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グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)

作者:あちゃ
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第90話:アイドルマスター?

(グランバニア城・中庭)
リューノSIDE

将来の展望が見えてきたマリーが、私達のシラケた視線を無視して喜ん(はしゃい)でる。
この何も考えてない感はマリーらしいけど、如何やって歌姫(アイドル)とやらになるのかしら?
ただ歌ってれば良い訳でも無さそうだけど……

「なぁマリー……オイラには分からないんだけど、歌姫(アイドル)って如何やってなるの?」
「はぁ? お前はアホだな狐! 美少女が可愛い服着てファンの前で歌えば、それは既に歌姫(アイドル)誕生なのよ!!」
やっぱり何も考えてないわね。

「アホはお前だマリー」「フニャ~ン」
突如ウルフの声(とソロの鳴き声)が聞こえ、そちらに視線を移す……
そこには物陰から私達を伺うように佇むウルフ(と肩にはソロ)の姿が。

「ウルフ……ってか、何で物陰から覗いてるの?」
「そこの上級メイドが怖くて……」
何でジョディーを怖がってるのかしら?

「アニキ……ジョディーさんの何が怖いの?」
先刻(さっき)……洗濯物を追加で渡しちゃったから……怖い」
「おほほほほ、ウルフ閣下。私は怒っておりませんですわよ。洗濯は私の仕事ですから」

「おほほほほ、その様ですねジョディー様。リュカさんから御駄賃貰えて機嫌良いのですか?」
「な、何のことか解りませんが、先程陛下より労いのお言葉を頂いたのは確かですわ」
労いの言葉が御駄賃なのかしら?

「そんな事は如何でも良いのよ……ウルフ、何で私がアホなのよ!?」
「就職というのは、賃金を貰うことで始めて成立する。お前は歌ってれば就職したと思ってるようだが、それだけで金を貰えると思うなよ」

「そ、そんなこと……思ってないわよ!」
“思ってない”と言うか、何も考えてないのが正しいと私は考える。
「如何だか……お前は深く物事を考えない女だからな」
それが正解よ。

「な、何よぅ! “歌”を歌って“お金”貰うなんて、そこら辺の小劇場とか居酒屋とかでもやってることじゃない! 私はそれを大掛かりに展開させようとしてるだけよぅ」
言うのは簡単ね。

「だから……それが何も考えてないって言ってるんだよ。歌を歌うって言うが、マリーが伴奏無しのアカペラで歌い続けるのなら兎も角、演奏とかは如何するんだ? お前の歌はリュカさんと同じく、この国の人間が知らない曲ばかりだろう。いきなり劇場に現れて『○○って曲、歌います。伴奏よろしく』とか言ったって、誰も付いて行けないんだぞ。付いて行けるのはリュカさんくらいなもんだ」

「じゃ、じゃぁ……楽譜書いて配れば良いのよ!」
「お前に楽譜が書けるのか!?」
「え!? が、楽譜……私が?」
「書けねーんだろ?」

「………うん」
ダメだ、この女……本当に何も考えてないわ。
「今、小劇場やら居酒屋やらで歌ってる方々は、それら下積みを積んできた方々なんだ。それを無視して『歌って金貰う』なんて烏滸がましいんだよ!」

「何よぅ。じゃぁ如何すんのよ! 私、今から努力するなんて真っ平なのよ! 歌姫(アイドル)がダメなら、やっぱりメイドになるしかないじゃない!」
「絶対ダメですよ! マリー様がメイドなんて犯罪に近いですよ!」

「そ、そこまで言うか雇われ身のクセに!」
「雇ってくださってるのは陛下ですよ! マリー様は無関係です!」
ジュディーさんが正しい。

「マリー……お前は大人しく芸術高等学校に入学して、音楽の勉強を「絶対にイヤ! 第二の人生なんだから、今ある知識を活用した人生を歩みたい!」
ウルフの言葉を遮って自らの欲望を吐露する女……第二の人生って言葉が気になる。

「清々しいまでの我が儘っぷりだな、オイ」
「お父さんに楽譜書かせる。ピアノもギターも弾けるし、音楽の勉強してきてたみたいだから、多分書けるはず。そうすれば劇場等に努める楽団の連中も私の伴奏を出来るはずだから、問題解決よ!」

「直ぐに親父を頼るんじゃない、ダメ娘! 昨晩大喧嘩して自立するように叱られたばかりだろう……手伝ってくれるワケ無いぞ」
「そ、その原因を作ったのはウルフじゃん! 如何すんのよ……責任取りなさいよ!」

「そうやって直ぐ人の所為にするぅ……マリーの悪いクセだぞぅ☆」
実際その通りだと思うが、チャラけた感じで本人(マリー)のおでこを人差し指で突くのは逆効果だと思う。
だって……

「ふざけんなぁコラァ! 私の将来のことで真剣に考えてるんだぞ! ちょっとは持てる権力(ちから)を駆使して、私の人生を安楽にしやがれコノヤロ-!」
ほら……余計に怒っちゃってる。

「う~ん……そう言われてもなぁ……俺、音楽は詳しくないからなぁ……」
流石のウルフもマリーの我が儘っぷりに困り顔。
何か手伝えないかなぁ……?

「……ね、ねぇウルフ。芸術高等学校に在学してる人で、音楽を専攻してて、マリーの歌を聴いて譜面を書き起こせる人を雇うってのはダメかなぁ?」
結局他人任せでマリーの努力は皆無だけど、ウルフを助けたいし……取り敢えず提案をしてみた。

「あぁ……なるほどねぇ! リューノ、それ良いアイデアだよ!」
「そうよ。リューノ最高! 何だったら其奴と一緒にデビューして、伴奏も任せちゃえば良いんだしね」
ウルフに『良いアイデア』と褒められた。嬉しい♥

「よ~し、そうと決まったら早速行動開始よ! ウルフ、芸術高等学校に行きましょ。そして貴方の権力(ちから)で有能な人材をスカウトするのよ!」
相変わらず一方的ね。

「ちょっと待て、マリー。姫じゃなくなったのは俺の所為だから、芸術高等学校へ赴いてスカウトすることに吝かではない。だがしかし……お前が歌姫(アイドル)として成功するのに手を貸すつもりはない。誰もが認める歌姫(アイドル)になりたいのなら、自らの実力を持ってして達成しろ」

「はぁ……如何いうこと?」
「だから……お前は国王の娘(王家縁の者)である事や、宰相(オレ)の彼女である事を武器にしてはダメだと言っている。人々の心に刻み込まれるのは、お前の歌声や容姿だけであって、家族関係等の縁故では無い……と、言う事だよ!」

「大丈夫よ……この絶世の美少女マリーちゃんの容姿を持ってすれば、人々の心は鷲掴み状態。更に私の歌う曲は、超名曲揃い。パピーやダーリンの威光なんて無くて大丈夫♡」
どこから湧いてくるんだろう……この裏付けの無い自信は?

「よし。なら俺だけが芸術高等学校へ出向いて、俺達の関係を秘密にして学長へ掛け合ってやる。言っておくが相棒になる奴にも、お前の縁故関係を明かしちゃダメなんだからな! 解ってるか?」
「わ、解ったわよ……」

どうやら話は纏まったらしい……
ウルフは早速芸術高等学校に赴いて、有能な人をスカウトするんだってさ。
仕事は大丈夫なのか聞いたら、『今日は仕事にならないんだよ』と言われた。

本当に大丈夫!?

リューノSIDE END



(芸術高等学校)
ディレットーレSIDE

本日の授業も全て終わり、自室たる学長室で寛いでいると、ウルフ宰相閣下が自らお見えになった。
私は慌てて立ち上がり、閣下をソファーへと(いざな)い自らも向かい合うようにソファーへ座る。
一体何の用件だろうか?

「悪いね学長……忙しい時に来ちゃって」
「い、いえ……お気遣い無く」
始めて会った時、既に陛下の側近中の側近だったウルフ閣下……本当に気遣われるのは恐縮過ぎる。

「実はさぁ……学長にお願いがあって来たんだ」
「お、お願いですか?」
なんだろうか……何か危ない橋を渡らせようとしているのだろうか?

「あぁ安心して。別にリュカさんに内密で、何か違法なことをさせようってんじゃないから」
「は、はぁ……」
本当だろうか? 彼は自らの野望を叶える為に、軍部を利用したって話を聞いたぞ。

「実はさぁ……知り合いに、歌唄いになりたいって女が居てさぁ……其奴の手助けをして欲しいんだよ」
「はぁ……つまり裏口入学ですか?」
出来ればそんな申し出は断りたい。

「いや、違う違う。芸術高等学校(ここ)に入学させたい云々だったら楽だったんだけど、其奴さぁ……努力とか嫌いな奴でさぁ(笑) 『自分は今すぐにでも歌唄いになりたい』って騒いでて、今更学校で勉強したくないんだよ」

「……だ、だとすると私には如何することも」
裏口入学の手引きだって困るのに、入学することすら拒否されてては何も出来ないと思うのだが? 一体ウルフ閣下は何を私に求めてるのだろうか?

「うん。学長も困っちゃうだろうけど、俺の話を最後まで聞いてよ」
「そ、そうですね。失礼致しました」
その通りだ。未だ全容を話されてないのに、勝手に拒否しては……

「其奴さぁ……本人が思ってるほど歌は上手くないんだけども、我々の知らないような楽曲を頭の中に持っててさ、それらを世間に披露して名声を得ようと考えてる訳」
“我々の知らない楽曲”とは?

「学長もさリュカさん……陛下が聞いたことの無い歌を披露した場面に出会したことあるでしょ?」
「は、はい。陛下が自らピアノを弾きながら素晴らしい歌を聴かせて貰ったことがあります」
芸術高等学校(ここ)が出来た当時に、視察された時に聞かせて戴いた事がある。

「其奴もさ、陛下だけが知ってるような楽曲を頭の中に持っててさ、それで一山当てようと目論んでるんだよね」
「陛下以外にも、あの様な素晴らしい楽曲を存じてる方が居られるんですか」
それは素晴らしい事だ。出来れば我が学園入学して、その才能を伸ばしてもらいたいのだが……

「何度も言うけど其奴は努力がキライで、しかも思ってるほど才能も無い奴なんだ……ただ知識があるだけ。その知識の有効利用が出来ない奴……でも他に才能らしき物も持ち合わせてないから、ソレを生かして有名人になりたがってるんだよ」

「こ、こう言っては何ですが、随分と面倒臭いお方の様ですね」
「ああ……(すげ)ー面倒臭ー!! 俺もコイツに惚れてなければ、絶対無視してる人種だよ」
ほ、惚れてる!? で、ではウルフ閣下の愛人か?

「でね、ここからが本題なんだけど……其奴の頭の中にある楽曲を鼻歌とかで聴いて、それを元に楽譜を書き起こせる者を紹介して欲しいんだ。勿論その人もピアノとか、幾つかの楽器に精通してる方が良いな」
「なるほど……その方が持ち合わせてない能力を補わせるんですね」

「あぁ話が早くて助かる。正にその通り! まぁ本人の意見は兎も角として、学長が紹介してくれる者も一緒にステージに上がらせて、共に世間に認知して貰おうと俺は考えてる」
「となると、私の責任は重大ですね」

「いや……そんな重く考えなくても良いよ。其奴等が失敗したら、それは自業自得って事だ。才能無い奴が努力を惜しんで事に当たったって大成する訳が無いんだからね」
「し、しかし……その方はウルフ閣下の……その……ご好意のある……ご婦人……なんですよね?」

「うん、彼女だよ。でもそれは関係ない! 歌が上手いと勘違いし続けて人前で恥を晒し続けるよりも、早々に自己の限界に気付いて分相応の人生を歩んで欲しいんだよね」
「き、厳しいですね……」

「厳しくないよ。本当に厳しかったら学長にこんな頼み事してないよ(笑)」
た、確かにそうかもしれないけど……
「あぁ、でもね……其奴と俺の関係は秘密にしておいてよ。その話題が先行して有名になられても意味ないから」

「そ、それは解ってます!」
「まぁ万が一、学長が誰かに喋っちゃっても……特殊な内容だから直ぐ判っちゃうよね。学長の口の軽さがさ(笑)」

そ、そんな事をにこやかに言われても……

ディレットーレSIDE END



 
 

 
後書き
何とか書きました。
病院にPC持ち込んで、出来る限り書くつもりです。
……書けるかな? 
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