夢幻水滸伝
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第十話 関ヶ原の夜戦その十二
「あの人の忍術です」
「火遁だな」
「はい、忍術を極めた方の術です」
「並大抵のものではない」
「それが来ます」
「ならその術に」
「これから対しましょう」
こう言ってだ、そのうえでだった。
二人で今度は芥川の火遁の術、紅蓮に燃える炎が手裏剣に加わって迫るのを見た。二人は炎にも向かい合った。
中里は正宗の 薙刀を千鳥で受けた。その瞬間に銀と銀の火花が起こり刀を通じて衝撃が腕に来た。
その衝撃からだ、中里はあるものを知った。
「強いのう」
「伊達に星ではないつもりです」
正宗は刀と薙刀の鍔競り合いをしつつ応えた。
「私としても」
「そやな、薙刀だけやない」
神具のそれだけではというのだ。
「腕も確かや」
「それを片手で受けられるとは」
「感じるで」
笑みを浮かべてだ、中里はさらに言った。
「その片手で自分の強さをな」
「そうですか」
「ああ、そやから全力でやってる」
正宗にこうも言ったのだった。
「今もな、そしてや」
「わしもおるだがや」
もう一人の相手坂口は蜻蛉切を繰り出す、凄まじい突きを幾度も繰り出す。だが中里は右手の鬼切で防いでいた。
「こうしてな」
「こっちも強いな」
「伊達に棟梁やないで」
坂口は攻防の中で中里に言った。
「わしも」
「そやな、天の星やしな」
「確かに天の星と神の星の力量差は歴然や」
相当な差があるというのだ。
「けどな、星の強弱も」
「補うことが出来る」
「一人では無理でも二人ではどうだがや」
こう中里に問うた、攻めつつ。
「そこだがや」
「その通りや、僕も自分等には一対一やったら勝てる」
それが出来るというのだ。
「そやけどな」
「二人ではですね」
「どうだがや」
「強い、一対一で勝てる言うても全力でやってや」
そのうえでというのだ。
「出来る、けどな」
「二人だがや、今は」
「そやからこんな感じや」
互角の勝負だというのだ。
「どうもな」
「そうだぎゃな」
「ああ、あくまで互角や」
そうした状況での攻防だというのだ。
「今はな」
「今はと言うだがや」
「そうや、自分等と僕の勝負はな」
それはというのだ。
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