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艦隊これくしょん~男艦娘 木曾~

作者:V・B
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第六話

 
前書き
どうも、やっと着任しました。 

 
 
今は一体何時位だろうか。
 
 
俺は目を覚まして、体を起こした。窓の外はカーテン越しでも分かるが、朝日が差し込んでいる。
 
 
俺は壁に掛かっている時計を見た。
 
朝 五時半。
 
……うん、普通に朝練の時間だ。俺の体内時計かなり正確だな。それに伴って俺の脳味噌も直ぐに働き始めた。いや、働き始めても何ができるでも無いんですけど。
しかし、俺は二度寝をしない主義なので、そのままベッドから立ち上がった。「うーーんっ。」と背伸びをして、欠伸を一つ。
 
……………いや、だからこんなに早く起きても意味無いんだって。いつもなら「しゃーねぇ、走りに行くか。」つってジャージに着替えて走りに行くが、多分迷子になる。
 俺は脳内の選択肢からランニングを消して、他に何をしようかと考える。
 
…………取り敢えず、着替えるか。
 
俺は取り敢えずタンスの中を開けてみた。そこには、木曾が着ているのとかなり似ているセーラー服があった。スカートだったら嫌だな、とか思ってたが、ちゃんと半ズボンと長ズボンが両方あった。よかったよかった。
 
…………いや待て、なんでここにちゃんとした、それこそ俺に合わせたかのようにセーラー服があるんだ。こんなこと想定しているはずもないし。
 
すると、俺はタンスの中に紙切れが落ちていることに気付いた。拾ってみるとそこには、
 
「取り敢えず球磨型のセーラー服を用意しといた。ズボンは取り敢えずは僕らの制服の余りを使うといい。私服はその内実家から届くよ。
 
bye 提督」
 
と書いてあった。
 
……何処から突っ込んだら良いのか分からない様な文章だった。取り敢えず一個だけ。
 
「byeじゃなくてbyだ、アホ。」
 
俺はそう一言言って、紙を丸めてゴミ箱に投げ入れた。
 
しかし、服があると言うのは有り難い。遠慮なく着させて貰おう。そう考えて、俺はセーラー服と、すこし迷ったが半ズボンの方を手に取った。どうやら俺は同年代の男子と比べた時、そんなに毛深く無いらしい。その為こんなのが普通に履ける。
 
………つまりは男っぽくないってことになるのかも知れないが、知ったことじゃねぇ。
 
俺は慣れないセーラー服を何とか着て、ズボンを履いた。部屋に姿見があったので、少し見てみる。
 
「…………スカートだったら完全に女子だな俺。」
 
と言えるくらい、自分で言うのもあれだが、セーラー服が似合っていた。……まぁ、セーラー服って元々は軍服だった訳だし、昔は男が着てたんだ、何の問題も無い。
 
俺はそう自分に言い聞かせて、タンスを閉じようとした。しかし、そこには、もう一個身に付けるものがあった。そう、眼帯だ。
 
「これは……どーするかな……。」
 
俺はそれを手に取ってみた。どうやら木曾が使っているの同じ物の様だ。
 
いや、なんでこんなことで女の子とペアルックになるんですか。 しかも眼帯。どう考えてもただの中二病だ。
 
「…………………取り敢えずトイレ行こう。」
 
そう言って、俺はタンスに眼帯を置いて、扉を開けようとした。しかし、ドアノブが、俺が触る前に動いた。
 
あ、これはヤバい。
 
「おっはよーー!!元気してるかーーー!!」
 
勢いよく開かれた扉、ここの扉は内開きなので、当然扉をモロに食らってしまう。どうやら本当に勢いが凄かったらしく、吹っ飛ばされる俺。そして、更なる悲劇が。
 
 ゴンッ。
 
それは、俺の頭が机に直撃する音だった。このわずかな期間に二度目となる星を見ることになった俺。二度寝をしない主義と言ったが、俺の意識は闇の中に沈んで行った。

 
 ―――――――――――――――――
 
 
「ほんっとーにすまない!」
 
俺が目を覚ましたら、そこはどうやら医務室のような所だった。そして、そこにはあんなハイテンションで扉を開けた張本人である木曾と明石さん、更には提督まで来ていた。
 
「いや、まさかそんなに早く起きているとは知らずに………。」
 
「本当だよ。全く………。」
 
「ですね。」
 
そう言うのは明石さんと提督だ。確かに、今回のことに関して言えば俺は全く悪くないしな。新天地での目覚めの朝としては最悪だが。
 
「いや、まぁ次しなかったらいいよ。ケガしてる訳じゃ無いし。」
 
「動けるか?」
 
「おう。」
 
そう言うと木曾は、「良かったー…………。」と言った。まぁ、うん。あのテンションについては何も言わないでおこう。それにしても、木曾はあんなハイテンションで俺を起こそうとしてたのか。……末恐ろしい。
 
「そうそう、ついでに言っとくけどね。」
 
と、提督が切り出してきた。
 
「君はこれからこの呉鎮守府で軽巡洋艦 木曾として所属することになった。と言う訳で今日この後、君の着任を他の艦娘に知らせることになる。」
 
提督は更に続けた。
 
「そして、その場で君が男であることも伝える。」
 
そうか、やっぱり伝えるのか。

俺の率直な感想はそうだった。
 
しかし、ここで働くことになるだろうとは思ってた訳だし、別に驚く事でもない。
 
「分かった、なんか自己紹介でも考えとくよ。」
 
 
 
 ~一時間後~
 
 
 
朝九時。
 
どうやらここの決まりで、毎朝九時にその日の伝達事項を伝える場があるらしい。そして、それが行われるのが、赤レンガの建物の二階にある、この大会議室だ。
 
「それじゃ、俺と一緒に入って、自己紹介をすると良い。男であるとか、詳しいプロフィールは僕が………。」
 
「いや、俺から伝える。」
 
それだけで、俺の考えてる事を察したのか、「そうか、ならそうしなさい。」と言った。
 
「それじゃ、行こうか。」
 
そう言って、提督は扉を開けて入って行った。俺もその後に続く。
 
中には三十から四十人位の人がいた。無論、全員女の人だった。
 
「敬礼!」
 
提督が部屋の前にある立ち机の前に立ったとき、恐らく一番年長であろう人がそう言うと、その場の全員が敬礼した。俺は、さっき一応練習したから、一応してみた。ちゃんとできてるから別として。
 
そして、みんなは座り始めた。みんなが座り切った所で、提督は口を開いた。
 
「えー、今日はまず始めに、新しくこの鎮守府に着任した者の紹介を始める。」
 
そう言って、提督は俺に目配せをした。そうして、提督はすこし横に移動する。俺はそこの空いたスペースに立って、再び敬礼した。
 
「球磨型軽巡洋艦 木曾 本日付で呉鎮守府に着任いたしました!至らない所があると思うが、精一杯頑張ろうと思う!」
 
少し、部屋全体がざわついた。それもそうだ。だって、球磨型軽巡洋艦の木曾は、すでに一人居るから。
 
「提督ー、一個しつもーん。」
 
真ん中位の所で、手が挙がった。緑の髪の毛をした、学校で着るブレザーに良く似た服を着た娘だ。
 
「確か同じ艦娘って同じ鎮守府に着任できないんじゃなかったっけ?」
 
成る程、そう言う訳か。そりゃざわつくわな。
 
「それに関して、この木曾から連絡がある。」
 
そう言って、再び目配せをしてくる提督。
 
さあ、言ってしまおうか。
 
「普通どうやら深海棲艦と戦う力を持てるのは、女性だけらしい。しかし……………。」
 
俺はここで息を吸って、堂々と言った。
 
 
 
 
 
「俺は男にして深海棲艦と戦う事ができる者だ。」
 
 
 
 
  
 

 
後書き
読んでくれてありがとうございます。ここから男艦娘 木曾の戦いが始まると言っても過言ではない気がする。
では、また次回。
追記 五月二十日 投稿作品全体に修正を加えました 
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