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普通だった少年の憑依&転移転生物語

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【ハリー・ポッター】編
  204 代表選出のその後


SIDE アニー・リリー・ポッター

11月1日。時間的な観点からしたら一日しか変わらないのに、昨日の10月31日の朝より、より一層寒くなったと思うのはきっとボクだけでは無いはず。

「……はぁ…」

ベッドの上で起き抜けに出てきたのは陰鬱な溜め息。

ホグワーツに()いて11月1日と云えば、ハロウィーン・パーティーも終わり日々の勉強に向けて気を改めて引き締めていかなければならない時期。

しかもボクたち四年生は来年度に〝O・W・L(ふくろう)〟を控えているのでその意気込みを更に強くしなげればならない。

……なのにそんな溜め息を吐いてしまっているのは、昨夜の〝三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)〟の代表選出の折りに起きたとあるアクシデントに起因している。

「……今日が日曜日なのが不幸中の幸いか…」

誰に聞かせるでもなくそんな風に呟いて、陰鬱な気分となっている原因に──〝アクシデント〟について思いを馳せた…。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「……我が校、【ホグワーツ魔法魔術学校】からはロナルド・ウィーズリー!」

ダンブルドア校長は高らかにロンの名前を読み上げる。〝水を打ったよう〟と云う修辞的表現が最もしっくりくる状況に陥ったが、それも数秒のこと。

「馬鹿なっ!!」

耳が痛くなるほどのその静寂(しじま)を打ち破ったのは、血相を変えて立ち上がった【ダームストラング専門学校】の校長、イゴール・カルカロフその人だった。

しかしロンは、あれやこれやと喚き立てるカルカロフに一瞥(いちべつ)すらせずに、堂々とした出で立ちで教職員の後ろの扉を潜っていく。

「おい、ジョージ見ろよ! うちの弟がかましやがった!」

「ああ! ロンならやってくれると思ってたさ!」

ロンが消えるとフレッドとジョージがまるで自分の事の(とき)を上げる。

……そしてその鬨が他のグリフィンドール生にも移ろうとした時、〝それ〟は起こった。

〝炎のゴブレット〟がいきなりその炎の色を赤色に変えたのだ。……〝まるでまた代表を選出するかの様に〟。

(炎だけに焼き直し──ってバカな事言ってる場合じゃなさそうだ…)

炎なのに、寒いギャグは放っておくとして。

ゴブレットの炎は先の3人の場合と同様にに赤色まま燃え盛り、(さながら)ら舌の様に収斂(しゅうれん)させて、やはり、辛うじて羊皮紙と判るものを吐き出す。

ダンブルドア校長先生はゴブレットから吐き出された羊皮紙を胡乱(うろん)な表情で見て、羊皮紙(そこ)に記されているらしい──ボクこと〝アニー・ポッター〟からしたら信じたくなかった名前を口にする。

「アニー・ポッター」

「……ああ、〝だから〟か…」

イヤな予感がした時にはもう手遅れで──何故ロンがエントリーしたかが判った気がした。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

初めて通る大広間からの通路は肖像画が目一杯に並べられている部屋に続いていて、ボクも名前を呼ばれた以上はそこの部屋に通されたのだ。

……もちろん選手達三人も居て、ロン、フラー、クラムは各々に寛いでいた。

代表選手がボクを含めて4人になって、〝〝三大〟魔法学校対抗試合(〝トライ〟ウィザード・トーナメント)〟と名目が立たなくなった上に、ホグワーツからだけ二人出場と云う状況にマダム・マクシームとカルカロフがゴネたが、スネイプ先生が話題を逸らしてくれたので一応の収まりを見せた。

しかしそれは〝一応〟であって、スネイプ先生の舌先はロンへと向かう。

「特殊な身の上だ、ポッターに関しては誰かの(たばか)りと考えて良いだろう。……しかし、吾輩としてはウィーズリーが〝ゴブレット〟に選ばれた事の方が問題だと苦言を呈しますがな」

「……どうやら俺は、自身が〝17歳以上である〟と〝間違えて〟いたらしいですね」

「よい、セブルス」

「しかしですな、校長」

「確かに儂はロンが〝ゴブレット〟に名前を入れるところを見ておった。……よもや前以て自分に〝錯乱呪文〟を掛けておく、なんて方法は思いもよらなかったがの」

いけしゃあしゃあと騙るロンの様子がスネイプ先生からしたら面白くなかったのだろうが、そこでダンブルドア校長先生がスネイプ先生をやんわりと(なだ)める。これで一件落着と思われたが、ダンブルドア校長先生はボクへと向き直り…

「しかし、アニーがエントリーするところは見ておらなんだ。……アニー、上級生に頼んで名前を入れてもらったりをしておらんのじゃよな?」

「まさか。栄誉や金貨なんか、ボクは必要としていませんから」

〝一応〟スネイプ先生のお陰でマダム・マクシームとカルカロフの怒りが多少なりとも収まった頃、ダンブルドア校長先生が──あくまでもただの確認だと判っているが、そう()いてきたので直ぐ様否定する。

確かにボクは、一年生の時に〝匂い〟を消せるマジックアイテムをロンから貰っていて、ロンの考察を実証したフレッドとジョージと同様に〝年齢線〟を越えられる公算は高いのかもしれないが、エントリーなんかしてないのだから当然だ。

……そして、ダンブルドア校長先生が興味深い事を言っていた事に気付く。……ロンの様子を見るに、どうやらロンも〝それ〟に気付いている様だがロンはそれを口にしなかった。

ダンブルドア校長先生はボクに〝上級生に入れてもらったのか〟と云う質問をしてきた。それは、裏を返せば〝年齢線〟さえ越えられれば誰でもゴブレットに選ばれる可能性が、どの生徒にもあった訳で…。

ロンが何も言わなかったのは、きっと要らぬ火事を起こすと面倒になると思ったからだろう。ロンが選ばれた際、があがあ、と喚きたてていたカルカロフの様子を見る限り。

それからは、ムーディ先生が闖入(ちんにゅう)してきて、ある種のネガティブキャンペーンにより、周囲の人間にカルカロフを疑わせようとしたりと色々あったがダンブルドア校長先生がその場を収束させる。

(やが)てアニー・ポッター──ボクは〝炎のゴブレット〟に選ばれた以上は参加するしかないと云う方向で話は進む。……どうやら魔法的な拘束力(ギアス)があるようだ。

「我々にはどのような経緯(いきさつ)でこんな事態になったのかは皆目見当もつかぬ──しかしじゃ、アニーの名前が〝ゴブレット〟から出た以上、結果を受け入れるしかないじゃろう」

(……もう、(はら)、括ろうかな。〝これ〟にロンが手を出さなかったのは意味がある事なんだろうし)

〝ロンも一緒に受けられるならまだマシだろうし〟──と、(いささ)か現実逃避気味に参加の意思を前向きかつ後ろ向きに固めていると、クラウチ氏から〝第一の課題〟の開催日と、その大まかな内容が通達される。

……頭が冷えた翌日あたりにでも現実を突きつけられそうだが、もう自棄(やけ)にならないとやっていられなかった。

「第一の課題は、君達の〝勇気〟を試すものだ。……しかしここではその内容を(つまび)らかにしない。何故なら未知なる存在に遭遇したときの勇気は、魔法使いや魔女にとって非常に重要だからだ」

道理だな、と納得。フラーとクラムも頷いているので思うところは無いようだ。〝知識〟を持っているロンについては言わずもがな。

「日にちは11月24日。その競技は全校生徒と審査員の前で行われる。……ちなみに、云うまでもなく君達は競技の課題をクリアするにあたって、先生方の援助を頼む事──受ける事も許されない。……どの様な形であれ、だ」

クラウチ氏は脅すように語る。……しかし、まだ通達し忘れている事があったらしく…。

「ああ、そうだ。必需品についての通達を忘れていたな。……持って来るのは杖だけで良い──裏を返せば最初の試練に持ち込めるのは君達の杖だけと云える」

(持ち込めるのは杖だけって訳だね…)

〝持ち込めるのは杖だけ〟と云うことは魔法使いとしての、裸一貫の強さを審議するのだろう。ボクを除く三人の代表も異論は無いらしい。

「さて、通達はこのあたりにしておこう──アルバス、通達し忘れていることは無いだろうな」

「語るべきところは語ったじゃろう。……まぁ、()いて言うならばロンとアニーからしたら、座して嬉しいと云うことでは無いじゃろうが──代表選手は期末試験が免除されることかの」

「そうか、それを忘れていたな。……試練は至極過酷で時間も掛かるもの故、君達の期末試験は免除される」

(試験が免除、ねぇ…)

確かにダンブルドア校長先生が言う通り、あまり嬉しいものでは無かった。ボクとロン、ハーマイオニーはトップ3をほぼ独占しているので、ここ三年の例年通りにいけば、今年の首席はほぼハーマイオニーで確定だ。

しかしハーマイオニーは自分の実力で首席を獲ろうとしているのを知っているので、ハーマイオニーはきっと喜ばないだろう。……(むし)ろ、幾らか成績を落としてトップ争いから(わざ)と離れようとする可能性もある。

それでもトップ3の内二つも席が空くのは確定しているので、つも4位や5位6位で争っているレイブンクロー生からしたら、両手を上げて喜ぶべき事かもしれない。

(……なんだかなぁ…)

番狂わせとなるであろう今年の試験順位争いについて考えていると、クラウチ氏は身を翻した。

「……通達しなければならない事を通達したところで、そろそろ私は魔法省に戻ろうと思う」

「おや、せめて一杯やっていっては?」

「そうしろよ、バーティ。今やホグワーツは魔法界の注目の的なんだ」

「今は非常に忙しいし、極めて難しい時でウェーザビーに任せて出て来ているのだが、どうもな…」

そう言い残してクラウチ氏は退室していく。……それが事の顛末(てんまつ)だった。

……ちなみにクラウチ氏が言った〝ウェーザビー〟とはパーシーの事で、クラウチ氏が〝ウェーザビー〟といったあたりから肩を震わせていたのはどうでも良い事だろう。

SIDE END 
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