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無精髭

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第七章

「それはな」
「それじゃあよ」
「風呂に入ってるならか」
「毎日ね、服も毎日着替えてるでしょ」
「シャツやトランクスもな」 
 下着類もというのだ。
「替えて選択は忘れないようにやってるよ」
「私が入る前からよね」
「部屋もトイレも台所も奇麗にしてるしな」
「オーデコロンも着けてるし」
 体臭にも気をつけているのだ。
「今も中々いい香りがするわ」
「そうか」
「そこまでしていたらよ」
「大丈夫か」
「そうよ、流石にね」
 麻里奈は悠一の横顔を見つつ話す。
「もうそれこそ」
「そうか」
「服装と体臭に問題がなくて」
「フケが髪の毛になくてか」
「脂ぎってないなら」 
 要素がそこまで揃っていたらというのだ。
「誰もお髭位じゃね」
「そう思わないか」
「それもカイゼル髭とかじゃなくて」
 髭の形についても言うのだった。
「ナチュラルに生やした」
「つまり無精髭か」
「そういうのだったら」
 まさにというのだ。
「いいんじゃないかしら」
「そう言うんだな」
「ええ、私はいいと思うわ」
「そうか」
「もてたいのならね」
「一つ聞くな」
 悠一は麻里奈に顔を向けて彼女に問うた。
「御前は俺が髭がなくてもいいか」
「お兄ちゃんが?」
「ああ、それでもいいか?」
「まああった方が外見的にはいいけれど」
「やっぱりそうか」
「お兄ちゃん性格いいから」
 それでというのだった。
「その性格がまず好きだから」
「外見よりもか」
「それは二の次よ」
「そう言うんだな」
「私としてはね」
「そうか」
「そう、それとね」
「それと?」
「素の顔やスタイルも好きだから」
「髭がなくてもか」
「いいわ」
「そうか、それじゃあな」
「それじゃあ?」
「決めた」
 こう言ってだ、そのうえで。
 悠一は決断した、その決断から一月後だ。またオフの日に智和と一緒に居酒屋で飲みつつ彼に言ったのだった。 
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