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レーヴァティン

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第九話 別れその二

「俺達が今出て来た世界はな」
「そうだよな、こっちの世界で十ヶ月はいたな」
「そうだったな」
「随分長くかかったな」
 その間実は二人共一度も元の世界に戻っていない、一度も目覚めることがないままこちらの世界の十ヶ月を過ごしたのだ。
「こっちの世界の学問に」
「そうだな、しかしだ」
「十ヶ月かけただけにだな」
「収穫はあった」
「最大の財産か」
 神官達の言葉をだ、久志はここで出した。十ヶ月ぶりに出た街は相変わらず賑わっていて人もものも多かった。
 その街の中を見回してからだ、久志はこう言った。
「誰かいたらいいけれどな」
「十二人のうちのだな」
「この島のな、いたらいいな」
 希望的な言葉をだ、久志は出した。そうしつつ周りを見回し続けている。
「ここで早速な」
「出会えたらか」
「出会ったらすぐにな」
「声をかけるか」
「ああ、向こうも俺達のこと知ってるかどうかだけれどな」
「少なくとも噂は聞くだろう」
 英雄もまた街の中を見回している、そうしつつ久志に述べた。
「他の世界から来た奴のことはな」
「噂になってるか」
「異邦人は噂になる、俺達もそうだろう」
「俺達自身もか」
「他の世界から来た異邦人としてな」
「異邦人は話題になるんだな」
「人は自分と違うものを見る」
 異質なものとしてである。
「無意識のうちにな」
「もう自然にかよ」
「そうだ、だからだ」
「俺達他の世界から来た連中は自然に見られてか」
「自然と話題になる」
「そういうものなんだな」
 久志も話を聞いて頷いた。
「それで他の連中もか」
「ごく自然にだ」
「噂になってか」
「その噂の真実を確かめた上で辿っていけばか」
「辿り着ける」
 そうなるというのだ。
「それぞれの会いたい相手にな」
「そうなるか、じゃあな」
「それは向こうもな」
「その十二人それぞれもか」
「噂は一人の耳には入らない」
「全員の耳にだな」
「聞こえる者全員にな、特にだ」
 英雄は久志にだ、周りを見回しつつ話した。
「興味がある者、とりわけ当事者達にはな」
「俺達、相手も含めてか」
「聞こえている、そして覚えている」
「だからか」
「向こうから来る可能性も高い」
「じゃあ俺達が出向くことはなくてもか」
「相手から来ることもある、だからだ」
 それでというのだ。 
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