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夢幻水滸伝

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第十話 関ヶ原の夜戦その六

「そうだとしますと」
「これは」
「どっちかが前に出て来たぎゃ」
「どなたでもです」
 中里でも芥川でもとだ、雅は言った。
「これは危ういです」
「どっちも神星だぎゃ」
「あの方々が前面に出て来られますと」
「兵の千や二千はあっという間だぎゃ」
 瞬く間に倒されてしまうというのだ。
「そうなるだぎゃ」
「このままでは一方的にやられてしまいます」
 一気に攻めるどころか、というのだ。
「ですから」
「わしが行くぎゃ」
「いえ、ここは棟梁だけでは危ないです」
 雅は立とうとした坂口に強い声で言って止めた。
「相手は神星の方ですから」
「天星でも無理だぎゃ」
「万全を期しましょう」
 あえてだ、坂口が敗れる等そうしたことを言わずにこう言ったのだった。
「ここは」
「それでは雅ちゃんと正宗もというだがや」
「はい、そうです」
 その通りだとだ、雅は坂口に言った。
「三人で行きましょう」
「わかっただがや」
「最低でも二人です」
「二人で相手をするだがや」
「そうしましょう、ただここで」
「騎馬隊だがや」
「はい、こちらが攻められているとなるとです」
 山の本陣が岩も木も破られ今や一方的に攻められている状況ならばというのだ。
「騎馬隊も危ういです」
「そうだぎゃな」
「はい、滝沢君にも神星の方が対しているかも知れません」
「こっちにどっちかが行って、だぎゃな」
「もう片方の方が。それにもう一人おられます」
 関西の軍勢にはとだ、雅はさらに話した。
「神星でも最も位の高い三極星の方が」
「綾乃ちゃんだがや」
「はい、あの方がおられますので」
「本陣はあの娘がいるとなるとだがや」
「備えとして万全です」
 雅は苦い顔で坂口に答えた。
「これは」
「兵を攻めるつもりが、だがや」
「星と星の戦に持ち込まれそうですね」
「やられたぎゃ」
「申し訳ありません」
「謝る必要はないぎゃ」
 坂口は項垂れて言った雅を声で起こした。
「相手も馬鹿ではないということぎゃ」
「そう言って頂けますか」
「兵の数を重きに置き過ぎて考えた僕の責ぎゃ」
 棟梁である自分自身のというのだ。
「だからぎゃ、ここはぎゃ」
「これからどうするかですね」
「相手が星で攻めるならこっちも星だがや」
「では」
「本陣はわしと正宗で守るぎゃ」
 そのうえで星の者にあたるというのだ。 
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