開発した秘薬の事、母上にばれていました。いつの間に漏れたんだろう?

 ある朝、すごくご機嫌な母上が僕の部屋に来ました。

「ねえ~、アルバート。新しいお薬を作ったんですってね。とっても効き目のあるお薬だって聞いたんだけどお母様にも1,2個くれないかしら?ちょっと調べてみたいのよ。良いでしょう~!おねがい!」

 なんて、目をキラキラさせて言ってくるんですよ。手もワキワキしているし。断ったら何をされるか解らないような雰囲気でしたから、下手にごまかすことも出来ませんでした。
しかたなく、その場は病気治療用の秘薬を小瓶2個分渡して勘弁してもらいました。

 母上なら調べると言っても変な事には使わないでしょうから問題もないだろうと思ったのですが、これが見事に大外れ。
 隣の領で重病人が出たと聞いて、早速行って使ってみたらしく(これってもしかして人体実験?)、御臨終一歩手前の瀕死の重病人があっという間に治ってしまったそうです。
これで、なんかすごい秘薬があるらしいとの噂が近隣を駆け巡り、あっちこっちから問い合わせが殺到しました。
 母上も3歳児が作った秘薬なんて事はちっとも気にせずに使って、その上、その秘薬を作ったのが自分の息子だなんて事まであっけらかんと話してしまったそうです。おかげで僕の名前がいきなり有名になってしまいました。母上、あなたはどこまで天然なんですか?

 こんな事をしていれば、当然、噂はゲルマニアの首都『ヴィンドボナ』まで流れて行き、その噂を家臣から耳にした皇帝が興味を持つ事になります。そうなれば次にくるのは皇城からの呼び出しです。3歳児の首都呼び出しなんて普通ありますか?

 母上、この始末をどうつけるつもりなのですか?父上もここは喜んでいられるような場面ではないと思いますよ。

 ハ~~。目立ちたくなかったのに、どうしよう。 
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