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英雄伝説~灰の軌跡~

作者:sorano
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外伝~メンフィル・エレボニア戦争の和解調印式~ 第8話

~空中庭園~



「へ………」

「ふえっ!?」

「あ、貴女は……!」

「フィーナさん!?”影の国”からアドルさん達と一緒に自分の時代へと帰還した貴女が何故この場に……」

レグナートの背後から現れた女性に見覚えがあるシェラザードは呆けた声を出し、アネラスとユリア准佐は驚きの声を上げ、クローディア姫は信じられない表情で女性に問いかけた。

「フフ……シェラザード・ハーヴェイさん、アネラス・エルフィードさん、ユリア・シュバルツ大尉―――あ、今は”准佐”に昇格していたのでしたね。そしてクローディア・フォン・アウスレーゼ姫。”影の国”ではお母様――――フィーナ・クリスティンやお父様達がお世話になりました。」

驚いている様子のクローディア姫達に女性は微笑みながら答えた。

「フィーナさんが”お母様”って…………ええっ!?」

「う、嘘でしょう!?フィーナさん達の娘って事は貴女は……!」

「ま、まさかとは思いますが貴女―――いえ、御身は……!」

「御身が”空の女神”――――エイドス様なのですか……!?」

女性の話を聞いたアネラスは呆けた表情をしたが女性の正体を察するとすぐに驚きの声を上げ、シェラザードとクローディア姫、ユリア准佐は信じられない表情で女性を見つめていた。



「はい。―――初めまして。私の名はエイドス・クリスティン・ブライト。”冒険家”アドル・クリスティンと”自由の女神”フィーナの娘にして、ゼムリアの人々から”空の女神”と称えられている者です。」

そして女性―――”空の女神”エイドスは自己紹介をした。

「な―――――」

「ええっ!?」

「”空の女神”ですと!?」

「「………………」」

「………レグナート、本当に彼女が”空の女神”なのか?」

エイドスの自己紹介を聞いたカラント大司教は絶句し、アルフィン皇女とダヴィル大使は驚きの声を上げ、アリシア女王とエルナンは呆けた表情をし、カシウスは信じられない表情でレグナートに視線を向けて問いかけた。



(うむ。彼女が我等”眷属”の主にして、かつて混迷に満ちたゼムリア大陸を平和に導いた事から”空の女神”とお主の家名でもある”(ブライト)”の名で称されるようになったゼムリアの”光”にして”英雄”の一人である人と神の間から生まれた”半神半人”――――”空の女神エイドス”だ。)



「!?先程のレグナート殿の話……御身が人と神の間から生まれた御方という話は本当なのですか!?」

カシウスの問いかけに答えたレグナートの説明を聞いて血相を変えたカラント大司教は信じられない表情でエイドスに問いかけた。

「ええ。私の詳しい生まれについては後で私を崇めてくれている貴方達七耀教会に所属し、お母様達同様”影の国”事件に巻き込まれたケビン・グラハムとリース・アルジェントという方達もご存知ですから、その方達に聞いてください。」

「ケビン神父とシスターリースが…………―――!そ、それよりも御身は先程カシウス准将と同じ家名である”ブライト”を名乗りましたが、御身とカシウス准将は何か関係があるのでしょうか……!?」

自身の問いかけに肯定したエイドスの説明を聞いたカラント大司教は呆けた表情をしていたがある事に気づき、驚きの表情でエイドスに問いかけた。

「それを答える前にカシウス・ブライト准将に確認したい事があるのですが、よろしいですか?」

「……私で答えられる事でよろしければ何でもお答えさせて頂きます。」

突然エイドスに話をふられたカシウスは真剣な表情でエイドスを見つめて答えた。

「貴方やエステルさんの家名である”ブライト”性は貴方か、貴方の妻、どちらなのですか?」

「”ブライト”の家名は私ですが……それが何か?」

「――――――”影の国”で私やお母様達の経歴をある程度知る事ができたエステルさん達の話によるとエステルさんが私の子孫との事ですから、そちらのエステルさんの父親であり、先祖代々”ブライト”の名を受け継いで来たカシウス准将も私の子孫という事になりますね。」

「な―――――」

「何ですと!?」

「カ、カシウス准将閣下が”空の女神”の子孫だなんて……!」

「…………………」

エイドスの説明を聞いたアリシア女王は絶句し、ダヴィル大使とアルフィン皇女は驚きの声をあげえ、カラント大司教は驚きのあまり口をパクパクさせていた。

「…………やれやれ、まさかそんなとんでもない事実をエステル達が黙っていたとはな………レグナート、何故かつて邂逅した時に俺が彼女―――”空の女神”の子孫である事を教えてくれなかったんだ?まさか”盟約”とやらで”空の女神”の子孫について話す事も禁じられていたのか?」

一方少しの間石化したかのように固まっていたカシウスは我に返ると疲れた表情で溜息を吐いた後レグナートに問いかけた。



(フフッ、女神の子孫達は女神がその身に秘める”神”としての力を受け継ぐ事ができず、”普通の人として”生き、子を為し続けた為お前達から感じる女神の気配はあまりにも微かで我にもわからなかったのだ。女神にお前とお前の娘が女神の子孫である事を説明され、今こうしてお前に全神経を集中してお前から感じる微かな女神の気配を感じた事でようやくお前が女神の子孫である事を理解したのだ。)



「まさか”空の女神”に子孫が存在して、その子孫がカシウスさんとエステルさん―――”ブライト家”だったなんて………それよりもエイドス様の口ぶりからすると、エステルさん達と面識があるように聞こえるのですが……」

レグナートの話を聞いたエルナンが信じられない表情で呟いた後ある事に気づいてエイドスに問いかけた。

「―――その件について一旦置いておかせて頂きます。本日私がこの場に現れたのはメンフィル帝国がエレボニア帝国に要求する”和解条約”の第六条についての説明をする為なのですから。」

「では御身がシルヴァン陛下達に第六条を付け加える要請を…………ならば、どうか何故御身が”ハーメルの惨劇”を世間に白日の下に晒す事を決め、そしてその方法をメンフィル帝国に委ねたのかどうか我々にお教え下さい。」

エイドスの説明を聞いたアリシア女王は驚きの表情でエイドスを見つめた後真剣な表情になってエイドスに問いかけた。



「――――いいでしょう。私が”ハーメルの惨劇”を世間に白日の下に晒す事を決めた理由………――――それはエレボニア帝国が犯した”大罪”――――”ハーメルの惨劇”が”空の女神”としても許し難き所業だからです。」

「うっ…………」

「…………………」

先程の親し気な雰囲気が嘘だったかのように怒りの表情を見せていないながらも強烈な怒りの雰囲気を纏って目を細めて自分達を見つめて答えたエイドスの話を聞いたダヴィル大使は唸り声を上げた後表情を青褪めさせて身体を震わせ、アルフィン皇女は辛そうな表情で顔を俯かせていた。するとその時エイドスの怒りを現すかのように快晴だった天候は突然雷雲が覆った事により太陽が雷雲に隠されて暗くなり、雷雲からは雷が迸って、今にも雷が落ちそうになり、更にグランセル城が軽く揺れ始めた。

「ええっ!?さ、さっきまで快晴だったのに、突然雷雲が……!」

「しかも地震まで同時に起こるとは……状況から考えてこれらの現象を起こしているのは間違いなく………」

「”空の女神”の”怒り”によって起こった現象か………」

突然の天候の変化にアネラスは驚き、エルナンとカシウスは重々しい様子を纏ってエイドスを見つめた。



(女神はゼムリア大陸自身に祝福されている事から”ゼムリアの申し子”とも呼ばれている。よって、女神は常にゼムリア大陸の力の源である”七耀脈”自身から力を与えられ続けている為、女神が本気に怒りを感じれば、”七耀脈”も影響され、今のような現象が起こる。)



「”七耀脈”自身がエイドス様に力を………」

「つまりエイドス様の力の源は”ゼムリア大陸自身”なのか……!」

「”ゼムリア大陸自身から常に力を与えられている”って、冗談抜きでセリカさんやサティアさんと同等の非常識過ぎる存在ね………」

「エイドス様、どうかお怒りをお鎮め下さい……!」

レグナートの説明を聞いたクローディア姫は呆け、ユリア准佐は驚き、シェラザードは疲れた表情で溜息を吐き、カラント大司教はエイドスに諫める言葉をかけた。

「”人”は必ず”間違い”を犯し、それを”糧”として成長します。人が犯す”間違い”の中には多くの罪なき人々が傷つき、犠牲となる戦争等もありますが……悲しい事ですがそれもまた人々の成長に必要な”糧”。ですが貴方達エレボニア帝国が犯した”間違い”にして”大罪”である”ハーメルの惨劇”は決して許されるものではなく、”人の成長”に必要な”糧”ではありません。ましてやその”大罪”を犯した事を償う所か後悔すらもせずに12年も隠蔽し続けてきた所業は”空の女神”としても絶対に許せません。よって、今回の戦争の和解調印式をちょうど良い機会と思い、和解条約に第六条―――エレボニア帝国が闇に葬り、虐殺した自国の民達の無念を切り捨てた”ハーメルの惨劇”を白日の下に晒す事を加える事をメンフィル帝国に要請しました。」

「…………………」

「誠に申し訳ございません……!女神様の仰る通り、我が国が犯した”大罪”―――”ハーメルの惨劇”は決して許されるものではございません……!どうか我が国に償いの機会をお与え下さい……!」

エイドスの説明を聞いたアリシア女王が複雑そうな表情で黙り込んでいる中アルフィン皇女は頭を深く下げて謝罪をした。

「そうですか。ならば今回のメンフィル帝国とエレボニア帝国の戦争を終結させる和解条約の”第六条”を反論や緩和条件の嘆願等一切せずに実行し、更に私が今から口にする条件を守ってください。それを”空の女神”である私がエレボニア帝国に与える”ハーメルの惨劇”に対する”償い”とします。」

アルフィン皇女の嘆願を聞いたエイドスが怒気を治めると雷雲は去って天候は再び快晴になり、地震も治まった。

「御身の御慈悲、エレボニア帝国を代表して心からお礼申しあげます。どうか我々エレボニア帝国の”ハーメルの惨劇”に対する償いの方法をお示し下さい。」

一方エイドスの答えを聞いたアルフィン皇女はエイドスに会釈をして決意の表情でエイドスを見つめた。



「一つ目は”ハーメルの惨劇”によって亡くなった”ハーメル”の民達全員分のお墓をハーメル村跡に建て、エレボニア皇家と政府の方々は今後永遠に毎年彼らのお墓参りをしてあげて下さい。特にエレボニアの”皇”はその日は必ず出席するようにしてください。それとお墓は慰霊碑等ではなく、個人のお墓にしてあげて下さい。」

「エイドス様………」

「……わかりましたわ。内戦が終結した際には父―――現エレボニア皇帝であるユーゲント三世に”ハーメルの惨劇”が起こったその日は毎年国を挙げて、”ハーメル”の民達に対する追悼をするように進言し、実行するように必ず説得致します。」

エイドスの言葉にクローディア姫が驚いている中、アルフィン皇女は重々しい様子を纏って会釈をした。

「二つ目は現エレボニア皇帝――――ユーゲント・ライゼ・アルノールは死後、ハーメル村跡に建てられたハーメルの民達の墓地の中に彼の墓を建て、その墓に彼の遺体を葬ってください。」

「え…………」

「なっ!?何故ユーゲント皇帝陛下は死後、そのような場所に葬らなければならないのですか!?アルノール皇家の方々は死後、アルノール皇家専用の墓碑に葬られる事になっているのに何故………」

エイドスが口にした二つ目の条件を聞いたアルフィン皇女が呆けている中ダヴィル大使は信じられない表情で反論した。

「ハーメル村跡が”そのような場所”、ですか。エレボニア帝国は”ハーメルの惨劇”を犯した事を後悔しているとはとても思えない発言ですね。」

「!も、申し訳ございません!先程の私の主張は私の妄言でしたから、どうか先程の私の主張は無視してください!」

しかし厳しい表情を浮かべたエイドスに睨まれたダヴィル大使は表情を青褪めさせて謝罪した。



「――――”空の女神”。失礼を承知で訊ねさせてもらうが何故ユーゲント皇帝は死後ハーメル村跡に葬られなければならないのかの理由を我々に説明して貰っても構わないだろうか?」

「ええ、構いませんよ。―――――”ハーメルの惨劇”は当時のエレボニア皇帝――――ユーゲント・ライゼ・アルノールにも当然責任があります。彼が亡くなったハーメルの民達に対して唯一できる贖罪はそれしかないと思い、二つ目の条件の内容にしました。」

「それは…………」

「……確かに死者に対してする贖罪はある意味その方法が一番いいかもしれませんね。」

「………………エイドス様。他にも条件があるのでしょうか?」

シルヴァンの問いかけに対するエイドスの答えを聞いたクローディア姫が複雑そうな表情をしている中エルナンは重々しい様子を纏って呟き、目を伏せて黙り込んでいたアリシア女王は目を見開いてエイドスに問いかけた。

「ええ。三つ目はリベール王国に自作自演で”ハーメルの悲劇”を引き起こして”百日戦役”を起こした賠償として、謝罪金並びに賠償金、そして領地の一部を贈与してください。」

「な―――――」

「なっ!?エイドス様、謝罪金や賠償金はわかりますが、何故エレボニアは領地の一部まで我が国に贈与しなければならないのでしょうか………!?」

エイドスの口から出た予想外の条件にアリシア女王が絶句している中、ダヴィル大使は驚いた後エイドスに理由を訊ねた。



「―――領地欲しさに自作自演で自国の領民を虐殺し、挙句の果てには戦争を起こしてリベールに住まう多くの民達の命を奪ったのですから、その”対価”として自らの領地を差し出すべきだと私は思っています。つまりは”因果応報”という事です。」

「そ、それは………」

「……………」

エイドスの正論に反論できないダヴィル大使が答えを濁している中アルフィン皇女は辛そうな表情で黙り込んでいた。

「……エイドス様、失礼を承知で意見させて頂きますがエレボニア帝国は今回のメンフィル帝国との戦争の和解の為に半分以上の領地が削り取られる事が決定しています。なのに、まだ領地を減らすような条件をつけるのはあまりにも酷な事だと思われるのですが………」

「それとこれとは別問題です。――――本来なら”百日戦役”終結後にリベールに謝罪し、賠償すべきでしたのに、そんな当然の事すらも怠ったエレボニアの”自業自得”です。」

「そ、それは………」

カラント大司教の意見に対して答えたエイドスの説明を聞いたダヴィル大使は表情を青褪めさせて答えを濁し

「………女神様。我が国はリベールにどれほどの領地を贈与する必要があるのでしょうか?」

「それは貴方方で考えてください。―――最も、差し出した領地が例えば辺境ばかりだったのならば、ただでさえ”ハーメルの悲劇”によって落ちた各国のエレボニアに対する評価が更に落ちる事も考えられますが。」

「確かにエイドス様の仰る通り、リベールに対する賠償が大した事が無ければ、下手をすれば”百日戦役”を起こした事をエレボニアは反省していないように見られる事に発展する事に加えて最悪の場合、再び”ハーメルの惨劇”のような事を引き起こして、失った多くの領地の分を取り戻す為に今度は自分達の国に戦争を仕掛けられるのではないかと警戒される事もあるでしょうね。」

アルフィン皇女の問いかけに答えたエイドスの説明をセシリアが補足し

「……女神様のご忠告、承りました。それで後どれほどの条件があるのでしょうか……?」

アルフィン皇女はエイドスに会釈をした後訊ねた。



「条件は後二つです。――――4つ目の条件は”ハーメルの惨劇”自作自演で行ったエレボニア帝国を私が庇わない事を受け入れる事です。なお、”ハーメルの惨劇”公表後リベール王国の民達に私自身がリベール王家や政府を庇う声明は出しますのでリベールの方々はご安心下さい。」

「なっ!?」

「エ、エイドス様御自らがリベール王家や政府を庇う声明を……!?」

「ええっ!?な、何故エイドス様御自ら私達の為にそこまでして頂けるのでしょうか……!?」

エイドスは条件の一つを答えた後アリシア女王達に微笑み、エイドスの答えを聞いたユリア准佐とカラント大司教は驚き、クローディア姫は驚きの声を上げた後信じられない表情でエイドスに問いかけた。

「私が”ハーメルの惨劇”を公表させることをメンフィルの前皇帝であるリウイ・マーシルン前皇帝に要請した時、リウイ前皇帝より”ハーメルの惨劇”を世間に公表した際戦争を仕掛けられ、多くの被害を受けた”被害者”であるリベール王国まで混乱に陥るという指摘があり、その事に対する対処法として可能ならばリベール王国の混乱を最小限に抑える為にリベールを含めたゼムリアの多くの人々が信仰している私自身―――”空の女神”がリベールの民達にリベール王家や政府を庇う声明を出すべきという提案があったので、その提案を受け入れました。リベール王国は完全に”被害者”ですから、私の要請によってリベール王国まで”ハーメルの惨劇”公表後の混乱に巻き込まれるのですから、その事に対する責任は取らせて頂きます。」

「確かにゼムリア大陸の多くの人々が信仰している”空の女神”御自身がリベール王家や政府を庇う声明を出せば、リベール王国の混乱は最小限に抑えられるでしょうね。」

「それは我が国にとって光栄で、ありがたい事なのですが………」

「…………エイドス様。御身の御慈悲は大変光栄で、心から感謝しております。ですがエレボニア帝国と友好を結んでいる国として、メンフィルとの戦争が終結し、そして内戦が終結したばかりのエレボニア帝国が再び大きな混乱に陥る事は望んでおりません。それに”ハーメルの惨劇”を起こしたのはエレボニア帝国だけでなく、”身喰らう蛇”の最高幹部も関わっていたとの事です。ですからどうかエレボニア帝国の事も大目に見て頂き、エレボニア帝国にも御身の御慈悲を分けてくださらないでしょうか……?」

エイドスの説明を聞いたエルナンは真剣な表情で推測を口にし、クローディア姫は複雑そうな表情でアルフィン皇女達を気にしながら答え、アリシア女王は静かな表情でエイドスに嘆願した。



「―――”ハーメルの惨劇”の真の黒幕についてもリウイ前皇帝より話には聞いています。ですから私もエレボニア帝国だけに非がある訳でない事は理解していますが……それでも、碌に調べる事もせずにリベール王国に侵攻する事を決めたエレボニア帝国の政府や皇家の方々に罪がないとは言わせませんよ?」

「それは…………」

「…………………」

エイドスの指摘を聞いたアリシア女王は複雑そうな表情で答えを濁し、アルフィン皇女は辛そうな表情で黙り込んでいた。

「混乱に陥ってもそれは今まで”ハーメルの惨劇”を隠蔽し続けて来たエレボニア帝国の自業自得です。その混乱を自分達の力で乗り越える事もリベールとハーメルの人々に対する”償い”にして私―――”空の女神”からの”天罰”の為、その嘆願には答えられません。」

「エイドス様。それはつまり御身を崇めている我等七耀教会もエレボニア帝国の混乱を乗り越える協力をしてはいけないという事でしょうか?」

エイドスの話を聞いてある事が気になったカラント大司教はエイドスに質問した。

「その件に関しては貴方達七耀教会の判断に任せます。”人”の世を生き続ける為には多くの”絆”を結ぶ事も必要な事は私もよく理解しています。ですからエレボニア帝国との”絆”を大切にする七耀教会の判断が決して間違っているとは私も思っていませんから、例え七耀教会がエレボニア帝国の混乱を乗り越える事に協力したとしても私は七耀教会の私に対する信仰を疑いません。」

「……かしこまりました。御身のお言葉、必ずや教皇猊下たちにもお伝えし、”ハーメルの惨劇”公表後に起こる可能性が高いエレボニア帝国の混乱の件については協議をして判断させて頂きます。」

自身の質問に答えたエイドスの答えを聞いたカラント大司教は頭を深く下げて答えた。



「そしてこれが最後の条件になるのですが……最後の条件は他国の領土を手に入れる為の暗躍を2度としない事です。なお期間は永遠で、当然その中には”ハーメルの惨劇”のような自作自演の暗躍も入っていますよ。」

「え………そ、それはどういう事なのでしょうか……?」

エイドスが出した最後の条件の意味がわからなかったクローディア姫は不思議そうな表情で問いかけたが

「――――衰退が確定しているエレボニア帝国は今までのように2度と暗躍によって領土を広げられない………と言う事でしょうね。」

「あ…………」

アリシア女王の説明を聞くと複雑そうな表情でアルフィン皇女達を見つめた。

「今までのエレボニアの所業を考えると信じてもらえないでしょうが、わたくし達エレボニア皇族は”ハーメルの惨劇”を今でも後悔し、エイドス様がお与えくださったハーメルやリベールの民達に対する償いを必ずやり遂げる所存でし、わたくし自身2度とハーメルのような惨劇を繰り返す事を許せまんし、わたくし個人としても暗躍をして他国の領土を手に入れるというやり方も許せませんわ。」

「皇女殿下………」

決意の表情で答えたアルフィン皇女の答えを聞いたダヴィル大使は驚きの表情をしていた。

「”空の女神”、万が一最後の条件をエレボニアが破った場合はどうするつもりだ?」

「その時は…………私―――”空の女神”を崇めている宗教団体の裏組織―――”星杯騎士団”、でしたか。その暗躍をした愚か者達を”外法”扱いし、”星杯騎士団”の皆さんに”狩って”もらいます。」

「な――――――」

「ええっ!?」

「エイドス様。何故そこまでする必要があるのか、私達にお教え頂けないでしょうか………?」

シルヴァンの問いかけに答えたエイドスの答えを聞いたカラント大司教は絶句し、クローディア姫は驚き、アリシア女王は悲しそうな表情でエイドスに訊ねた。



「女神である私自身の前で”償い”を必ずすると誓っておきながら、私が現代を去った後に衰退した自国の領土を広げる為に誓いを破ってまた同じ事を繰り返した者は”外法”としか思えないのですが?」

「…………………」

エイドスの正論を聞いたアリシア女王は重々しい様子を纏って黙り込み

「……エイドス様。万が一、エレボニアが再び暗躍で他国の領地を手に入れた事が判明した場合我々七耀教会はどうすればよろしいのでしょうか?」

「エレボニア帝国による暗躍で他国の領土を手に入れた事が判明した際は直ちにその国に返還させると共に賠償をさせる要請と暗躍をした者達を七耀教会に引き渡しの要請をし、引き渡されたその者達を狩りなさい。当然例外は認めませんので、その暗躍をした者達が貴族や皇族でも七耀教会に引き渡してもらい、その”外法”達を狩りなさい。」

「そうなると………特に”情報局”が真っ先に”外法認定”される可能性が高いでしょうね。」

「連中はこの12年の間にエレボニアに隣接している小国や自治州で暗躍して、その暗躍によって困窮した現地政府の要請を受けて帝国軍が介入し、その流れに沿って自国の領土として併合していったからな。」

「もしオズボーン宰相閣下も生きていれば、宰相閣下も間違いなく”外法認定”され、”星杯騎士団”によって抹殺される存在になるのでしょうな………」

カラント大司教の質問に答えたエイドスの答えを聞いたある事に気づいたエルナンとカシウスの話を聞いたダヴィル大使は表情を青褪めさせて呟き

「………わかりましたわ。御身がわたくし達エレボニア帝国に示してくださった”ハーメルの惨劇”に対する”償い”を必ず全て実行する事をわたくし――――アルフィン・ライゼ・アルノールが現皇帝ユーゲント・ライゼ・アルノールの代わりに確約する事を宣言致しますわ。」

「―――確かに聞き届けました。そちらの七耀教会の方、私がエレボニアに示した”ハーメルの惨劇”に対する”償い”をエレボニア帝国が実行する事を宣言した事を七耀教会の総本山の”アルテリア法国”、でしたか。そちらにいる教皇を含めた教会の上層部達にもお伝え下さい。」

「御意。今回の件、必ずや教皇猊下達にお伝えします。ただ、その件とは別の話になる嘆願があるのですが、よろしいでしょうか?」

アルフィン皇女の宣言を聞いて頷いたエイドスに視線を向けられたカラント大司教は会釈をした後エイドスにある嘆願をしようとした。



「……その嘆願とは七耀教会の総本山であるアルテリア法国に私が赴き、教皇を含めた七耀教会の上層部達に今まで判明していなかった”空の女神”である私に関する事実を説明して欲しいという事ですか?」

「ハッ、御身のご推察通りです。もしよろしければすぐにでも御身がアルテリアに向かえるように―――いえ、教皇猊下を含めた七耀教会の上層部達が御身が降臨なさったこの国を訪問する手配をさせて頂きます。」

エイドスの推測に同意したカラント大司教は話を続けた。

「その必要はありません。私には”ハーメル”の件とは別にこの時代で果たすべき”私の目的”がありますので、それを果たすまでは他の事をしている余裕はありませんので。」

そしてエイドスは意外な答えを口にした。


 
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