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ハイスクールD×D 黒蛇奮闘記

作者:ユキアン
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プロローグ

 
前書き
プロローグなのでちょっと短め 

 




ダメだ、死ぬな、頼む、消えるな、オレの傍にいてくれ。腕の中で弱っていくオレの唯一の光が消えそうになる。オレの力が足りないから。

『力が欲しいか?』

誰だ!?

『妹を救うだけの力が』

欲しい!!オレはどうなろうとも、妹が救えるのなら、何だって差し出す!!

『ならば助けを、大声を出せ。それでお前と妹の運命は変わる』

オレは腹の底から、オレから光を奪おうとする男のように叫びを上げる。

『運命は変わった』

「オレが助けに来てやった」










「怪我の具合はどうだ、元士郎?」

地下にある射撃場に親父がやってくる。

「親父か。違和感はないよ」

「そいつは良かった。で、怪我の理由は?」

「火力が足りなかった。表皮を撃ちぬけなかったから、口の中に突っ込んで叩き込んだ」

「まあ、それが今の銃の限界だろうな。今回のやつははぐれでも障壁が堅いやつだったからな」

親父の言うとおりだ。これが今のオレが扱える銃の限界。相手は中級のはぐれなのにだ。親父に頼めば簡単に強くしてくれる。それこそオレが想像する以上の力を与えてくれるだろう。だが、それでは駄目なんだ。オレは人間のままでいなければならない。妹のためにも人間であらねばならない。

親父が複雑そうな目でオレのことを見てくる。そうだよな、妹のために何だって差し出すって言ったのに、人間であることを止めないんだからな。そりゃあ複雑だろうな。

「とりあえず、弾の炸薬はこれ以上増やせないから弾頭の方に細工を施そうと思うんだけど」

「単純に弾頭の金属を変えると更に予算が必要になるぞ」

「う~ん、どうするかな。とりあえずはホローポイント以外に徹甲弾頭も使うしかないのかな?」

「法儀式の効率化も考えてみろ」

「今以上の法儀式なんてありえるのか?」

「所詮は単独宗教での儀式だ。ヴァチカン式は確かに強力ではあるが、他の術式との相性は最悪だ。カバラ式に神道や陰陽道を活用した方が拡張性はある。他にも色々あるが、まずはそこからだな」

「時間は掛かりそうだよな。とりあえず徹甲弾の方はお願いしてもいいかな」

「それぐらいは用意してやる。それから、刀身の方はそろそろ寿命だ。砥は済ませてあるが、いつ折れるか分からんぞ」

親父が懐から4本の片刃のナイフを取り出して手渡してくる。それを受け取って銃の先端の上下に固定する。2丁共、取り付けた後に軽く型を確かめる。

「足開きすぎ、脇も開きすぎ、腕を振りすぎ」

親父が駄目な部分を指摘してくれるので最適化を行っていく。

「やっぱり怪我を無意識に庇ってるな。違和感があるんだろう。服を脱げ」

シャツを脱いで親父に背中を向ければ、何箇所かに針を刺される。

「とりあえずの処置を施しておいた。ユーリンにちゃんと話して薬を調合してもらって休め」

「分かったよ」

ガンベルト兼鞘に銃を戻してロッカーにしまいこんで鎖でロッカーを固定して鍵をかける。一人前になるまでは絶対に許可なく地下から持ち出すなと叩き込まれた。日常と非日常を完全に切り離せと。家族の大人組も仕事と戦闘と私生活のスイッチがあるのか、それの切り替えが上手い。

大人組と言うのは、まあ、その、なんだ。世間一般とは色々とずれているからとしか言いようがない。世間一般から言わせれば、うちの親父はかなりの屑になる。妻以外に愛人が4人いる。そして全員に娘がいる。全部親父の娘だ。おかげでオレには血の繋がった妹が1人に血の繋がらない妹が5人いることになるんだよ。

女癖の悪いように見える親父だが、オレの戸籍上の母親の簪母さんのことが一番で他の母さん達は一段低く扱っている。とは言え、それは本当に僅かな差で、全員をちゃんと愛しているのがよく分かる。たまに砂糖を吐きたくなるぐらいに。仕事中とか戦闘中は男のオレから見ても格好いいのに、母さん達と年も考えずにイチャツイてる姿を見ると何も言えなくなる。妹達の教育に悪い。被害は全部オレに集中するんだから。










う~ん、言った方が良いのか、黙っていたほうが良いのか。この世界のオレは、いや、そういえば元からオレは鈍かったな。今のオレは経験を積んでいるからだな。まあ、この世界のオレ、元士郎が人間に拘る理由は実の妹を種族的に一人にしないためだろう。

無限の力を持つ何かであるオレと、無限の力を持つ悪魔が三人と無限の力を持つ龍と無限の力を持つ元英霊の妻達の間に産まれている娘達。あの男女から産まれた純粋な人間。元士郎はそこに本能で気付いている。

そしてこちらの世界に踏み入れた。神器も使わずに法儀式などの魔力や光力を使わない技術で。無謀にすぎるが、オレが言えた義理ではない。もっと無謀、無理、無茶をやってきた身としては、必要な道具を揃えてやることしか出来ない。あと、ストーキング。

地下から出ていく元士郎の後を気配遮断で隠れて追うオレとユーリン・サッバーハ、静謐のハサンの間に産まれた娘、シーリンの首根っこを掴む。

「シャワーを覗き込むのは駄目」

「は~い」

「よろしい」

放してやると再び気配遮断を行いながらダッシュで元士郎を追いかける。母親に似て変な方向に積極的だな。堂々としていればいいのに、態々気配遮断でこっそりと傍にいるだけとかな。

他にも簪との間に産まれた娘の鞠とクラリッサとの間に産まれた娘のフリーデは水晶での覗き見をしていたみたいだし、蘭との間に産まれた娘の百合は今も隅っこに隠れているし、恋との間に産まれた娘の美玲は使い魔の蛇の視界を共有して、瑞穂は普通にオレが付けている防犯用の監視カメラで見ていたんだろう。タイミングを見計らって元士郎が脱いだ服の争奪戦をやるんだろうな。やれやれだ。

娘達は最初はオレにべったりだったんだけどな。娘達のリアルラックの低さはオレに似ている。よく事件や事故に巻き込まれて、それを元士郎が弱いなりに頑張ってボロボロになりながらもなんとかする内に惚れて、皆が元士郎にアタックしている。血の繋がりもないから悩むことなく突撃できる。オレは身体の構成が色々と変化しまくったせいで元士郎とは全くの別人だからな。ただな、実の妹である瑞穂にまで狙われているのがな。元士郎、まだ中1なのに。

昔から二人はべったりだったが、義妹達に元士郎を盗られまいと物凄く積極的になった。見ていて楽しいが、既成事実を作ろうとするのは早すぎで危険だから止めている。あと、既成事実ってあまり役に立たないからな。オレを見れば分かるだろう。

だが、それ以上に悲しいのが、家族の中で元士郎は一番弱い、守られる側の存在であるということだ。才能がない、素質がない、ハングリーさがない、何より真骨頂とも言える神器をまともに扱えない。才能も素質もないものが守りに入った時点で壁は超えられない。いつか、現実に打ちのめされて折れる。それでも立ち上げれるかどうかは出会いで全てが決まる。

元士郎がオレにとってのソーナとセラのように、理解して受け止めてくれる人を。まあ、うちの娘達はちょっと不利。なんせ、折る側だからな。そんな相手に絆されるほど、絆される、やべえな、惚れる可能性があるぞ。単純にも程が有るぞ、オレ!?

元士郎の将来に不安を覚えながら10年前を思い出す。







「元士郎、何を探しているの?ここは、私達の始まりの世界の棚?」

世界の狭間で皆が思い思いに次に行く世界を選んでいる中、オレはいつものように過ごしていた。そんなオレに簪が尋ねてきた。

「妹が、オレが命を奪ってしまった妹が幸せに暮らしている可能性。それを探しているんだ。だけどな、妹が存在しているのはこの一冊しかまだ見つかっていない。オレ達の人生そのものの分しかな。オレの周りの何もかもがイレギュラー。それがオレ達の世界だ」

オレがイレギュラーとなるものは他にもあった。魔戒騎士だったり、神器を別の方向性に持っていったりなどの能力面に関するものばかりであった。環境が悪い物でも、それは転生者と呼べる者達の行動によってだ。

「吹っ切ったと思っていたんだけどな。これだけの量を見たら、どうしても気になっちまってな。だけど、やっぱりないのかな。名前すら知らない妹がまともに暮らしている世界」

「やり直しとは言わないけど、貴方が自身がまともに暮らせるようにしてあげればいいとは思わない?」

そう言って簪が差し出した本は、此処ではありえない書きさしの本であり、書かれているのはオレが神器に覚醒し妹の命を吸い上げる直前までだ。

「苦労したけど、なんとか出来たよ。私達が直接この世界に入って観察することによって初めて世界が確定する。書き換えること無く、新たに書き連ねるだけの世界」

「どうしてこんなことを?」

「昔から隠し事が下手なんですよ。毎回此処に戻る度に始まりの世界の棚を気にかけて、こっそり探していたことぐらいお見通しです。だから、皆で内緒で用意したんです。時間はかかりましたがこうしてね」

「すまん。それから、ありがとう」












本当ならオレにだって同じことが出来た。だが、どうしても踏ん切りがつかずに、何処か別の世界にいないかと探し続けていた。簪達のお陰でようやく決心がつき、こうしてこの世界のオレである元士郎と妹の瑞穂を養子として引き取った。あの男女は塀の向こうで、懲役はオレの時よりは少ないが、男の方は薬もやっていたし、女の方は態度も悪くて中々出てこられないだろうよ。

この世界のオレは、瑞穂は、娘達は、どんな人生を送るのか。それを見させてくれ。これはオレ達の夢なのだから。見せてくれ、可能性の物語を。







 
 

 
後書き
と言うわけで新作です。本編中での語り通り、もしもの可能性を見る物語です。元ネタである黒龍伝説よりも弱い能力(ちょっと運動神経がいい程度)を豊富な装備(人間としては)で頑張れるといいな~、という作品です。

基本の戦闘スタイルはガン=カタ。2丁拳銃に銃剣を上下に装着した形で遠近両方に対応している形です。ただ、所詮は一般人の領域を出ていないのではぐれ討伐に一苦労しています。神器も直感で妹を殺しかけたものだと判断して封印中。移動の補助に立体機動装置のワイヤーだけを使ったりしています。

そんな涙ぐましい努力を素で凌駕する妹達に心を折られる日はそんなに遠くない気がします。



キャラが混乱しそうなので一覧を
[ ]内は職業
( )内は年齢

黒龍伝説 → 黒蛇(くろへび)奮闘記 → 娘

ソーナ → 匙 簪[専業主婦] → 匙 鞠(9)
セラフォルー → クラリッサ・ハルフォーフ[服飾デザイナー] → フリーデ・ハルフォーフ(9)
仁村 留流子 → 五反田 蘭[営業時間が気まぐれの食堂] → 五反田 百合(8)
オーフィス → 呂恋[猟師] → 呂美玲(8)
静謐のハサン → ユーリン・サッバーハ[クラリッサの専属モデル] → シーリン・サッバーハ(5)

今回はサブ
匙 元士郎 → 匙 九十九(鍛冶師) → 匙 瑞穂(10) 匙 元士郎(13) 
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