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普通だった少年の憑依&転移転生物語

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【ハリー・ポッター】編
  206 第一の課題


SIDE OTHER

第一の課題は、営巣(えいそう)しているドラゴンから金の卵を盗む事。

順番はフラーを初めとして、くじ引きの様に四頭のドラゴンの動く模型を引くような塩梅で行い、その結果、ロンが1番目、フラー2番、クラムが三番手、そして最後(トリ)はアニー。

ドラゴンの種類は一番のロンから順にスウェーデン・ショート‐スナウト種、ウェールズ・グリーン種、中国火の玉、ハンガリー・ホーンテール種の順で、そしてそのどれもが営巣中の母ドラゴンで、その母ドラゴンから〝卵〟を盗み出すと云うものなので、危険度は常人からしたら計りしれないだろう。

……そう、〝常人〟からしたら…。

話は変わるが、〝アニー・ポッターの名前を知らない人間は魔法界に居ない〟と云っても過言ではない。

……では、〝ロン・ウィーズリーの知名度は?〟と云うと、アニー・ポッターと比べたら〝そこそこ〟と答えるしかないだろう。

ロン・ウィーズリー──ロナルド・ランスロー・ウィーズリーは、アーサー・ウィーズリーとモリー・ウィーズリーの間に産まれた六人目の男児である。

ウィーズリー家は〝血を裏切る一族〟と、〝(ふる)き血の守護者〟から陰ながら(そし)られているが、それは(およ)そ〝非魔法族(マグル)好き〟なのを憚らないアーサー・ウィーズリーに向けてのもの。

……では何故、そんなロナルドに〝アニー・ポッターと比べても〝そこそこ〟〟の知名度があるかと云うと、大体三つの理由に分けられる。

一つは〝三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)〟の競技者であると云う点。それについては、〝三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)〟の知名度を考えれば事細やかに語るべくことでもないだろう。

二つ、ガリオンくじグランプリで一等を当てたこと。これも当時の賞金1500枚ものガリオン金貨を考えれば割愛。

そして三つ目なのだが、時期としてはアニーとまんま同時期に取った〝とある資格〟により、一部の好事家(こうずか)からでしかないがアニー・ポッター以上に注目されていた。……その〝とある資格〟とは〝変身術の最高峰〟とも名高い〝動物もどき(アニメーガス)〟についての資格だったのだが、ロン・ウィーズリーの〝変身の対象〟が問題だった。

ドラゴン。奇しくも第一の課題の相手と同じだった。

「……一応〝補強〟しとくか。……本物の卵にも」


――“守れ(プロテゴ)”“万全の守り(プロテゴ・トタラム)”“恐ろしきものから守れ(プロテゴ・ホリビリス)”


もう一度云うが、第一の課題は、営巣(えいそう)しているドラゴンから金の卵を盗む事。

……だから、〝こういう事〟も起こり得たのだ。

<GUWOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!>

ドラゴンと対峙したロンがやった事は単純明快。

観客席との間と本物の卵の周辺に、防護魔法を重ね掛けしてからドラゴンに変身してその咆哮をスウェーデン・ショート‐スナウト種にぶつけただけの事。

しかし、たかが咆哮と侮るなかれ。その地を揺るがすほどの咆哮(おんぱ)は容易くスナウト種の鼓膜を破壊して、鼓膜を破壊されたスナウト種はもんどりを打つ。……そして、ロンはスナウト種の調子が調うのを待ってやる理由も無いので、その隙に卵の方へと歩を進めた。

ロンが入場してから、3分足らずの出来事には50点満点の内の、43点と云う点数が付けられた。

SIDE END

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

SIDE アニー・リリー・ポッター

それは突然のことだった。

――<GUWOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!>

「っ!!?」「っ!!?」「っ!!?」

全くの不意の地響きが如くの〝咆哮〟が、ボク、フラー、クラムの三人は身を固くする。……しかし、ボクはその〝咆哮〟を知っていたので硬直状態から直ぐに回復出来た。

(……ロン、はしゃいでるねぇ…)

ロンは(いち)早く〝第一課題(ドラゴン)〟の事に気付いていたので、当然のように日々の訓練にドラゴンへの対抗策が織り込まれ、その際に聞かせてもらったのだ〝咆哮(バウンド・ボイス)〟を。

そんなボクに数秒遅れてフラーとクラムが回復したのも束の間。競技の終了を告げるアナウンスが鳴り響く。

――『……っ、取ったぁぁぁあああっっ! ウィーズリー選手、何という早業! これは高得点が期待出来ます!』

「ヴぁかな!」

「信じられませーん。早すぎまーす!」

二人は驚愕している。どうやらボクと同時期に、ドラゴンの〝動物もどき(アニメーガス)〟となったのは知らなかったらしい。しかしここで〝フリ〟でも驚いておかないと面倒な事になりそうなので、ボクも一応驚いたような表情を浮かべておく。

………。

……。

…。

フラーとクラムの番が終わり、ボクの番が来てテントを出る。今からドラゴンを出し抜こうと云うのに、ボクの心には〝焦り〟の[あ]の字も無かった。

「よしっ」

掛け声と共に競技場とテントからの柵を越える。

(まずはホーンテールを探さなきゃ…)

競技場はクィディッチのピッチをずっと小さくしたようなもので、地面には本来ドラゴンが営巣するだろう洞窟をイメージしたのか、ごつごつとした、大岩がところ狭しと転がっている。

……ついでとばかりにドラゴンも捕捉。ドラゴンの縦に割れた瞳もこちらを向いている。捕捉された。

(視認──そして時間稼ぎ)


――“錯乱せよ(コンファンド)”


(よし、命中──次は状況確認)

ドラゴンの弱点は瞳なので、ボクはハンガリー・ホーンテールの目に向けて〝錯乱呪文〟を放つ。上手いこと命中してくれた。きっとホーンテールからしたらボクがそこかしこに出現している様に見えるだろう。

(……盾に出来そうだね)

岩の影に身を預け、一旦の安心を得る。正直、真平面なフィールドだと思っていたので、これは大きなアドバンテージだ。

(……あれは──卵…?)

幅一メートルは有りそうな尻尾をあっちこっちへ振り回しているホーンテールを視界に収めながら辺りを見回していると、黒々しい岩の群れの似つかしくない乳白色の物体を発見。

どこからどう見ても卵にしか見えなかった。

(……一応、防御しておこうかな)


――“守れ(プロテゴ)”“万全の守り(プロテゴ・トタラム)”“恐ろしきものから守れ(プロテゴ・ホリビリス)”


その卵についても審査対象に入っているのだと類推して、直ぐに卵の周りに防御魔法を重ね掛けする。

(……あとは攻撃…)

「……なんだけどなぁ…」

ふと思い付くのは〝結膜炎の呪い〟なのだが、先に放った〝錯乱呪文〟の所為でドラゴンの向きがころころ変わっているので難しい。〝悪霊の火〟も金の卵を燃やしてしまう可能性があるので本末転倒。

「……まぁ力押ししかないか…」

ため息と共に、ふと目についた一塊の岩にいくつかの魔法を施す。


――“変化せよ(フェラベルト)”“肥大せよ(エンゴージオ)”


杖を向けられた岩は瞬く間に極太の──一メートルは有りそうなほどの太さの鋼鉄性のロープとなった。後はもう1つの魔法を使うだけ。

「これで無理だったらまた考えれば良いよね──“縛れ(インカーセラス)”」

<GUR!?>

鋼鉄のロープは瞬く間にホーンテールへと巻き付くいていく。無駄な殺生となってしまうので、首にまでは巻き付けない。ぎりぎりと身を縛ってくるロープにホーンテールはもがきにもがくが、ロープはびくともしない。

幾本もの鋼線を注連縄(しめなわ)の様に編んだ甲斐があり──しかもその強度はロンのお墨付きでもあり、そうなれば、もうボクと金の卵との間を阻むものは居なかった。

「金の卵ゲットだぜ──なーんてね」

44点──それがボクの〝三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)〟の第一の試練に()ける評価だった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

―素晴らしかったですよ、ポッターとウィーズリー! 〝変身術〟の教鞭(きょうべん)を取っている者としてはこれほど嬉しい事はありません―

―よくやったな、アニー、ロン!―

―上手いこと出し抜いたものだ。ポッター、お前には見るべきところがある。将来の選択肢として、〝闇祓い(オーラー)〟になるを検討しておいても損は無いぞ―

上から順にマクゴナガル先生とハグリッド──少し違うかもしれないがムーディー先生から称賛の声を受けてからテントに入る。すると、やはり無傷だったロンが迎えてくれる。

「お疲れ、アニー」

「こっちこそ、ロン」

――「全員、よくやった!」

ロンと労い合うのも束の間、バグマン氏が声音と足取りを弾ませながらテントに入ってきて、意味ありげに一瞬だけボクを一瞥(いちべつ)すると、そのまま第二の課題についての説明を始めてしまった。

「労いの言葉ここまでとさせてもらうとして、手短に話そうか。〝第二の課題〟についてだ。〝第二の課題〟は来年の2月24日に開始される。……判る通り、第二の課題までは十分な期間がある。しかし、その間を無為に浪費したくないので諸君の智慧(ちけい)を見たく思う」

(……〝智慧〟ってまた大袈裟な…)

〝智慧〟と大仰な言い回しに首を傾げるが、バグマン氏からの連絡は続く。

「その材料は君たちが持っている金の卵だ。その金の卵をよく見てくれ──蝶番(ちょうつがい)が有って卵が開くようになっているのは判るだろう?」

確かによくよく観察してみると金の卵には蝶番と〝溝〟有って、ちょちょいと爪でも立ててやれば簡単に開きそうな構造だった。

「その卵がヒントで、第二の課題について教えてくれるだろう。……では諸君、第二の課題でも検討を祈る」

そう言い残してバグマン氏はテントを出ていった。

「さぁ、〝蝿〟も寄ってくる前に俺達も行こうか。……寮できっと歓待してくれるだろう」

「……そうだね。一応だけど“透明マント”も被っておこうか」

ロンが云う〝蝿〟とはパパラッチ──リータ・スキータの事だ。……ボクもリータ・スキータとは関わり合いになりたくないので“透明マント”を被っていく事に。

何はともあれ、こうして第一の課題は終わった。

SIDE END
 
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