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艦隊これくしょん~男艦娘 木曾~

作者:V・B
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第十二話

 
前書き
どうも、あれから作中では一週間経過しております。現実では一日だけですが。 

 
俺がこの鎮守府に着任してから一週間が経った。
 
この一週間はどうやらかなり暇な日々であったらしく、俺は訓練を受けたり、戦術について学んだりした。らしく、というのも俺は普通が一体どのくらいの忙しさなのか分からないからだ。
 
余談だが、問題を起こしていた長門さんと金剛さんは無事謹慎が解かれた。
 
さて、そして今、〇九〇〇。
 
俺は朝の連絡を受けていた。
 
「さて、今日からいつも通り遠征と海域攻略を再開する。」
 
その提督の発言に、部屋中からどよめきが生まれた。という俺も「おお。」と声を漏らしていた。
 
「遠征部隊は二つ編成する。第一部隊は天龍を旗艦に龍田、暁、響、雷、電。第二部隊は那加を旗艦に球磨、多摩、望月、弥生、皐月だ。行き先は後で旗艦に伝える。」
 
ほー、天龍は遠征か。てっきり俺が遠征行くもんだと思ってた。もしくは休みか。流石に一週間で実戦なんて事は望んでないし。
 
「続いて出撃部隊だが、出撃先はカレー洋海域。作戦名カレー洋制圧作戦。名前の通りカレー洋の制圧作戦だ。」
 
ふむふむ、どこにそのカレー洋とやらがあるのかは知らないけど、まっとうな作戦だな。
 
「編成は旗艦に木曾、時雨、夕立、摩耶、神通、二号だ。」
 
へー、戦艦も空母も無しか。と言うことは潜水艦でも多いのかな…………。
 
 
「は?」
 
 
俺は思わずマヌケな声を出した。

俺だけでなく他の奴らもなかなか驚いた様子だった。そりゃそうだ。配属されて一週間で実戦とか考えられねぇしな。バスケで言ったら始めて一ヶ月の奴にセンター任せる様なもんだ……いや、もっと酷いか。
 
命懸けてる訳だし。
 
「それではこのあと遠征部隊は執務室へ。その後、出撃部隊も来ること、以上。質問はあるか?」
 
俺はこういう時は手を挙げない人なのだが、流石に挙手した。
 
「ん、二号どうした。言っとくが『なんで俺?』みたいな質問したら、『そのために訓練してたんだろ。なんでじゃない。』で済ませるから。」
 
「……………じゃあねぇよ。」
 
俺は言おうとした質問を先に言われて、渋々手を下げる。
 
それと入れ替りに他の誰かが手を挙げた。
 
「提督ー、夜戦はー?」
 
「お前は今日出撃ないってば。はい他ー。」
 
完全に余談だが、このやり取りは毎日のように行われており、最早テンプレといった感じだ。
 
すると、他のところで手が挙がった。
 
「提督、何故今回は戦艦及び空母の出撃がないのかしら?理由を伺いたいわ。」
 
この声は加賀さんだろうか。自然と背筋が伸びてしまう。
 
「理由は一つ。他の鎮守府の情報によると、敵がそこまで強く無いらしい。それなら少しでも資源の節約をしたいからね。」
 
「分かりました。」
 
と、加賀さんは納得がいったようだ。いや、俺はもっと根本的なとこが納得いってないんだけど。
 
……どうせ理由聞いても言ってくれないんだろうしな、と俺は諦めた。
 
「それでは、遠征部隊はこのあと執務室に、解散。」
 
そう言うと、提督と大淀さんは部屋から出て行った。
 
さて、俺らはというと、まず遠征部隊の連中は早速執務室へと出て行った。
 
「いやー、初陣だな。良かったじゃねぇか。」
 
そう言ってきたのは木曾だった。いやいやいやいや……。
 
「良かったけどさ……。なんだろ、まだなんというか自信ねぇっつーか、まだ早くね?っつーか……。」
 
俺の何ともハッキリしないセリフを聞いた木曾は、「そりゃそうだ。」と笑い飛ばした。
 
「つーか、そっちだって旗艦だぜ?緊張とかしねぇの?」
 
俺は少し反撃の意味も込めて、木曾にそう聞いてみた。
 
「今更だぜ。旗艦なんてもう何回もしたからな。慣れちまった。」
 
「……………。」
 
流石、という所か、全く動じてなかった。
 
「でもまぁ、俺が旗艦なんだ。誰も沈めねぇよ。」
 
「………………。」
 
なにこの娘。イケメンすぎやしませんかね?女だったら惚れてそうだ。
 
「よっ、初陣おめでとさん。」
 
そう話し掛けてきたのは摩耶さんだった。見ると、今回一緒に出撃する奴らも集まっていた。
 
「いや、神通や摩耶さんの訓練のお陰ですよ(殺されかけたけど)。」
 
「ま、お礼は今日の出撃でしてくれや。しっかし……。」
 
そう言うと、摩耶さんは頭を掻きながら、
 
「提督も鬼だよな。まさか今の最前線に新人を出撃させるとはな。」
 
いやちょっとまてコラ。
 
「え、さいぜんせん?」
 
驚きの余り思わず幼稚な発言になってしまった。
 
「はい。なんというか、突破できそうでできない、みたいなむず痒い感じで……。」

「要するにカンフル剤ってことだね。」
 
先が神通、後が時雨だ。なんというか、提督の『行き詰まってるからなんか変化を出してみるか。』みたいな魂胆が見えた。
 
「そうは言っても、提督さんは二号さんのこと信頼してるっぽい!大丈夫っぽい!」
 
夕立はそう言うと時雨に背後から飛び付いた。なんだこのハーレム物の漫画のワンシーンみたいな感じは。
 
「ま、それでも油断はすんなってことで。」
 
木曾はそうまとめた。
 
「おーい、次はお前らの番だぞー。」
 
と、声のした方を見ると、天龍がいた。どうやら遠征の行き先は聞いたらしい。
 
「あいよ。ういじゃま、行きますかね。」
 
そう言うと、木曾は立ち上がった。
 
―執務室―
 
「―以上が今回の作戦だ。」
 
提督はそう言うと、手元の資料を置いた。
 
要するに進軍して敵を殲滅しろっていう作戦だった。
 
「いつも通り大破者が出たら撤退。場合によっては中破でも撤退だ。あと、」
 
そう言うと、提督は真っ直ぐ俺を見た。いつになく真剣な面構えだった。
 
「今回は二号の初陣だ。二号は普段訓練でしてきたことを思う存分発揮すること。まわりとの連繋も忘れないこと。」
 
「お、おう。分かった。」
 
そう言うと、提督が「違う違う。」と首を横に振った。
 
「こういう時は了解、だ。」
 
「りょ、了解!」
 
俺は少し声を大きくしてそう言った。
 
「他の者は二号をサポートしようと思うな。あくまでもいつも通り、だ。」
 
「「「「「了解!」」」」」
 
他の五人は声を揃えてそう言った。
 
「それではこれよりカレー洋制圧作戦を開始する!全員出撃準備!以上!」
 
「「「「「「了解!!!」」」」」」
 
俺達は揃って敬礼し、執務室を後にした。
 

……やべぇな。俺、けっこう緊張してるな。
 
俺は歩きながらそう思った。バスケの試合で緊張には強くなってると思ったのにな……。
 
やはり、『命を懸ける』というのは生半可な覚悟じゃ無いんだな、と思った。
 
俺は他の五人の顔色を伺った。やはり緊張してるのか、と思ってたが。
 
「さーて、今回こそ木曾に撃墜数勝ってやるからな!」
 
「おう、やれるもんならやってみやがれ。」
 
「あ!じゃあ夕立も参加する!時雨も参加するっぽい?」
 
「うーん、あまり戦場にそういうの持ち込むのはとも思うけど、いいね。僕も乗るよ。」
 
「ふふふ。それでは私も参加しますね?」
 
全然そんな様子は無かった。やはり慣れているのか、笑顔すら見せていた。
 
「んで、お前はどうするんだ?」
 
木曾は俺にそう聞いてきた。
 
「全く……俺だけ仲間外れってのも寂しいしな。乗ろうじゃねぇか!」
 
自然と俺も笑顔になる。そして、木曾はニヤリと笑った。
 
その瞬間、俺は察した。こいつらが、俺の緊張を少しでもほぐすために会話をしていたことに。実際に俺の緊張はいくらか和らいだ。

あぁ、こいつらすげぇな、いつか、こういう事ができるようになりてえな。
 
そう思った。
 
―防波堤―
 
俺達は防波堤から海に降りていた。今日は風も少なく、天気もいい。砲撃がしやすくていいな。
 
今回の俺達の装備で特筆するところは、摩耶さんが弾着観測射撃のために艦載機を乗せている程度だ。
 
「まぁ、落ち着けよ?焦ったら色々台無しになるからな。」
 
そう俺に声をかけたのは木曾だ。
 
「ま、着任時点ですでに撃墜数一だし、大丈夫だろうけどな。」
 
そう言えば、俺は始めてこの艤装を装備したとき、深海棲艦―あのときのは駆逐イ級―を撃墜したな。完全に忘れてた。
 
「ま、今回もあの調子で頑張ってくれ。」
 
「……おうよ。」
 
そんなことを話していると、夕立が海に降りてきた。
 
「ごめん!少し遅れたっぽい!」
 
「いやぁ、全然。さてと……。」
 
木曾は、真っ直ぐ水平線を見た。
 
 
 
 
「これから、カレー洋制圧作戦、作戦遂行する!テメェら、暁の水平線に勝利を刻むぞ!!」
 
 
 
 
これが、俺の初出撃だった。
  
 

 
後書き
読んでくれてありがとうございます。今回は次回に向けて力を抑さえてみた。正直、次回が心配で仕方ない。ちゃんと戦闘シーン書けるかどうか。もしかしたら次回は戦闘シーンのために一日休むかも……こうご期待。
それでは、また次回。
 
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