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レーヴァティン

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第九話 別れその十四

「その相手の話を出来ればいいな」
「そうか、じゃああんたの話も期待させてもらうな」
「それじゃあな」
「生きていればまた会おう」
「またなおっさん」
 英雄に続いて久志もだった、門番の兵士に挨拶をした。英雄はこれで顔を道の方に向けたが久志は兵士と手を振り合った。そしてだった。
 二人は港街に向かうことになった、神殿があった街は馬で出発するとすぐに小さくなった。その小さくなった街を振り返って見てだった。
 久志は感慨を込めてだ、こんなことを言った。
「随分長居したな」
「実際にな」
「かれこれ一年はいたな」
 この世界でだ。
「長かったな」
「そうだったな」
「何かこの一年でこの世界が何とかなってた可能性もあるんだよな」
「そうかも知れなかったな」
「そうだよな、やっぱり」
 久志は今更ながらこうも思った。
「そう思うと危なかったな」
「そうだな、だがだ」
「だが?」
「全くの無知で出るよりはずっとよかった」
 一年近くかけてこの世界の知識を得ることに費やしたことはとだ、英雄は久志に冷静そのものの口調で述べた。
「無知はこの場合最大の危険となるからな」
「そういうことで読んだり聞いたりしてたしな」
「この世界のあらゆることをな」
「じゃあこの一年はか」
「無駄ではなかった」
 英雄は断言さえした。
「絶対にな」
「これからのことを考えるとか」
「むしろこの一年があったからこそだ」
「これからやっていけるか」
「確実かつ迅速にだ」
 無知の状態でいるよりはというのだ。
「その筈だ」
「そうか、それじゃあな」
「行くぞ」 
 英雄も街を見ている、街はもう彼等の世界で言うミニチュアの様にになっている。神殿を中心とした城塞都市のそれにだ。
「俺達の次の目指す場所にな」
「港町にだな」
「行ってだ」
 そしてというのだ。
「俺は東の島に行く」
「そうするんだな、いよいよ」
「これまで決めていた通りな」
「じゃあそこまで一緒に行くぜ」
「勝手にしろ、では行くぞ」
「それじゃあな」
 二人で話してだ、そのうえでだった。
 二人は顔を前に戻した、そうして馬を進ませた。腰にはそれぞれの剣があり驢馬のパンシャも共にいた。彼等は一つの目的を達し次の目的に向かっていた。


第九話   完


                         2017・3・8 
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