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ソードアート・オンラインⅡ〜隻腕の大剣使い〜

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第81話 《赤眼》のザザ

銃士X(マスケティア・イクス)を倒したオレは、シノンが待機しているであろう場所に向かって急いでいた。恐らく死銃《デス・ガン》の纏っているマントは透明マントの機能を持っている。その機能を使えば《サテライト・スキャン》にも見つけられずに堂々と動けるし、油断しているライバルに不意打ちを仕掛ける事が出来る。他の出場者が狙われないか心配だけど、まずはシノンの所に行かないと。そう思い辺りを見渡しながら移動していたらーーー見つけた。

「シノ・・・ッ!?」

彼女の名前を呼ぼうとしたが、目の前に広がった光景に口を閉じる事を余儀なくされた。そう、麻痺をくらって地面に倒れているシノンに拳銃を向けるーーー死銃(デス・ガン)という不吉なツーショットの光景に。オレは死銃(デス・ガン)がシノンに向けた拳銃の引き金を引く前にーーー

「やめろォォォーーー!!!!!」

『ッ!?』

《オーバーロード》を発動して2人の間に割り込み、シノンを庇い銃弾を左手で受け、剣にビームの刀身を展開し、死銃(デス・ガン)の腹を大きく斬る。でもその一太刀で撃破する事は出来ず、死銃(デス・ガン)は後ろに大きく跳び距離を取る。

【ライリュウ・・・やはり、お前は・・・本物、だったか・・・】

「ああ、オレは本物だ。昨日はしらばっくれて悪かったな、死銃(デス・ガン)。いや・・・」

あえてこの男の名前を呼ぶならーーー

「殺人ギルド《笑う棺桶(ラフィン・コフィン)》幹部・・・《赤眼》のザザ!!」

【俺の、名を・・・覚えて、いたか・・・】

この男のかつての名前はザザ。SAO当時に赤い眼の骸骨のマスクと細剣カテゴリの武器・エストックを装備していて、それが理由で『《赤眼》のザザ』と呼ばれ恐れられた元《笑う棺桶(ラフィン・コフィン)》幹部のプレイヤーだ。オレが復讐心に囚われていた頃、ラフコフの情報を片っ端から集めてたから、オレはこの男を知ってる。
一先ず、今すべき事はただ一つーーー

「シノン、逃げるぞ!!!」

「あっ・・・」

オレは麻痺しているシノンと《へカートⅡ》を抱き上げ、もう一度《オーバーロード》を発動してこの場を立ち去る。ザザはオレたちを逃がすものかと拳銃をホルスターにしまって肩にかけたライフルを構えるが、それが終わる頃にはオレたちはもう視界から消えている。

「ッ!!!」

発動から10秒くらいして、一瞬だけ強い頭痛に襲われた。オレはこれ以上脳に負担をかけないように《オーバーロード》を解除する。

「もう、いいよ・・・おいて行って・・・あんた、苦しそうじゃない・・・」

「バカ言うな!!お前をおいて行ったら・・・絶対に後悔する!!!」

どれだけ頭が痛くても、どれだけ苦しくても、それを理由にシノンをおいて逃げない。そんなことしたら死ぬほど後悔するーーー後悔ほど愚かなものはないから、そんなこと絶対にしない。
オレは息を荒くしながら走ってザザから逃げていたら、レンタルバギーの店を見つけた。そのバギーはオレがシノンを後ろに乗せて総督府まで走らせた3人乗りのバギーが二台。そして機械仕掛けの馬ーーーロボットホースが一頭置いてあった。奴から逃げる逃げるには、これ以上ない助けになる。

「馬は無理よ・・・踏破力が高いけど、扱いが難しすぎる・・・」

シノンの言うとおり、オレはロボットホースではなくバギーに乗ることにした。そもそもオレは馬には乗ったことないし、そんな慣れない方法より得物を選ぶ。後部座席にシノンを座らせ、その隣に《へカートⅡ》を立てかける。そしてオレは運転席に座りバギーのエンジンに火をつけ、レンタルバギーショップから少し出た所まで移動する。

「シノン、ライフルであの馬を破壊してくれ」

「え・・・分かった。やってみる・・・」

あのロボットホースは扱いが難しくても、使いこなせていればばより速く走れるかもしれない。そんな物に乗ってこられたら、いずれ追いつかれる。シノンもそれを理解して、《へカートⅡ》を構える。あとはシノンが引き金を引くのを待つだけーーー

「え、何で・・・!?」

「どうした?」

「引けない・・・何でよ!?トリガーが引けない!」

「ハァ!?」

シノンの指が固まって、引き金(トリガー)を引けなくなっていた。だったらオレが馬を直接斬ろうと思ったがーーーザザの奴が追いついてきて、とてもそんな余裕はない。

「シノン、馬はもういい。掴まれ!」

オレはシノンの手を腰にまわして、バギーを走らせて奴から逃走する。

「シノン、気を抜くな。オレが思った通りだ」

オレが考えていた事は完全に当たってた。ザザはさっきのレンタルバギー屋から、オレ達に追いつくためにーーーオレが乗るのを諦めたロボットホースの上に乗ってきた。しかもかなり馬に慣れてる。このままじゃすぐに追いつかれる。

「逃げて!もっとスピード出して!早く逃げて!!」

「分かってる!!」

バギーの後部座席からオレの腰に手を回しているシノンの言う通り、もっとスピードを上げて走ってはいるけど、ザザと距離を離す事は出来てない。そろそろ最高速度まで加速するのに、どんだけ馬に慣れてんだよ、ザザの奴。オレがそんなことを考えていたらーーーザザが放った銃弾が、オレの顔の左横を通り過ぎた。

「いやァァァァァァ!!!」

「!?」

オレの後ろでシノンが、恐怖のあまりにらしくない声を上げているのに少し驚いてしまった。こんな状況に立たされたんだ、それは仕方ないとは思ってる。でもーーー何なんだ?この既視感は。
そう思いつつも、ザザが放ったもう一発の銃弾がバギーの装甲に当たった事で逃走する事に意識を向き直した。

「やだよぉ・・・助けて・・・助けて・・・!!」

後ろで涙声で助けを求めるシノンを見て、この既視感の正体を理解する事が出来た。全く同じって訳じゃないけど、今のシノンはーーー

『嘘だろ?な、なんで、なんでアレが!』

『動け!動け動け!動いてくれ!!』

SAOでPoHが持ってた《友切包丁(メイトチョッパー)》を見て、通り魔事件のトラウマからきた恐怖で身体が動かなくなったオレと似てるんだ。


「シノン!オレの声、聞こえるか!?」

オレは恐怖に包まれているシノンに声をかけて、意識をオレに向けさせる。

「このままだと追いつかれる。お前が奴を狙撃してくれ」

「無理・・・無理だよ!!」

「命中させなくてもいい!!牽制だけでいいんだ!!」

「無理!あいつ・・・あいつは・・・」

オレが《オーバーロード》で奴に一撃叩き込む事も出来なくはないけど、そんな事をしたら、ハンドルがお留守になる。シノンに狙撃してもらわないと、多分逃げ切れない。それでも無理ならーーー

「分かった!そんなに無理だってんなら、運転を代われ!!オレがそのライフルで撃つ!!」

シノンに運転を代わってもらって、オレが《へカートⅡ》を使って奴を撃つ。ライフル狙撃どころかハンドガンでも発砲すらまともに出来ないオレでも、《へカートⅡ》の威力に耐えて数撃ちゃいずれ当たる。動けない奴よりまだマシだ。

「へカートは、私の分身・・・私、以外の、誰にも扱えない・・・」

「・・・じゃあやってくれ。お前しか扱えないなら」

オレの言葉に応じてくれたのか、シノンが後部座席からライフルを背後に向けてくれたのが、走行音に紛れた小さな物音で分かる。このまま撃ってくれれば逃げ切れるーーー

「・・・撃てない。撃てないの・・・指が動かない。私、もう戦えない・・・」

なんて、簡単に事が運べる訳じゃない。そもそもこれはシノンの精神的な問題だ。オレの思う通りに行くわけがない。

「撃てるさ。戦えない人間なんかいない・・・戦うか、戦わないか・・・その選択があるだけだ!!!」

オレはバギーの右のハンドルを左手で握り、右手を後ろにいるシノンの右手に添える。

「選択なら、私は戦わない方を選ぶ・・・もう辛い思いはしたくない・・・この世界でなら強くなれると思ったのは、ただの幻想だった」

その言葉を聞くと、ますます昔のオレと似たような心境だと思えてくる。こういう時、昔のオレには何があったっけーーー

「・・・シノン、オレも一緒に撃つよ。一度だけでいい、この指を動かしてくれ。オレが支える・・・オレが仲間になる!」

オレには、昔から今まで支えてくれる仲間がいる。今のシノンにはそんな仲間が必要だ。だからーーーオレが仲間になる。
オレの呼びかけが多少は聞いたのか、固まっていたシノンの指が少しずつ動き始め、ライフルの引き金(トリガー)にかけることが出来た。

「ダメ!こんなに揺れてたら照準が・・・」

確かに走行中に狙撃体制に入っても、揺れがすごくて照準が合わなくなる。それじゃまともに狙えないのも無理はない。何か方法はーーー

「おっ!ラッキー!」

「え?」

「丁度いいジャンプ台を見つけた。大体5秒後に揺れが止まる!」

こんな絶好のチャンス、逃す訳にはいかない。必ずモノにする!

「2・・・」

ザザのハンドガンの銃口から《弾道予測線》がシノンの頬に伸びる。でもーーー

「1・・・」

ーーーもう遅い。

「今だ!!!」

オレとシノンが乗るバギーは転倒して逆さになっていた自動車の車体に乗っかり、そのまま坂を登るように走行しーーー宙に浮いた。空中なら揺れはほぼゼロだ。それなら狙撃できるだろ。それを理解したのか何なのか、シノンの顔つきがよくなった。まるで、戦い渦中にいる戦士のように。
その戦士は自身の分身と呼ぶ女神(へカート)の名を持つ狙撃銃の引き金を引きーーー運命を決める一弾を放った。だが、その銃弾はザザから大きく外れてしまった。でもーーー

「上出来・・・!」

外れたと思った銃弾は停車していたワゴン車に命中し、残った燃料に引火する。そしてザザの乗っているロボットホースが真横を通ったところでーーー辺りが火の海と化す爆発が起きた。その爆風を受けながらオレ達の乗っているバギーが着地し、ブレーキをかけて爆炎の中にいるザザを見る。その様はまるで、地獄の業火に身を焼かれ、その命を焦がし尽くされるかのように見えた。でもその炎の中から、黒い何かが飛び出していった。それが何なのか、すぐに理解できたーーー
























奴はまだくたばってない。 
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