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【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。

作者:炎の剣製
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0047話『羽黒の淡い決意』

 
前書き
更新します。 

 




本日は司令官さんが町を視察に行くというので私、羽黒が同行することになりました。
それで準備している時に足柄姉さんに話しかけられました。

「ねえ羽黒…?」
「はい? なんですか足柄姉さん?」
「今日は提督と一緒に町に視察に行くそうじゃない?」
「はい。だから少し楽しみなんです!」

私がそう言うと足柄姉さんはどこか面白そうに「ははーん?」という言葉を発した後に、

「そういえば…羽黒ってば提督の事、好きだったかしら?」
「ッ!? い、いえそんな…! それに私なんかじゃ司令官さんとは釣り合いません!
それに司令官さんには榛名さんという心に決めた人がいるんですからまだ絆も結んでいない私が言っても…」

自分で言って落ち込んでしまいました。
それは足柄姉さんも思っているのだろう。

「そうよね…私達姉妹で唯一絆を結んでいるのは妙高姉さんだけで那智姉さんも含めて私達はまだ練度は80代だからね」

それでもイベントでは活躍しているけどね!って足柄姉さんは前向きに言っていました。
だけど足柄姉さんや那智姉さん、妙高姉さんに比べて私は最近の出撃はめっきりない。
私以外にもあまり出撃していない子はたくさんいるけど、だけど司令官さんはたまに私達の事を考えてくれているのだろう。
本格的に出撃する時にはローテーションを組んでくれるから向き合ってくれているとは思っている。
それでも、司令官さんには少しでいい、私にだけ意識を向けてくれることを祈っていたりするのは悪い事なのかな…?
私だって艦娘だけどそれ以前に女の子だ。夢を見たいことはある。

「でも、足柄姉さん。今はこの気持ちはまだ閉じ込めておこうと思っているんです。
司令官さんが率先して練度上げをしてくれるならその時には頑張ろうと思っていますし…」
「はぁ、相変わらず甘いわね、羽黒は…そんなこと言っていたらいつまで経ってもチャンスなんて掴めないわよ?」

そう足柄姉さんに言われて、でも率先して司令官さんに詰め寄るわけにもいきませんし…。
やっぱり押しが弱いのが私の短所だから。

「とにかく、今日の視察で思い切って提督と楽しんできなさいな。
ただでさえ提督と一緒にいられる時なんて滅多にないんだから…しっかりと限られたチャンスを手にするのよ」
「う、うん…わかりました」
「うん。それならよし」

そう言って足柄姉さんに送り出されたけど、そんな勇気なんて私には…。
そんな悶々とした考えが頭に靄をかけている中で、司令官さんと合流する。

「あ、羽黒。来たか」
「は、はい…ッ! 今日は同行させてもらいますのでよろしくお願いします! 司令官さん!」
「ああ、よろしく。…ん? どうした羽黒? 顔が赤くなっているぞ?」

いけない…!
司令官さんの顔を見たら足柄姉さんの言葉を思い出してしまって頬が赤くなってしまったみたい!

「はぐっ…司令官さんは気にしないでください…私の落ち度なだけですので…」
「そうか…?」
「はぐぅ…」

変な唸り声を出して気を紛らわせるしかなかった。









それから司令官さんと町を視察に行くとさっそく町の人達が司令官さんに気づいたのだろう近づいてきた。

「提督の嬢ちゃん! 今回の作戦では大活躍だったらしいじゃないか!」
「そうよ! 自ら出撃したっていう話じゃない? 怖かったでしょうに…」
「提督って戦えるものなんだなぁ…」
「いや、この提督さんだけが特別なんだろう…?」

司令官さんはどうやらもう町の人気者になってしまっているようです。
私は後ろに控えながらも司令官さんを見守っていました。
司令官さんはいろんな方から話しかけられながらも決して笑顔を絶やさないでいました。
それで私も見習わないといけないなぁ…という思いに駆られました。
そして一通り話が済んだんだろう。
今度は私の方へと町の人達は視線を向けてきた。
はぐっ!? な、なんでしょうか…?

「今日はまた大人しそうな子だな。提督の嬢ちゃん」
「はい。羽黒、挨拶を…」
「あ、はい。妙高型重巡洋艦の四番艦の羽黒です。よろしくお願いしましゅ…あう」

緊張をしてしまって言葉を最後に噛んでしまいました。
は、恥ずかしい…。

「羽黒は少し上がり症なんですよ。ですから手加減してやってください」

司令官さんがそう言ってフォローしてくれました。
やっぱり司令官さんは優しいです。
それから主に女性の方たちに話しかけられて「苦労してない…?」とか「なにかあったら言ってね? 力になるから」と言った感じの話をしてもらいました。
それで感謝の気持ちになりながらも、

「はい。お手数かけてすみません。私は大丈夫です!」
「そうかい。頑張りなさいね」
「応援しているよ」
「はい!」

そんな話をしながらも司令官さんと町の視察をしていきました。
町の様子は明るいもので暗い顔をした人はそんなにいない印象を受けました。
そしてお昼になって、

「羽黒、お腹すいていないか? 喫茶店にでも寄っていこうか。奢るぞ」
「い、いえ…そんなわざわざ司令官さんにそこまでしてもらわなくても私もお金は持っていますので…」
「まぁまぁ。ここは私を立ててくれ。普段頑張ってくれている君達に少しでも労いたいからな」
「うう…すみません」

それで結局司令官さんに押し切られて昼食を御馳走になりました。
トーストサンドを頼んでかぶりついているとどこか微笑ましい表情で司令官さんがハンカチを出して、

「羽黒、口が汚れているぞ?」
「はぐ…」

そう言ってハンカチで私の口を拭いてくれました。
は、恥ずかしいです…。

「あ、あの…司令官さん。恥ずかしいので、その…」
「あ、ごめんな。つい構いたくなってな」
「も、もう! 司令官さん!」
「はははっ! ごめんごめん」

そんなやり取りをしながらも視察を終えて帰り道になったところで、

「あ! 提督のお姉ちゃん!」

とある女の子が司令官さんに抱きついてきました。

「あ、七海ちゃんか。久しぶりだね。元気にしているかい?」
「うん! 今ね、海軍学校に入るために勉強をしているんだ」
「そっか。それで七海ちゃんの大事なものは確認できたかな?」
「うん。お父さんや友達をより大事にするようになったの。これも提督のお姉ちゃんのおかげなんだよ!」
「そっか。それじゃお勉強頑張ってね」
「うん!…ところでそちらの艦娘さんは…」
「うん。羽黒、紹介を」
「はい。妙高型重巡洋艦の四番艦の羽黒っていいます」
「羽黒お姉ちゃんか。よろしくね。私、七海っていうの」
「七海ちゃんですね。よろしくお願いしますね」

それから司令官さんと七海ちゃんと公園でお話をしながらも楽しい時間を過ごさせてもらいました。
そして七海ちゃんと別れた後に、

「…それで羽黒。今日は少しでも楽に過ごせたか?」
「え…? それってどういう…」
「うん。足柄達に最近羽黒が落ち込むことが多いからかまってやってって言われたんだ。
それで私としても羽黒と一度ゆっくりと話してみたかったからちょうどよかったっていうかな」
「そうですか。もう姉さん達ったら…」
「怒らないであげてくれ。三人とも羽黒の事を大切に思ってくれている証拠なんだから」
「わかってます」

それで私は笑顔になりながらも、司令官さんの鎮守府に入れてよかった…という気持ちになりました。
いつか…司令官さんに私の気持ちを聞いてもらいたいです。
その為にもこれからも足柄姉さんの言葉じゃないけど積極的にならないといけないと思いました。


 
 

 
後書き
今回は羽黒視点で書いてみました。
次羽黒を出す時は那珂ちゃんや神風も絡ませて書きたいですね。



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