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艦隊これくしょん~男艦娘 木曾~

作者:V・B
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第十七話

 
前書き
どうも、もうすぐ大型の旅行を控えて、その準備がかなり忙しいです。ただし、艦これとバレーとモンストだけは欠かさない。 

 
「いやー、今日も一日疲れたなー。お前も初めての出撃だったし、緊張したろ?」
 
木曾は、俺に向かって話掛けてきた。背中合わせの状態なので、お互いに顔は見えない。
 
「…………おう。」
 
「それでも初陣で撃沈数六ってのはすげぇよ。なかなかできることじゃあない。」
 
「……そりゃどうも。」
 
すると、木曾は不思議そうな顔をして(見えてないけど)言った。
 
「どうした?なんか悩み事でもあるのか?」
 
「おう。現在進行形であるさ。」
 
俺はさっきからその事しか考えてない。なんでこんな状況になってしまったのか。理由も分からない。
 
…………いや、理由といえばこの木曾に恥じらいの気持ちのかけらも無い事だということは分かりきっている。分かりきっているのだが、今この状況を他の人が見たら、間違いなく俺のせいにされる。
 
「なんだ?言ってみろよ。」
 
そして、当の本人はこれだ。本当に頭が痛くなる。
 
「いや、なんでさ…………。」
 
俺はさっきから自分に問い掛けている事を木曾に喋った。
 

 
「なんで俺は木曾とドックに入渠してんだろうか…………。」
 
 
 
―五時間前―
 
「第二艦隊、帰投した!」
 
木曾は工廠の前で提督に向かって敬礼した。俺達もそれに従って敬礼する。ただ、夕立と神通さんはケガの具合がなかなかでそれどころでは無いらしい。
 
「お疲れ様だ。とりあえず、神通と夕立はすぐに入渠してくれ。他の者は艤装を補給したりしてくれ。一応言っとくが、被弾していなくても必ず二十分は入渠すること。」
 
そう言って提督は間宮さんと一緒に夕立と神通さんを鎮守府の方向に歩いて行った。
 
「それじゃ、他の人はこっちに来てー。弾薬と燃料を補給するよー。」
 
残ったら俺達に、明石さんが話し掛けた。
 
「おう。しっかし、今回も夕立と神通はボロボロだな。あの艤装直すのにどれくらい掛かりそうだ?」
 
木曾は明石さんにそう尋ねた。明石さんは腕組みをして、少し考えてから、
 
「うーん、あのくらいだと、だいたい丸一日位かなぁ。ま、今回あなた達が夜戦に突入するって聞いたときから準備してたけどさ。」
 
お陰で私と間宮と提督と大淀は徹夜だよ、と欠伸をしながら言った。どうやらかなり眠いらしい。
 
「本当は僕がちゃんと抑えるようにしなきゃいけないけど……あの二人って毎回夜戦になったら無茶苦茶するし……。まぁ、敵艦隊を完全に潰すからいいんだけどさ。」
 
時雨は申し訳なさそうにそう言った。でもまぁ、あんな状況の二人を止めれるかと言ったら、多分木曾でも無傷では行かないだろう。
 
摩耶さん曰く、『何度かあいつらに誤射されそうになった。』とのことだ。
 
「それでも、誰も沈まなくて良かったってことで。」
 
俺はそうまとめた。
 
「それもそうだな。それじゃ明石さん、頼むな。」
 
「はいはーい。」
 
そう言うと明石さんは、持っていた工具箱を開いて、俺が始めてここに来たときと同じようにみんなの艤装を外し始めた。
 
…………いっつも思うのだが、これって一体どんな構造で体に装着しているのだろうか。前に明石さんに聞いてみたことがあるのだが、『教えてもいいけど、正直知らなくていいことって世の中に沢山あるよ?』と言うので、止めておいた。
 
明石さんは慣れた手つきで俺達の艤装をすぐに外した。
 
「ほいっ。これで終わりだよ。あなた達は食堂にでも行って休憩してきなさいな。」
 
そう言うと、明石さんは俺達の艤装を台車に乗せて工廠の中に入っていった。
 
俺達はそれぞれ明石さんにお礼を言って、鎮守府の方に歩き始めた。
 
「いやー、腹へった!今何時だ?」
 
摩耶さんが大きく伸びをしながら時雨に聞いた。
 
「えっと、今は一八〇〇だね。多分他の艦娘も居るね。」
 
「んじゃまぁ、あいつらと一緒に食うか。」
 
―食堂―
 
「あ、おかえりなさい!」
 
入ってきたとき、俺達に話掛けてきたのは、青葉だった。
 
「おう、ただいま。」
 
「それではー、二号さん!少しお時間よろしいでしょうか?」
 
すると、青葉は俺に向かって、メモ帳とペンを取り出して、俺に話掛けてきた。
 
「あ?いや、まぁ別にいいけどさ。」
 
「ありがとうございます!それでは、あっちの方の席で待っているので!」
 
そう言うと、青葉はさっきまで座っていたであろう席に戻っていった。
 
「はー、今回の一面はお前かー。」
 
摩耶さんが感心したようにそう呟いた。
 
「そりゃそうだよ。今回が初陣な訳だし。」
 
そう言ったのは時雨だ。手にはいつの間にか親子丼が乗ったお盆があった。
 
「ま、さっさと飯貰って行ってこいよ。なかなか長くなるからな。」
 
木曾もそういいながらお盆を受け取っていた。因みに、木曾にお盆を手渡していたのは羽黒さんだった。間宮さんが忙しい時は手伝いに来ているらしい。
 
「おう。そんじゃ羽黒さん、俺はカツ丼で。」
 
「分かりましたー。」
 
「……いや、カツ丼て。取り調べでも受けんのかよ。」
 
摩耶さんは俺の注文を聞いてそう言った。
 
「いやいや、受けるのは取材だから。まぁ、ある意味取り調べみたいなモンだけどな。」
 
青葉は、週二回のペースで、『広報 呉鎮守府』と言う新聞的なやつを発行している。出撃の様子や工廠の状態、艦娘のスキャンダル(これが七割)を掲載している。
 
俺もここに着任したばっかりの頃に一回取材を受けた事があったが……まぁ、思い出さないでおこう。因みに結果として俺は他の艦娘と普通に話せるようになった………主に同情を受けて。
 
「二号くん、はいこれ。」
 
そんな話をしていると、羽黒さんが俺にカツ丼の乗ったお盆を手渡してきた。うむ、旨そうだ。
 
「あざーす。んじゃま、行ってくるわ。」
 
「おう、逝ってらっしゃい。」
 
……文字に起こさないと分からないようなボケをしてきやがった……。
 
俺は突っ込むのもめんどくさくなって、お盆を持って青葉の元へ向かった。
 
 
―二時間後 自室―
 
「ふぃー、疲れたー……。」
 
俺はベッドに腰掛けて、そう呟いた。
 
あのあと、青葉の取材は一時間半にまで及んだ。よくもまぁあれだけ聞くことがあるんだと逆に感心してしまった。
 
「……そうだ。入渠しなきゃいけないんだっけ。」
 
俺は帰ってきた時の提督の言葉を思い出した。
 
入渠というのは、深海棲艦との戦いでできたケガを直すために、それ専用の風呂(ドックと言う)に入ることだ。
 
俺達は普通の生活でできたケガは長くても一晩程度で完治するのだが、何故だか分からないが、深海棲艦によってできたケガはそう簡単には治らない。
 
まぁ、何故風呂に入ったらケガが治るのかも理由は分からないが。
 
「でも、まだ夕立達が入ってるだろうし………。」
 
元々女の子しか使わないであろう物なので、艦娘専用に一ヵ所にしか作られていない。因みに普段はドックを艦娘達が使って、俺は提督の部屋の風呂を使っている。
 
ただ、提督の風呂にはそんなケガが治る様な効果は無い。つまり、ドックに入るしかない。
 
……今何時だ。
 
俺は時計を見た。現在、二〇〇五。
 
他の人も入ることを考えると……二四〇〇位に入るか。そんくらいなら誰も使ってないだろう。
 
「んー、それまで暇だな……少し寝るかな。」
 
俺は枕元にある目覚まし時計を手に取った。タイマーを二四〇〇に合わせて、ベッドに寝転がる。
 
「おっと、電気消さなきゃ。」
 
俺は電気を消し忘れていた事に気付いて、起き上がる。部屋の入口まで移動して、スイッチを押す。真っ暗になる部屋。
 
さて、今度こそ寝よう。
 
俺は再びベッドに寝転がって、目を閉じた。
 

 

 
『何も できなかった……。』
 
 
 
 
 
 
「!?」
 
俺は思わず飛び起きた。
 
「……なんだ………今の………。」
 
俺はさっきまで見ていたであろう夢の内容を思い出そうとするが、殆ど覚えていなかった。
 
ただ一言。
 
『何も できなかった。』
 
その一言が頭から離れなかった。
 
一体この夢がなんだったのか、最早推測することもできないが、まぁ、あまり良くない夢だということは分かった。
 
ここで俺は、目覚まし時計鳴っている事に気づいた。
 
「あー、もうそんな時間か……。」
 
俺は重い体を起こして、立ち上がった。
 
俺は寝間着に使っているジャージを持って、部屋を出た。
 

―入渠ドック―
 

「ふぃー。いい湯だわー。」
 
俺はドックの中に入って、湯船に浸かっていた。俺はこのドックに入るのは初めてだが、確かに疲れが取れる感じがする。
 
「…………。」
 
俺は自分の身体を改めてまじまじと見た。同年代の男子の中でも、少し細めの身体。体つきは完全に男だ。
 
…………でも、ここに来て一週間だけど、未だに俺が艦娘になった理由が分からない。
 
そもそも女の子しか艦娘になれないってこと自体、理由が分かってないのだ。俺が艦娘になった事が分かる筈もない。
 
かと言って、俺の身体が女子のそれになっているかと言えばそうではない。完全に男だ。
 
……まぁ、そこはもういくら考えても仕方ない。今はゆっくり確かに湯船に浸かっていよう。
 

ガラガラガラ
 
 
え、まって。
 
今、ドックの扉の開く音がした。
 
俺は思わずそちらの方向を見てしまった。俺がもう少し冷静だったら、そのまま壁の方向を見ていただろう。
 
 
 
「ん?誰か入ってるのか?」
 
 

そこには、一糸纏わぬ姿で立っている、木曾の姿があった。 
 

 
後書き
読んでくれてありがとうございます。恐らく今後殆どないであろうイベントですね。二号よ、強く生きろ。
それでは、また次回。 
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