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レーヴァティン

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第九話 別れその五

「そんな奴もいるか」
「ああ、二度と会いたくないな」
「俺は一度も会いたくない」
 面識はないがというのだ。
「そしてそうした奴でもだ」
「ひょっとしたらか」
「俺達が探す人間の中にいるかも知れない」
 それぞれの島にいる十二人にというのだ。
「そうかも知れない」
「とんでもない人格の奴がか」
「世界を救える力はどんな人間でも備わるならな」
 外の世界、彼等がいる世界の者の中でだ。
「そうしたことも有り得る」
「屑と呼ぶにもおこがましい屑でもか」
「その可能性はゼロじゃない」
「じゃあその時は覚悟するか」
「俺達もな」
「嫌な話だな、しかしな」
「有り得ることはわかるな」
 久志に顔を向けてだ、英雄は彼に問うた。
「そうだな」
「嫌な話だけれどな」
「有り得る話だ、そしてだ」
「そのうえでだな」
「お互いに十二人を集めつつだ」
「島を統一してな」
「世界を救うぞ」
「そうするか」
 久志は英雄に確かな声で応えた、そしてだった。
 二人はそのまま市場を巡った、英雄が十二人を探す久志に付き合う形でそうした。だがそうして巡ってもだった。
 これといった者に出会えずだ、久志は英雄に言った。
「その十二人の噂も聞かなかったな」
「この街ではな」
「ああ、この街にいるとはな」
「しかし聞けることはな」
「聞いたな、傭兵やら魔術師やら世捨て人やら商人でな」
「結構いるな」
「噂になっている奴はな」
 外の世界から来た者がだ。
「いるな」
「そうだな」
「じゃあそうした相手のところ行くか」
「そうするか」
「この島の統一についても考えながらな」
「適当な国に入って武勲を挙げてのし上がるか乗っ取るかすればどうだ」
「それ前も話したな」
 久志は英雄のその言葉に聞き返した、今は市場の中にある居酒屋で飲みながら話をしている。木の大きなジョッキの中の赤ワインを飲みつつパンや肉、チーズにオレンジといった夕食も食べている。そうしながらのやり取りだ。
「乗っ取りか」
「悪質な領主ならな」
「乗っ取ってもだ」
「特に後腐れもないか」
「乗っ取りと考えると悪いがだ」
「相手次第か」
「御前が会ったそいつや俺が知っている剣道部の屑共が領主ならどうだ」
 英雄は具体的な例を出して久志に問うた。 
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