夢幻水滸伝
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第十話 関ヶ原の夜戦その十三
「完全に互角や」
「そういうことだがやな」
「わかったみたいやな」
「これでも頭の回転は悪いないついもりだがや」
坂口は槍を繰り出しつつ言った、槍はただ突くだけでなく払いもする。時には突くその軌道が蛇の様に動きそうして巧みに攻めもして中里を攻めている。だが中里はその攻撃を刀で完璧に防ぎ隙を見ての反撃も浴びせてそれを防がせてもいた。
「軍勢だがや」
「そや、こっちは神星がもう一人おるさかいな」
「綾乃ちゃんだがや」
「紫さんですか」
坂口だけでなく正宗も言った。
「あの方ですね」
「よりによってあの娘がおっただがや」
「そや、綾乃ちゃんが軍勢を率いてや」
ここでだ、中里達の周りでだった。これまでは両軍が今はせめぎ合っていた。関西の軍勢の攻勢は山を登る立ち場と数の違いそして中里が坂口達との勝負に入ったことで拮抗していたがここにだった。
火球や雷、それに冷気等が来た。正宗はそれを横目で見て言った。
「大蛇ですね」
「大蛇の息だがや」
坂口もわかった、何故急にそういったものが来たのかを。
「それだがや」
「そうですね、八岐大蛇もまた龍」
その中に分類される存在だというのだ。
「龍は炎や冷気の息を吐くもの」
「それは龍だけとは限らないことにしてもだがや」
「龍は必ずそうした息を吐く」
「だからだがや」
「それで攻めてきましたか」
「しかも敵の陣形は乱れていません」
これは部将達が前線で的確な采配を執っているからだ、しかし軍勢全体の采配は綾乃が執っているのだ。
「これでは」
「軍勢同士の戦もだがや」
「危ういですね」
「龍の息は強いだがや」
「はい、これでは」
「星が負けても軍勢が負けてもあかん」
中里は戦う二人に不敵な笑みで言った。
「それがこの世界での戦やな」
「その通りだがや、それでってことだぎゃな」
「そうや、この戦もらったな」
不敵な笑みはそのままだった、東海の軍勢は大蛇の攻撃を受け乱れたところを攻められ崩れだした。関ヶ原の戦いはここに趨勢が決した。
第十話 完
2017・3・15
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