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艦隊これくしょん~舞う旋風の如く~

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出会う風と乗り越える壁
  出会う風と乗り越える壁⑥

「なっ!?」

思わず腕で水しぶきを防いでしまった、そのせいで連装砲による砲撃も魚雷による追撃ができなくなってしまい、また水しぶきに紛れて舞風が連装砲を撃ったことに気づくのがほんの少し遅れてしまった

「ぐっ・・・・・・右肩に被弾!」

流石に不意を突かれた一発は初風でもかわすことはできず、初風の右肩にはべっとりと塗料が付着していた。しかし由良は終了を合図していない、まだ戦闘続行可能とみていいだろう
それにしても・・・・・・と、初風は攻めに転じた舞風をいなしつつ、先ほどの舞風の行動を思い返す。連装砲の銃撃であれほどまで水しぶきが上がるはずはない、となれば、舞風は一体何を撃ち抜いたのか・・・・・・答えはただ一つであろう

(まさか魚雷を撃ち抜くとは・・・・・・腐っても陽炎型ってところかしら)

接近中の魚雷を撃ち抜く精密さと大胆さは確かに評価できる点であろう。しかし、そんな舞風にも弱点はある。それは先ほど魚雷を発射した際に見せた硬直、そして攻撃を当てるチャンスで大破が狙えた魚雷ではなく連装砲での砲撃を選んだこと、つまりは魚雷に対して恐怖心のようなものを抱いているのではないかということだ。それを確かめるために、今は舞風の攻撃をいなして弾切れを待つ

「ん、あれれ?弾が出ない!」

舞風の声が聞こえる。それと同時に初風は反転、わざと立ち止まって連装砲を構えて見せる

「あら、もう攻撃しないの?」
「もー!ここまで来て弾切れなんてぇ!」
「舞風、攻撃手段ならまだ残ってるじゃない」

そう言って、連装砲の銃口を舞風の魚雷発射管へと向ける。それを見た舞風は魚雷発射管に触れる

「魚雷を・・・・・・」

そう呟く舞風の様子は明らかにおかしかった、魚雷発射管に触れている手には過剰に力が籠められ、苦しそうに短く荒い呼吸を繰り返している

「なん・・・・・・で・・・・・・っ!?」

自分でも原因が分かっていないのか、明らかに困惑した様子の舞風に、べったりと塗料が付着した。初風は連装砲を構えた腕をおろし

「・・・・・・もういいわ、あんた」

と、ため息交じりに呟いた。



「舞風被弾!損傷大破と判定!よって勝者初風!」

由良が高らかに宣言し、この演習は幕を閉じた。しかし、あまりにもお粗末な演習内容に、気が付けばギャラリーは提督と白雪のみになっていた。演習を終え、艤装を外してドッグを立ち去ろうとする舞風の腕を初風が掴む

「さっきのあれ、どういうことか説明してもらおうかしら?」
「あれって?」

とぼけているのか、はたまた素で分かっていないのか、素っ頓狂にそう答えた舞風の態度にため息をつきつつ、魚雷を撃たなかったことを指摘する。舞風はしばらく考えたようだが、笑顔で「分かんない」と言い放った

「分かんないって・・・・・・じゃあ何?あんた駆逐艦のくせに魚雷が使えないってこと?」

舞風がうなずくと、初風はゲラゲラと笑いだした

「・・・・・・何で笑ってるの?」

少しムッとした表情で舞風は問いかける。ひとしきり笑った初風は息を整え

「だってねぇ・・・・・・魚雷は駆逐艦の主戦力よ?それが使えないって、私は戦力外ですって宣言してるようなもんじゃない」
「そんなこと・・・・・・」
「・・・・・・まぁ駆逐艦の仕事は戦闘だけじゃないからねぇ、魚雷が撃てなくてもやってはいけるでしょうね。でも悪いことは言わない、あんた・・・・・・艦娘やめちゃいなさい」

艦娘をやめろ、その言葉を聞いた瞬間、舞風の表情が変わった。先ほどまでの飄々とした態度は完全に消え、ぎゅっと拳を握りしめ、震えるような声でぽつぽつと言葉を紡ぐ

「何で・・・・・・初風ちゃんにそんなこと言われなきゃいけないの?」
「誰も言わないからよ」

そんな舞風の態度をよそに、全く悪びれる様子もなく初風は続ける

「私も今までいろんな艦娘を見てきたけどね、あんたみたいな欠陥抱えたようなのは見たことないわ」
「そこまでにしとこうかー」

二人は声のした方向に振り返る。ドッグの入り口に声の主、提督がいた。どうやら二人の話をそこで聞いていたようだ

「あらあら、仮にも鎮守府のトップともあろうお方が盗み聞きなんて、いい趣味してるじゃない」
「そりゃどうも」

相変わらずの軽いノリで初風の皮肉を受け流すと、提督は二人の間に割って入る

「いやね、いつまで経っても演習終了の報告に来ないもんだからさ、なんかあったのかなーって思ってきちゃった」

そしたら・・・・・・と、提督は二人の頭の上に手を置き、笑顔で話を続ける

「二人で面白い話をしてたってわけだ。俺も思わず聞き入っちゃったよ?」

興を削がれた、そんな表情で初風は提督の手を払いのけると、そそくさと出口に向かおうとする

「ちょいまち」
「・・・・・・まだ何か?」
「あぁ、今日から二人は相部屋の予定だったけど・・・・・・この様子じゃ変えた方がよさそうかなーって思ってな」
「そ、好きにすれば?」

そう言い残すと、初風はとっととドックから出て行ってしまった。提督はため息をつくと、悲しそうな表情の舞風の頭をポンポンと軽くたたく

「とりあえず、執務室に行くか。部屋割りも新しく考えねーとだしな」

舞風は返答はせず、コクンと首を縦に振った


 
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