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地下三階

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第三章

「変なお部屋」
「というか階ね」
「何、ここ」
「訳がわからないわ」
「どういう場所?」
「芸術コーナー?」
 二人同時に思った。
「そうした場所?」
「実は新たにもうける」
「そうかしらね」
「私達はたまたま来た」
「やっぱり従業員さん達専用のエレベーターに乗って」
「それでかしら」
 こう話すのだった。
「入っちゃったのかしら」
「じゃあ早く帰らないとね」
「エレベーターに戻って」
「地下二階に行きましょう」
 その食品コーナーにというのだ。
「色々な芸術品あって気になるけれど」
「ミケランジェロもダヴィンチもあるけれど」
「あれアテネの大聖堂よ」
「あっ、そうね」
 颯水が指差したものをだ、利冴は見て応えた。壁のところに確かにラファエロの代表作がかけられていた。
「あれはね」
「あんなのもあるのね」
「そっちにあるの夜景?」
 利冴はレンブラントの代表作を見付けた。
「あの絵もあるのね」
「ゴヤの巨人もあるし」
「ピカソのゲルニカもあるじゃない」
「見れば見る程変な場所ね」
「何なのかしら」
「あれっ、あんた達」 
 ふとだ、エレベーターに戻ろうとしたところであらためてフロアーの中を見回す二人に声がかけられた、すると。
 長い金髪をパンクに立たせて顔をお白粉で真っ白にして右目は黄色い星のメイクをし左目は青の三日月で顔は紅い口紅を耳まで塗っている。服は金と銀、虹色の何とも言えない色と模様のロココ期の貴族の男の服を着た痩せた長身の男が来た。仕草は貴族というよりは道化だ。
「何者?」
「そういう貴方こそ誰ですか?」
「凄い格好ですけれど」
 二人はその男に問い返した。
「いきなり出て来ましたけれど」
「このフロアーの責任者さんですか?」
「百巻店の人ですか?」
「誰なんですか?」
「フロアー?責任者?」
 そう言われてもだ、男は。
 首を傾げさせてだ、こう二人に言った。
「何、それ」
「いえ、何って言われましても」
「八条百貨店の人ですよね」
「ここ八条百貨店大阪店ですけれど」
「私達お客さんですけれど」
「百貨店、ああそれね」
 この言葉にはだ、男は反応した。
 そして気付いた顔になってだ、二人にあらためて言った。
「そのことはわかったわ」
「あの、わかったって」
「本当に従業員さんですか?」
「無茶苦茶変な格好してますけれど」
「パンクっていうかアバンギャルドっていうか」
 二人は男の格好についても話した。
「貴族さんですか?」
「それともピエロ?」
「あとここ何ですか?」
「色々な芸術品ありますけれど」
「芸術って。ここはインスピレーションの場所よ」
 男はいぶかしむ二人にこう答えた。 
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