世界をめぐる、銀白の翼
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第四章 RE:BIRTH
覚悟無き刃 弾ける閃光
笑うG4。
雄叫びと共に、気合を込め、覚悟を決め、腹を括る。
男にして、ここからが本番。
翼人を相手にするところから、彼の戦いは本当に始まる。
斬ッッ・・・・・
そして、男の胸を、蒔風が横一文字に斬り裂いた。
「カっ・・・ハ・・・・!?」
「覚悟決めんのに時間かけすぎ」
「お・・・ま・・・・」
「覚悟とかに時間かけるから、こうしてその時間を詰められるんだ」
ヒュッ、ビッ! チン
蒔風が「火」を軽く振って血を払い、鞘に納める。
「最初から決めてくるべきだったな。俺にとって、その時間は無駄に過ぎない」
そしてむなしそうな顔をして、男に背を向けて蒔風がその場を去ろうとする。
その蒔風に、シグナムが声をかけた。
「蒔風」
「ん?」
「お前、今考えてなかっただろう」
「なにを」
「覚悟をだ」
「・・・・・・」
そう、蒔風は覚悟を決めてきていない。
今、G4が本気で行くと叫んだ時、ほかの三人も新たに覚悟を決めていたのだ。
今までが本気じゃなかったのなら、それは当然のことだ。
蒔風だって、それは知っているはずだ。
しかし、彼はその覚悟を無視して刃を振るった。
死を無視した男に、そもそも覚悟をする必要はないのだから。
当然、それは危ういものだ。彼の「人間」として、あまりにも危険な要素。
一歩間違えれば、良くて狂人、悪くて廃人だ。
それをシグナムは言い止めようとしたのだが・・・・
「・・・・・」
「・・・・・」
それ以上の言葉が出てこない。
当たり前である。
その領域の人間に対し、通じる言葉が見つからないのは。
そして、それは決して恥じることではなく、むしろ自らの人間性を誇るべきことなのである。
だが、この何とも言えない感は否めない。
「・・・・話は終わりか?」
「・・・あぁ」
「じゃあ、あとは任せた」
「なに?」
そうして、蒔風が指をさす。
方向は、G4の死体。
そしてそれが、ガチャリと動き出した。
「使用者が死んでなお動かし続けるG4システム。やはりまだ生きていたか」
その言葉通り、身体の調子を見ているかのようにG4が各部を動かしていき、立ち上がって一同に顔を向けた。
そして、腕を向けてそこから砲撃が放たれてきた。
「そら来たぞ!!避けろッッ!!」
ドンッッッッ!!!
放たれた砲撃が、回避した蒔風とシグナムの間を抜けて行き、木々を薙ぎ倒して爆発させる。
今までの物よりも、比べ物にならない威力。
例によって、兵器要塞の形をとっていくG4の陰に、蒔風たちどころか森がおおわれていく。
それをみて、蒔風が呟いた。
「要塞形態で使用する兵器の数はあまりにも多すぎると思ったんだ。人間に管理できる量じゃない。あれはオペレーターが死んで初めて起動するシステムだったってことか」
やっぱりかよ、とうんざりして十五天帝を振り上げる蒔風。
そして、剣に光が集まって行き――――
「ま、下手に消耗させるとキャストオフするらしいからな・・・・わかってる以上、付き合う必要はない」
その剣を振り上げて―――
「一気に消し飛ばすのが一番だね」
ニコリと笑って、三人が押しとめるG4要塞に向かって、それを振り下ろした。
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ズゴォ・・・・・・・ン
「あれは・・・・?」
スワッ
「ん、十五天帝の光だな」
ヒラリ
「あぁ、じゃああっちの戦いは終わったかな?」
ヒョイ
「あれが出たからにはそうだろう」
「お前ら無視して話してんなよォ!!」
遠方から伸びる光を見て、あちらの戦闘はどうやら終わったと話す一刀とクラウド。
そこに、苛立ちを募らせた男の念動力が襲い掛かるが、それを軽い動作でヒョイヒョイ避けて行っている。
なんだか男の方がかわいそうになってきた。
とはいえ、さっきからいきなりこうして躱せるようになったわけではない。
一刀がクラウドと合流してから少なくとも十五分、この男は優位に戦闘を進めてきていた。
二人を拘束して投げ飛ばし
空間のうねりに投げ込んで吹き飛ばしたり
相手の放ってきた攻撃を反転させてぶつけたり
それらの攻撃に、クラウドも一刀も全身に傷を負っている。
唇は切っているし、額からも血を流している。
しかし、ついさっきのこと。
ついに一刀が相手の攻撃を見切ったのだ。
曰く「全身拘束とか全域攻撃とか調子のって何回もやるからだ」だそうだ。
確かに、そんな大きなものを幾度も放てば、他者の武器を用いる一刀にとってはいいサンプルになってしまうのだ。
そして、今に至る。
今まで攻撃を食らっていた時間の方が長かったものの、こうなっては詰んだも同然だ。
「お前、早めに捕まえて捻り潰すべきだったんだ。それをわざわざ長引かせるからこうなるんだよ?」
「だがそういった感性や感情があるからこそ、こうして念動力が大きくなったのだろうな」
「ジレンマだねぇ。ま、落ち込むなよ。相手が悪かったってことで」
「そんなんで納得できるかァッッ!!!」
激昂する男が、全域に向かって力場を広げる。
しかし、それはあっさりと一刀に切り裂かれて霧散していってしまった。
「これ以上は何をしても無駄だ」
「なぁ、もうやめようぜ。あんただって死にたいわけじゃないだろ?」
「この・・・この野郎が・・・・!!」
自分の方が力で上回っているというのに、わけのわからない力で打ち消されては、男の怒りももっともだ。
沸々と頭の中が沸騰していくのがわかる。
そしてその男の頭に
『何一人で突っ走ってんだ。地面だ地面』
そんな声が聞こえてきた。
「!! ラぁ!!」
「!?」
「ウォッ!!」
何かに気づいたように地面を吹き飛ばす男。
ドンッッ!!という音と共に、地面が爆ぜて姿が消えた。
『おーまえは考えんの苦手だろうが。俺が指示出すから、そのとーりにやれってのまったく』
「うっさいな!力だけなら僕の方が上だ!!」
『そりゃな。だけどそれだけじゃどうにもならんときはオレがやるって決まりだろう』
「む・・・・じゃああいつらぶっ潰す案をちょうだい!!」
『あーいよ』
男が頭の中の声とそう会話を進めているが、一刀とクラウドからすれば独り言にしか聞こえない。
通信か何かで連絡を取っているのだろう。
「どうやら司令塔が来たみたいだな」
「考えるのは他の人間か・・・・でも力がわかってるから余裕じゃないか?」
「・・・・・そうだといいがな」
二人が構える。
二人になった敵を見る。
しかし、一人は姿を隠したままだ。
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カチャカチャ・・・・・
レジェスが、何かをくみ上げているとき、小さなモニターがそこに現れた。
そしてそこには、「Death」という文字が表示され
「・・・・・・!! そう・・・ですか」
ほんの少しだけ落胆した声をだし、しかしそれでも作業の手は止めなかった。
「貴方が見れなかったものを、私が見ましょう。必ず成功させてみせますよ」
ほんの少しでも友と呼べたと思う人間。
自分と同じく、先祖から連なる血を受け継いだ男の死に少しだけ目を閉じて、彼は作業を進めていく。
「そのために・・・・邪魔をする者は排除です」
ピピピ、タンッ
コンソールを叩き、男が起動させる。
今だ燃える戦艦の中から液体が流れ出てきて、それが人型を取って個体となる。
「観測者の生き残りですか・・・ならばこれで充分。行きなさい」
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「ハァッ、ハァッ・・・・!!ハァッハッハッハ!!やっぱ・・・強いねお前!!」
「・・・・・・」
翼刀と四人の戦い。
百代が翼刀の正面に立ち、息切れしながら笑っている。
その周りには羽入、裕理、ハクオロとが、片膝をついてやはり息を切らしている。
翼刀も黙っているものの、肩は大きく上下しているし、声に出ないだけで呼吸も大きいものになっている。
「ッ・・・・ハァああああああああ!!!」
と、そこで翼刀が大きく呼気を溜め、丹田に力を込めて吐き出す。
そしてそこに気力が練り込まれ、胸の前に超圧縮された空気の塊が圧縮されていく。
「!?」
「あれは・・・!!」
「超高密度の空気の塊・・・?あんなものやられたら!!!」
「上等!!!(ズッッゥ)」
胸の前に手をかざし、そこにある空気弾をこねるようにして回転させていく翼刀。
それに対して百代は右拳を引いて、そこにあらん限りの気力を練り込んでいった。
周囲の大気が翼刀に向かって集まって行き、その膨大な量が野球ボール程度の大きさに凝縮されて荒ぶれている。
百代の右拳が激しく唸り、直視できないほどの鋭い光で周囲を突き刺していく。
そして
「・・・ンっ!ムゥン!!!」
「川神流!!置去後光拳!!」
二人の攻撃が放たれていき、それが正面からぶつかった。
翼刀の球と、百代の拳から放たれた気力砲。
直後、激しい爆破に周囲が巻き込まれた。
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「来たな!!」
一方、離れてエリオ、卑弥呼組。
卑弥呼は岩に向かって座禅を組み、ピクリとも動かない。
エリオはそれに背を向ける形でストラーダを構え、目の前に現れた敵に切っ先を向けた。
多種多様なクリスタルでの模造戦士。
戦士と言っても、中にはモンスターのようなものもいて、本当に「戦力をかき集めました」と言わんばかりの感じである。
数十分前
卑弥呼はここの岩に手を当て、今から自分のやるべきことをエリオに話していた。
「封印とは、必ず解かれるもの。数百、数千年後だろうとも、それは必ずだわ」
「そうなんですか?」
「完全に封じるなど、土台無理なことなのだ。だから、儂はこうして「裏口」を作った」
「裏口・・・ですか」
「左様。表向きのあちらから開かれる封印を、こちらから封じる」
「それで防げるんですか?」
「いや・・・裏門はやはり裏門。正門が開けば、こちらからの封印はあまり意味を成すまい」
「じゃあ・・・」
「だが、それでもやれることはすべてやらねばならん」
卑弥呼は、自らの拳を握って強く答える。
もし意味がなくとも自分はやらねばならないのだと。
それが、あの大戦で唯一生き残った、自分の勤めであると。
「ここにアクセスする間、儂の体は無防備になる。その守りを任せたい」
そうして、卑弥呼は裏門内に精神を流し込んで作業を始めたのだ。
全てを、この竜騎士に託して。
そして今、彼の前に敵が現れてきた。
ブースターから雷と炎が吹き出し、魔力光の粒子が周囲を覆う。
「来い!!」
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翼刀の球が放たれ、百代がそれに合わせて拳を前に突き出していく。
百代の拳からズっ、と気光弾が抜き出て、圧縮球に向かって突っ込んでいく。
「神域!!」
それが命中する瞬間の一歩手前、羽入が能力を解放、世界が灰色になって時が止まる。
彼女の認識したもの以外は。
認識したのは、有利、ハクオロの二人。
彼らの時は動いている。
裕理が止まった時の中進んでいき、翼刀の圧縮球の前に八衢の波長を張り巡らせていく。
相手の能力を打ち消していくその能力は、彼の身体から出た瞬間に動きを止める。
そして、ハクオロが羽入とタイミングを合わせて巨大化、ウィツァルネミテアとなって翼刀を押しつぶしたところで時が戻った。
「ッァあっ!!!」
長らく息継ぎをしていなかったかのように羽入が息を吐きだし、周囲の世界が元に戻る。
圧縮球の前に張られた波長で、弾の圧縮が緩められてその威力の半分を殺される。
「!? !!??」
目の前のその光景に驚愕する翼刀だが直後、自分を抑えつけるハクオロに再び驚愕する。
当然だろう。
さっきまでいもしなかった巨大な化け物が、いきなり自分を背後から捕まえているのだから。
「ッッ!!!!」
『彼女のものには劣るが、この状態の私にも再生能力がある。このまま共にぶつけさせてもらうぞ!!』
ガッァッ!!と翼刀の目の前にさし迫る光弾。
そして、一面の景色がその光で真っ白に染められていき・・・・・・
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どこの戦いも終わりに近いな。
手こずってるのは意外とクラウド・一刀組か・・・・・
あの二人は大丈夫、封印は卑弥呼が押さえている。
となれば向かうは鉄翼刀・・・・・
「川神百代に加えてあの四人だ・・・さらにヒビキさんも向かってるし・・・だが」
心残りがある。
なんだ?何が引っかかってる?
鉄翼刀
あいつには何かある。
明確な、見逃しが、何か。
「・・・・・・まさか・・・!!!!」
蒔風が駆ける。
向かう先では、とんでもない光がその場を覆っていた。
to be continued
後書き
クラウドさんたちにはもう少し苦戦してもらうことにします。
ただぶっ放してきたあの男に頭脳が出現。
これが本当の彼らの戦い方なんですね。
中でも言ってますが、あれだけの力を使うということは直感を頼りにします。
まああくまで彼の力は心的なものですからね。
だから攻撃も単純なんです。
そこに考えるという第三者が現れれば、当然強くはなります。
彼らにはてこずってもらうましょう!!
そして裏門からの制御を試みる卑弥呼。
この裏門、万が一のことを考えて封印後に卑弥呼が作った彼自身しか扱えない門です。
だから他の人が知ってたとしても、扱える可能性はゼロだったでしょう。
そして、そこへの介入は精神によって行われます。
だからエリオ君は守ってるんですね。
そして冒頭での蒔風いきなりバッサリ事件。
彼は死ぬことが怖くない以上、覚悟の時間なんていらないんですね。
だからその時間を詰められてしまった。
いつかその「どこかに投げやった恐怖」があだとなって帰ってくるのでしょう。
因果応報です。いつか大変なことになります。
そして、翼刀。
彼はいったいどう変わっているのでしょうか!?
再洗脳?
いいえ、そんなものではありません。
それがいったいどういうものか、次回で(たぶん)明らかに!!
ではまた次回で
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