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ランブリング!!

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【RB1】
  【RB第七話】

 夜、ライダーズ一年男子寮。

 入学した生徒に個室或いは二人部屋が与えられる。

 クルスの入居した部屋は二人部屋だが、ルームメイトはいない。

 個室に空きが無く、クルスが貧乏クジを引くように一人で二人部屋を使用する事になった。

 とはいえクルス個人は個室だろうと二人部屋だろうと大して気にしていないが。

 二人部屋という事もあり、ベッドは二基、机も椅子も二人分揃っていて、備え付けのクレジット端末機や投影ディスプレイ、簡易冷蔵庫、後は浴槽兼トイレと其処らのビジネスホテルを少しランクアップさせたぐらいの快適さはあった。


「……てか部屋に端末機あるなら説明しろよ、クソ担任」


 RBパイロット科《ライダーズ》だけではなく整備科《メンテナーズ》、設計科《デザイナーズ》達全員が思っているだろう。

 二人部屋にクレジット端末機があるなら個室にも然り、ついでに言えば寮の入り口や食堂にもクレジット端末機が備え付けられていた。

 舌打ちしつつもクルスはディスプレイを操作し、RBカタログページを開く。


 日本のメーカーだけではなく海外メーカーのRB、自家製カスタマイズされたメーカー品等様々な機体が画面上に映し出されている。

 クレジット十五万で買えそうな機体を検索してみる――。


「バイザー型の火影・壱式に弐式。複眼型の【山茶花】、単眼型の【媛椿】……か」

 ボディモジュールには大まかに別けて三種類ある。

 訓練機で使ったバイザー型――これはバランスに特化したタイプだ。

 複眼型はレーダーやセンサーを強化したタイプ。

 単眼型は射撃――狙撃といった遠距離特化タイプ。

 大半のライダーズはやはり扱いやすいバイザー型、それも四ツ橋重工製を選ぶ。

 だがクルスにはどれもピンとは来なかった。

 RBカタログとは別に動作保証の無いRB中古ショップのページを開く。

 金額は比較的安いものの、片腕のモジュールが無いものが多い、酷いものだとボディモジュールしか無いものも。

 とはいえ、それだけ買って後は単品ショップでモジュール購入し、整備科《メンテナーズ》にクレジットを支払って整備という方法もあるにはあるのだが。


「チッ……思った様なのがねぇな……」


 またRBカタログページに戻る――現クレジットで購入は無理だが最新型のカタログを見てみる。

 四ツ橋重工最新型【火影・五式】、海外メーカーであるタロンカンパニー製【至高のオーバーロード・ジャブスコ】、同じく海外メーカーのライヒ社製【リベリオン】等様々な機体があるが、最新型だけあって百万クレジット近い金額になっている。


「けっ……やっぱ十五万じゃ無理か」


 もう一度中古ショップのページを開き、見てみるが特にめぼしい物は見当たらない。

 掘り出し物コーナーを見ても、既存のアームモジュールの型落ち品、動作保証無しのショットガンモジュールといった危なそうな物ばかりだ。

 念のためRBオークションページも見てみる。

 RBモジュール及び本体が競りで落とせるページだが、機体に関してはやはり火影・壱式でも五万クレジット――しかも受付終了時間は明後日迄だから最終的には十五万近く取られるのが関の山だ。

 ページを閉じたクルスは一人ごちる。


「……暫くは訓練機で我慢すっかな。それか……休みに人工島スクラップ置き場を探してみるか」


 許可さえ取ればスクラップ置き場から何を持っていっても構わない、理由も単純でやはりリサイクルするよりも鉄屑が増える方が早いのだ。

 何にしても明日の訓練に滞りなく参加できるように学園ページを開き、訓練機使用許可申請を出す。

 端末機に光が宿り、クレジットカードを通すと残高マイナス五千減り、残り十四万五千となった。

 ライダーズ大半の生徒は明日に備えて訓練機使用許可申請をしているだろう。

 ディスプレイを更に操作し、RB専門チャンネルを開く。

 今はコマーシャルを流しているらしく、各企業の最新型のRBの宣伝が行われていた。

 買えもしない最新型のコマーシャルをつまらなそうに見ていると、直ぐに中継が再開された。


「……ヨーロッパ方面の試合か」


 FRBBの中継場所がヨーロッパのドームで、中世的な建物が映し出されていた。

 建物はランブリングバトルの影響で所々破壊されているが、あれはあくまでもステージだからまた明日になれば新しいステージに変貌している。


「……何か見る気起きねぇ」


 ソッとディスプレイを閉じたクルス――ライダーズになったのだから望めば試合は土日参加も可能だ。

 だがその為にも自分の機体が必要だが、カタログ見た限りじゃクルスの思う機体は全く無いのも事実。

 火影・弐式を購入してカスタマイズもありだが、どうもピンとこない。


「まあいいさ。土日にバイトしてクレジット稼ぐもありだし、スクラップ置き場回って使えそうなボディモジュールあるかもしれねぇからな」


 ボディモジュールが捨てられてるのは希だが、無いわけではなかった。

 喉の渇きを覚えたクルスは部屋の鍵を取り、自室を出る。


「畠山くん! 何を買ったんすか!?」


 部屋を出るなり聞こえてくる声に、クルスの視線はそっちに映った。


「フッ……買った機体は勿論【火影・五式】だ」

「ま、マジっすか!? あれって四ツ橋重工最新型の機体じゃないっすか!? 十五万クレジットじゃとても買えない代物っすよ!?」


 クルスも流石に耳を疑う、さっきまで見ていたオークションページでも最低落札価格は九十万クレジット。

 今日貰ったクレジットではとても買えないのだが――。


「単純明快。実は入学祝い金としてクレジット百万程貰っていた。ライダーズとして恥ずかしくないような機体を選ぶようにとね」

「成る程。クレジットは架空のお金っすからね。現金支給よりは痛くも無いですし」


 最近では祝い金としてクレジットを渡す親も少なくないらしい――クルス等は祝い金も何も貰ってはいないのだが。


「そんなわけで明日の朝には到着する予定だ。組み立てはメンテナーズの生徒に依頼して、組み上がった後はデザイナーズに塗装の依頼だ。早ければ明日の訓練には使えそうだな」

「すごいっすね、畠山くん!」

「海くん、それさえあればあの天使も……」

「……注目してくれるかな」


 後の方は何を言ってるかはわからなかったが、クルスはとりあえず近くの自販機に飲み物を買いに行くのだった。


「……けっ、持ってる所は持ってるってやつか。……火影・五式、最新型だが……あれは俺にはピンと来ないな」


 自販機から飲み物を取るクルス、最新型を見ても何れもピンと来ないのは事実。

 勿論RBは無数に存在するのだからこれだと思うものを見つければ良いのだが――。

 その頃、ライダーズ女子寮。

 男子ほど多くは無いものの、昨今女性ライダーズは増えつつある。

 去年増改築した女子寮の大半は二人部屋なのだが――。


「……何で貴女が私のルームメイトなのですか」

「それは決めた人に文句を言ってよ、有川さん!」


 有川由加と加川有栖の二人が相部屋となっていた。

 頭を押さえる二人――今日一日で犬猿の仲となった二人の原因はクルスだが――。


「仕方ありません、ルームメイトとなった以上、同じ釜のご飯を食べる仲です。よろしくお願いいたします」


 スッと手を差し伸べる由加の手は白くて小さくてアリスには羨ましかった。


「こ、此方こそよろしくお願いします」


 差し伸べられた手を握るアリス――特に何かあるわけでもなく平穏に握手を済ませた二人。


「……ルームメイトですが、兄に必要以上に近付くのであれば排除しますので」

「も、もう! 恋愛は自由でしょ!? あたしが最初にクルスを好きになったんだし!」

「ですが、最も身近にいるのは私です」

「むぅ……て、転校さえなかったらあたしが一番近かったのに……」


 勝ち誇ったかのような笑顔を見せる由加だが、近すぎると相手も気づかないという事もあるという事実にまだ気付いてなかった。

 アリスはアリスでとりあえず隙を見てクルスをデートに誘う算段を考え始めていた。

 入学初日、様々な事が起きた一日だが明日もまた畠山海の新型が波乱を起こすかもしれない。 
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