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水車

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第一章

                 水車
 長野県諏訪市の近くにだ、池辺宗則は住んでいる。
 そこは田畑も多く家もまばらだ、そして水車も動いている。宗則の祖父重吾はその水車を見てよく孫に言った。
「最近じゃ水車も減った」
「そうなんだ」
「ああ、昔はもっとあった」
「祖父ちゃんが子供の頃は」
「そうだ、この辺りはもっと田畑が多くてな」 
 そしてというのだ。
「水車も水車小屋も多かったんだ」
「そうだったんだ」
「しかもな」
 重吾は孫にさらに話した、川辺にある水車と水車小屋を観ながら。周りにある田園は何処までも緑の姿を見せている。
「田んぼだってな」
「昔はもっとあったんだ」
「ああ、もっとな」
 そうだったというのだ。
「多かったんだ」
「祖父ちゃんよくそう言うよね」
「実際にそうだったんだ、それで祖父ちゃんが子供の頃はな」
「まだ牛がいて?」
「トラクターとかじゃなくてな」
 実は宗則の家は農家だ、それも広い田畑を持っていて忙しい時は忙しい。しかし広い土地を持っているせいか収入には困っていない。
「牛を使っていたんだ」
「牧場の牛じゃなくて」
「ああ、そうした牛だったんだ」
 こう孫に話のだった。
「トラクターの方がずっと便利だがな」
「それはだね」
「牛もいた、そして水車ももっとあった」
 また水車の話もするのだった。
「テレビも白黒でな」
「それも言うね」
「買うのも大変だったんだ」
 その白黒テレビもというのだ。
「うちは金があったからすぐに買えたがな」
「うちは昔からお金はあったんだ」
「土地が広くて田んぼも多くて畑もあるからな」
 そうした事情でというのだ。
「そっちは困っていなかった」
「そうだたったんだね」
「けれどな」
 それでもと言うのだった。
「本当に昔とは違った」
「成程ね」
「これからもどんどん変わるんだろうな、水車もな」
「それも?」
「なくなるだろうな」
「そうなるんだ」
「水車小屋もな」
 水車と一緒にあるそれもというのだ。
「そうなるだろうな」
「おいらが大人になる頃には」
「なくなるかもな」
 こうしたことを話した、そしてだった。 
 宗則は重吾に連れられている時にこうした話をよく聞いて話した、その話を学校で友人の島崎拓哉に話すと彼も言った。 
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