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レーヴァティン

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第九話 別れその八

「宗教家らしくな」
「宗教家は贅沢を求めるな、か」
「逆に贅沢を求める政治家の方がおかしい」
「そういうことだな」
「だからあれでいい」
「飲めたらいいか」
「それも好きなだけ飲めた」
 神殿ではだ、実際に英雄にしても久志にしても夜はかなり飲んでいた。読書と鍛錬だけでなくそちらにも励んでいたのだ。
「充分だな」
「量があればな」
「不平は言わないことだ」
「最初からだな」
「神殿、神に仕える場所だ」
「そうした場所だと酒もな」
 質素を旨としている場所だからだ。
「どうしてもだよな」
「味は質素だ」
「だから量さえあればな」
「もうそれで満足すべきだ」
「最初から味は求めるな」
「贅沢はな」
 そうしたものだというのだ。
「もっともあれでもキリスト教の修道院よりは美味いだろう」
「あっちは殆ど味付けしていないっていうな」
「料理にな」
「それと比べるとか」
「そうだ、もうだ」
 それこそというのだ。
「あの神殿はましな方だ」
「食いものも酒も」
「あそこまで極端ではないからな」
「仏教の禅宗も、いや」
「禅宗は布施で貰ったものは食べるな」
「何でも残さずっていうな」
「だからまだ修道院よりはいい筈だ」
 禅宗の寺院はというのだ。
「まだな」
「そうなんだな」
「修行は厳しいがな」
「それでもだな」
「あそこまで極端に厳格でもない、むしろキリスト教の禁欲主義はだ」
 それはとだ、英雄はキリスト教にあるそうした思想についてこう言うのだった。
「極端過ぎる、ユダヤ教の流れでだ」
「ユダヤ教のあれは厳しい環境だったからか」
「乾燥地帯で周りは敵ばかりだった」
「余裕がなかったからだよな」
「大食も戒めていた」
 そして勿論贅沢もだ。
「あらゆることに関してな」
「余裕がない中で生きないといけなかったからか」
「強力な一神教になりだ」
 頼るものは一つでありそれは強力な存在でなければならない、こうした考え故に神を一柱に絞ったという。
「そして禁欲主義になった」
「十戒とかもあったな」
「神罰も厳しくなった」
「ちょっとしたことで無茶苦茶するなって思ったんだがな」
 久志が旧約聖書の物語を読んだ時に抱いた感想だ、映画史上に残る傑作である十戒にもその神罰の描写がある。
「あれも理由があったんだな」
「とにかく余裕がなかった」
「それでちょっと勝手なことをしたらか」
「一人でもな」
「民族全体が滅びる、か」
「そうした状況だった」
 当時のヘブライの民達はというのだ。 
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