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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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191部分:第十六話 孫策、刺客に狙われるのことその十五


第十六話 孫策、刺客に狙われるのことその十五

「そうだったな」
「はい、そうです」
「ならそれしか考えられない」 
 こう言うのである。
「絶対にだ」
「絶対に?」
 黄忠が孫権の焦りきった顔を見ていぶかしむ声をあげた。
「というと」
「あの二人のどちらか、いや両方か」
「何だ?」
「まさかって思うけれどよ」
 趙雲と馬超もここで悟った。
「愛紗と鈴々とでもいうのか」
「まさかな」
「そうだ、すぐに門に兵を集めろ!」
 孫権は命令を出した。
「何なら山にもだ。二人を捕まえるぞ!」
「しまった、蓮華様のことは」
「計算に入れてなかったわ」
 張昭と張紘はここで作戦ミスに気付くことになった。
「まさか。この方がここまで」
「取り乱すなんて」
「まずいわね」
「これは」
「いいな、即刻取調べを行う!」
 だがその間にも孫権の指示は続く。
「雪蓮姉様に害を為した罪、償ってもらう!」
「待ってくれ」
「それはないだろ」
 趙雲と馬超がその孫権に対して言ってきた。
「愛紗が何故暗殺なぞするのだ?」
「鈴々だってよ」
「理由は後から調べる」
 孫権は二人に対してもそう焦りに満ちた顔で返す。
「だが。今はだ」
「理由もなければだ」
「あいつ等はそんなことする奴等じゃねえよ」
「その通りです」
 黄忠も立ち上がって言った。
「二人共そんなことは絶対に」
「黙れ!」
 だが孫権は三人にきつい言葉で応えた。
「それは後で調べると言っている!」
「何っ、それではだ」
「ちょっと無茶なんじゃねえのか?」
「何もわかっていないうちからそれは」
「貴殿等にも嫌疑はかかっているのだぞ」
 孫権は三人に対してもその疑いの目をかけていた。
「そもそもだ。他の国からの客人というのもだ」
「ちょっと。蓮華姉様」
 次姉のあまりもの言葉にだ。孫尚香も流石に言った。
「この人達はそんな人達じゃないわよ」
「小蓮・・・・・・」
「ちょっと落ち着いて。今の蓮華姉様おかしいわよ」
 彼女から見てもそうなのだった。
「だから。ちょっとね」
「それは」
「そうです、蓮華様」
「まずは落ち着いてです」
 張昭と張紘がタイミングを見計らって孫権に声をかけてきた。
「そのうえでゆっくりと」
「捜査を」
「そうね」
 妹だけでなく二人の長老に言われてだ。孫権もやっと落ち着いてきた。
 そのうえでだ。口調を幾分か穏やかなものにさせて言うのであった。
「それでは。これから」
「はい、捜査を」
「取り調べをしましょう」
 こう話してだった。そのうえで孫権を向かわせる。後に残った趙雲達はそれぞれ難しい顔を見合わせていた。その彼女達に孫尚香が声をかけてきた。
「あの」
「済まないな」
「気を使ってくれるんだな」
 彼女の気遣う顔での言葉だった。
「だがだ」
「あの二人がそんなことする筈ないってわかってるからな」
「そうよ。あの二人は絶対にそんなことしないわ」
 それは彼女もわかっていることだった。
「けれど。蓮華姉様は」
「焦ってるわね」
 黄忠は璃々を抱きながら言った。
「どう見ても」
「普段はあんな感じのよ」
 困惑した顔で姉の弁護をする。
「優しくて。穏やかで」
「それがか」
「お姉さんのことでだよな」
「あんなに必死になって」
「そうなの。だから悪く思わないで」
 それは絶対にというのだ。
「蓮華姉様のことは」
「わかっている」
「だからな。気にするなよ」
「それはね」
「有り難う」
 三人の言葉を受けてだ。今度は小蓮が俯いてだ。そのうえで頷くのだった。
 そんな彼女達を見てだ。あかりが言った。
「絶対犯人は別におるで」
「お嬢、わかったのかいな」
「ああ、今はっきりとわかったで」
 腕を組んだ姿勢で十三の言葉に答える。
「あの人等の言葉聞いてたらな。絶対にちゃうや」
「じゃあ犯人は一体」
「それはわからへんけどな」
 あかりにもそれはというのだ。
「けどな。あの人等のお友達やないで」
「そうなんだな」
「ああ、それはわかった」
 こう話してだった。二人で話をする。そして漂も顎に右手を当てて言う。木刀は左手に持ち肩にかけている。その姿勢で言うのだった。
「まあ犯人が誰かなんていいよな」
「いいんかい」
「ああ。そんなのは後で絶対にわかるさ」
 彼はあかりに対して言っていた。
「それよりもだ」
「それよりもか」
「あの人等のお友達が犯人じゃないってあの姫様にわかってもらうことが大事だな」
「そや、その通りや」
 あかりもその通りだと頷く。
「あの姫様めっちゃええ人やけれどな。もうちょっと心の修行も必要や」
「真面目過ぎて今一つ周りが見えてないのは確かだな」
 十三も孫権のそうしたところは見抜いていたのだった。
「それがよくない方向にいかないように」
「ここでちゃんとしとかなあかんな」
 こう話彼等だった。また何かが動こうとしていた。


第十六話   完


               2010・5・24
 
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