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太陽が一杯

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第五章

「まだまざ日差し強いわね」
「もう五時半位だよね」
「ええ、そうよ」 
 腕時計で時間をチェックするとそうだった、この時計は防水も十分で海でも安心して使えるいい時計だ。ただ少し重い。
「五時三十二分ね」
「大体だね」
「そうよ、けれどね」
「夏だからね」
「まだ日差しが強いわ」 
 それもかなりだ。
「少しは弱まったけれど」
「まだまだ強いね」
「お陰で暑いわ」
 夕方と言ってもいい時間でもだ。
「あと一時間半は日が落ちないわね」
「そうだろうね」
「いや、そのせいでね」
 本当にだ。
「暑いわ」
「そうだね、嫌になるね」
「夏は暑いものだけれど」
 それでもだ。
「今日はまた特別よ」
「全くだね、何か太陽がね」
 彼は運転しているので正面を見ている、それでも強い日差しを肌で感じていて私に言った。
「幾つもあるみたいな」
「そんな感じよね」
「ほら、アラン=ドロンの映画」
「フランスの凄く恰好いい俳優さんね」
「あの人の最初の代表作であったよね」
「太陽が一杯ね」
「原題違ったらしいけれど」
 それでもだ。
「あの映画思い出したよ」
「あの映画も海で夏でね」
「凄く暑そうだったわね」
「実際にこんな感じだったよね、海も日差しも」
「ええ、確かにね」
 私もあの映画を観た、そのうえでの言葉だった。
「そうだったわね、かなり前に観た映画だけれど覚えているわ」
「あの映画だとアラン=ドロン最後捕まるんだよね」
「捕まるところで終わったわね」
「警察に呼ばれてね」
「じゃあ私達もそうなるの?」
 私はくすりと笑って彼に言った、その暑い中で。
「警察の厄介になるの?」
「別に殺人とかしてないよ」
「いえ、警察の仕事は殺人だけじゃないから」
「ああ、スピード違反とか」
「そういうのあるでしょ」
「じゃあスピードの出し過ぎには気をつけて」
「交通事故自体にもね」
 そういえば帰りが一番危なかった、ついついほっとして疲れも出ていてそれで多くなるらしい。
「お家に帰るまでが、だし」
「じゃあね」
「そう、あの映画でも失敗で捕まるし」
 まあたの映画の話になった。
「だからね」
「今は気をつけて帰って」
「お部屋で休みましょう」
「その頃には日も落ちてるね」
「そうなってるわね」
 もうその頃にはだ、夕刻になっているだろうか。
「それじゃあその時はかなり涼しいから」
「晩御飯食べてシャワー飲んで」
「ビール飲む?」
 私はお昼の話もした。
「飲めなかったし」
「そうだね、じゃあ飲もうか」
「お部屋にはあるし」
「よく冷えたの飲んで寝ようか」
「そうしましょう」
 二人で部屋になってからの話をした、そうして幸い警察の厄介にはならないで済んで話した通りの夜を過ごしてだった。私達は次の日はそれぞれの仕事に出た。暑い休日だったけれど実にいい気分転換になった。


太陽が一杯   完


                2017・5・29 
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