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亡命編 銀河英雄伝説~新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)

作者:azuraiiru
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第四十話 司令長官

帝国暦 485年 12月21日  オーディン ラインハルト・フォン・ミューゼル



ミュッケンベルガー元帥の屋敷は軍の名門貴族らしく大きくはあるが華美ではなかった。どことなく重厚な雰囲気を漂わせている。人が屋敷を造るが同時に屋敷が人を造るということもあるのかもしれない、そんな事を考えた。

オフレッサー、リューネブルクと共に来訪を告げると若い女性が応接室へと案内してくれた。目鼻立ちの整った細面の顔に黒髪、グリーンの瞳をしている。身なりからして使用人では無い。娘にしては若すぎるが孫にしては大きすぎるだろう。まさかとは思うが愛人か? リューネブルクも幾分不審げな表情をしている。

「少しお待ちください、今養父が参りますので」
その言葉で娘だと分かった。しかし養女? 彼女が応接室を出ていくとオフレッサーが小声で話しかけてきた。

「彼女の名はユスティーナだ、元帥とは縁戚関係に有る。元々はケルトリング家の人間だ。良く覚えておけ、そしてその事には触れるなよ」
ケルトリング家か……、かつては軍務尚書まで輩出した軍の名家といって良い。ミュッケンベルガー家より格が上だったはずだ。

しかし同盟軍にブルース・アッシュビーが現れた事がケルトリング家を没落させた。何人もの男子がアッシュビーの前に倒れ、それ以後ケルトリング家は立ち上がる事が出来なかった。

ミュッケンベルガー元帥も確か父親をアッシュビーに殺されている。だがミュッケンベルガー家は元帥によって見事に立ち上がった。なるほど元帥にとっては彼女は縁戚と言うだけではないのだろう。一つ間違えばミュッケンベルガー家も似たような境遇になっていたかもしれない、そう思ったのかもしれない。オフレッサーが触れるなというのもそのあたりを考えての事か。

そんな事を考えているとミュッケンベルガー元帥が応接室に入ってきた。立ち上がり、互いに敬礼をしてソファーに座る。
「待たせたかな」
「いえ、そのような事は」

ミュッケンベルガーとオフレッサーの会話を聞きながらミュッケンベルガーの様子を見た。辞任するはずだが、その事が元帥の外見に与えた影響は見えない。普段通りの威厳に溢れた姿だ。

「元帥への昇進、おめでとう」
低く穏やかな口調だ。口元に笑みが有る。
「有難うございます、閣下のお口添えが有ったと軍務尚書、統帥本部総長から伺いました。御礼を申し上げます」
「何の、私は当然のことをしたまでだ。礼には及ばん」

オフレッサーがミュッケンベルガーの前で畏まっているのに驚いたが、その話の内容にも驚いた。オフレッサーの昇進にはミュッケンベルガーの口添えが有った。そして軍務尚書も統帥本部総長もそれを受け入れている。

帝国軍三長官といえば以前は犬猿の仲だったと聞いているが、今は違うらしい。サイオキシン麻薬の一件で協力体制を築いたと聞いていたが、元帥への昇進問題まで協力しているとなるとかなり緊密なもののようだ。

「それだけではありません。この二人の命も……」
オフレッサーの言葉に俺とリューネブルクが頭を下げた。その頭上をミュッケンベルガーの苦笑交じりの声が通り過ぎた。

「そのような事は止めよ、それも当然のことをしたまでだ」
顔を上げ元帥を見た。やはり苦笑している。本心からそう思っているのだと分かった。
「それでも元帥閣下が我ら両名の命を救われた事は事実です。有難うございます」
リューネブルクが礼を言い、また一礼した。俺も頭を下げた。

「二人とも頭を上げろ、それでは話が出来ん」
俺とリューネブルクが頭を上げるとミュッケンベルガーが口を開いた。

「罪はこの私に有る。陛下よりグリンメルスハウゼンの遠征軍への参加を命じられた時、それを断れなかった。受け入れておきながら戦場では邪魔になると追い払った。愚かであった、そこを敵に突かれた……。敗戦は誰の罪でもない、このミュッケンベルガーの罪なのだ」
元帥が太い息を吐いた。

「あの敗戦の後、内密にバラ園で陛下に拝謁した。グリンメルスハウゼン子爵は陛下がお若い時分、侍従武官として御傍にあった、さぞかし叱責されるだろうと覚悟した、死をも覚悟した……」
「しかし、それは」
「控えよ、ミューゼル!」
「……」

俺が理不尽を言おうとするとオフレッサーが低い声で叱責した。不敬罪を冒すとでも思ったのかもしれない。俺は黙って頭をさげた。実際口を開けば皇帝に対する批判が出ただろう。

「済まぬと言われた、許せと……」
「!」
「自分の我儘故にそちの立場を危うくした、三百万もの将兵を死なせた、許せと……。陛下は泣いておられた……。畏れ多い事ではあるが陛下を御恨みしなかったと言えば嘘になる。だがあの時、陛下は私に頭を下げられたのだ……」

全人類の支配者にして全宇宙の統治者、天界を統べる秩序と法則の保護者、神聖にして不可侵なる銀河帝国皇帝、その皇帝が、フリードリヒ四世が泣いて頭を下げた……。ミュッケンベルガーは何かに耐えるかのように目を強く閉じている。

「誰よりも陛下が御自身の罪を愧じておいでであった。私が罰せられなかったのもそれ故の事。ならばどうして私が卿らの処罰を見過ごすことが出来る。それをすればもはや人ではあるまい……」
「……」

俺の命はミュッケンベルガーに救われた。そのミュッケンベルガーはフリードリヒ四世に救われた。つまり俺は皇帝に命を救われたという事か……。あの男に命を救われた……。

あの男は自分の罪を知っていた。ならば俺はどうだろう、オフレッサーにグリンメルスハウゼンを見殺しにしたと言われるまでその事に気付きもしなかった。罪悪感も感じなかった。俺は一体何を考えていた?

ミュッケンベルガーが目を開いた、僅かだが潤みを帯びているように見えた。見てはいけない、そう思ってすぐ下を向いた。

「私が愚かであった。あの時、宇宙艦隊司令長官としてグリンメルスハウゼンの遠征軍参加を拒絶すべきであった。それをせぬばかりに大敗を喫し陛下をも苦しめる事になった……」
「……」

「再戦を命じられた時、私は思った。陛下のお優しさに甘えてはならぬと。この身には宇宙艦隊司令長官の、いや帝国軍人たるの資格無し。この一戦にて軍を退くと……」
「閣下……」

オフレッサーの呻くような声が聞こえた。俺ならどうしただろう、グリンメルスハウゼンの同行を拒絶できただろうか、敗戦においてミュッケンベルガーのように己を厳しく律することが出来ただろうか……。また思った、俺は一体何を考えていた?

顔を上げることが出来なかった。何をどう考えて良いのか分からず只々俯いていた。フリードリヒ四世が怠惰な凡人なら俺は何だ? 味方を見殺しにした卑怯な恥知らずではないか。

あの男に犯した罪悪に相応しい死に様をさせてやると思った。ならば俺に相応しい死に様とは何だ? 俺は一体これまで何をしてきたのだ? 自然と手がロケットペンダントを握っていた。

キルヒアイスが居ればと思い、慌てて首を振った。自分で考えるのだ、フリードリヒ四世もミュッケンベルガーも苦しみながら自分で答えを出した。その答えが俺をリューネブルクを生かしている。キルヒアイスに頼るな、キルヒアイスには俺の生き様を見てもらうのだ。そしてその生き様は自分で考えるのだ……。

「閣下、次の宇宙艦隊司令長官は決まりましたか?」
オフレッサーの声が聞こえた。慌てて顔を上げた、一体どのくらい時間が経ったのか……。俺の目の前に首を横に振るミュッケンベルガーの姿が有った。

「残念だが未だ決まらん」
「メルカッツ提督ではいけませんか」
「うむ、副司令長官なら良いが司令長官となるとな、いささか不安が有る」
宇宙艦隊司令長官が決まらない? メルカッツではない? 能力、人望ともにメルカッツ以外に適任者がいるとは思えない。何故だ?

俺の疑問を読み取ったのかもしれない、ミュッケンベルガーが微かに笑みを浮かべながら教えてくれた。
「一個艦隊の指揮なら私よりも上手いだろうな、だが艦隊司令官と宇宙艦隊司令長官は違うのだ」

艦隊司令官と宇宙艦隊司令長官は違う? 当たり前の事ではある、それをあえて言うとはどういう事だ? 考えているとミュッケンベルガーが俺に話しかけてきた。

「卿はあの男をどう思う?」
「は? メルカッツ提督の事でありますか?」
「違うな、エーリッヒ・ヴァレンシュタインの事だ」
思わず顔が強張るのが分かった。

「向こうは卿を天才だと評しているそうだが……」
素直には受け取れなかった。手強いとは思っていた。油断できないとも思っていた。だが昨日あの男に感じた恐怖感はどう表現すればよいのだろう。

「恐ろしい男です、正直体が震えるほどの恐怖を感じます。一体どこまで此方の事を知っているのか……」
「……」
「向こうは此方を見切っている。しかし此方は向こうを見切れていない、今一つ掴みきれない……。上手く言えませんがそんなもどかしさが有ります」

そう、怖いのだ……。あの男は俺の全てを知っている。いや知っているように思える。何とも言えない不気味さだ。そして俺はあの男の事をほとんど知らない。俺よりも上のように思える、しかしあの男は俺に敵わないと言い、俺を天才だと評している。何処までが本当なのか、あの男の底が見えない……。

「恐ろしいか……、それで良いのだ」
「?」
「問題はその先だ。恐怖に蹲るか、それとも恐怖を堪えて反撃するか……。反撃するのであれば相手を知らねばならん。蹲れば死ぬだけだ。卿はどちらだ?」

ミュッケンベルガーが俺を見ている、気が付けばオフレッサーが、リューネブルクが俺を見ていた。
「……反撃します」

「容易なことではないぞ、骨が鳴るほどの恐怖に襲われても堪えねばならん。死ぬ方がましだと思う事も有ろう、堪えられるか?」
「……堪えられると思います」

俺の言葉にミュッケンベルガーが満足げに頷くのが見えた。リューネブルク、オフレッサーも頷いている。思うのでは駄目だ、堪えられる、堪えなければならない。そうでなければあの男には勝てない……。
「堪えられます」



宇宙暦 794年 12月 28日  ハイネセン  宇宙艦隊総司令部 ミハマ・サアヤ



今年もそろそろ終わろうとしています。ですが同盟軍は未だに宇宙艦隊司令長官が決まっていません。前任者、ロボス元帥があのような形で解任されましたので後任者の選定には慎重になっているようです。噂では決まるのは年が明けてからだろうと言われています、年内の決定は無さそうです。

宇宙艦隊総司令部ではこれまで居た百人以上の参謀はその殆どが総司令部の参謀職を離れました。今では僅かに残った参謀が宇宙艦隊の維持運営のために日々仕事をしています。

その僅かな参謀の中にヴァレンシュタイン准将、ワイドボーン准将、ヤン准将がいます。三人とも昇進しました、それぞれ撤収作戦、その支援作戦に功績が有ったという事を評価されての事です。

私とバグダッシュ中佐も昇進しました。今ではミハマ少佐とバグダッシュ大佐です。ヴァレンシュタイン准将を無事に連れて帰ってきた、その事を評価されたそうです。

弾除けぐらいにしかならないと覚悟して行ったのに昇進? そう思いましたが、ワイドボーン准将もヤン准将も生きて戻ってきたのは大したものだと言ってくれました。

くれると言うものは貰っておきなさいと言ったのはヴァレンシュタイン准将です。でもその後、にっこりと笑って最近肌が荒れ気味だから良い化粧品を買いなさい、そのくらいはお給料もアップするでしょうと続けました。

余計なお世話です! これでも気にしてるんです。私は敏感肌でなかなか合う化粧品が有りません。ちょっとした環境の変化や季節の変わり目でも結構苦労します。寒くなってきましたし、空気も乾燥するので大変です。

総司令部の最高責任者は現在ではグリーンヒル参謀長です。その次に来るのがヴァレンシュタイン准将、ワイドボーン准将、ヤン准将になります。元々は三人よりも上級者が居たのですが、皆総司令部から離れました。

いずれ新しい司令長官と新しい参謀長が決まります。総司令部の参謀はその時点で新たに選抜するそうです。ヴァレンシュタイン准将、ワイドボーン准将、ヤン准将が残っているのは昇進したのだからその分仕事をしろという事のようです。

多分当たっているのでしょう、私とバグダッシュ大佐も居残り組ですから……。その他に十人程、参謀が残っています。いずれも皆尉官です。つまり雑用係という訳ですがこれが結構大変です。

宇宙艦隊全体の決裁文書、連絡文書が来るんです。半端な量ではありません。皆毎日書類に追われています。私と言えば以前後方勤務に居た経験を買われて主として補給関係の書類の確認を行っています。

総司令部で三人の准将の役割は決まっています。文書のほとんどの決裁は事前にヴァレンシュタイン准将が確認してからグリーンヒル参謀長に届きます。他所からの連絡、問い合わせ等に関してはワイドボーン准将が行い、そしてヤン准将は昼寝か読書です。

ヤン准将に事務処理など無理、ヴァレンシュタイン准将とワイドボーン准将の言葉です。ちょっと酷いと思いましたが、ヤン准将は文句を言いません。言われた通り昼寝と読書をしています。一度仕事を手伝ってもらいましたが納得です。反って時間がかかりました。

三人の准将の机はほぼ三メートルおきに並んで置いてあるのですが、ヴァレンシュタイン准将の机には書類が山積みになっています。ワイドボーン准将の机にも多少ありますがヤン准将の机には書類は有りません。

ワイドボーン准将によるとヤン准将は平時では役に立たないのだそうです。“昼寝をしているのが奴も含めてみんなのためだ”と言っていました。ヤン准将はエル・ファシルで全ての勤勉さを使い果たしたと言っています。

ドアが開いてバグダッシュ大佐が入ってきました。少し早足でヴァレンシュタイン准将に近づきます。ワイドボーン准将もヤン准将も視線を大佐に向けました。

「オフレッサーが元帥府を開きました。その元帥府にミューゼル少将、リューネブルク少将、キスリング少佐の名前が有ります」
「……」

ヤン准将とワイドボーン准将が視線を合わせました。そしてワイドボーン准将が口を開きました。
「ミューゼル少将は陸戦隊の指揮官に移るということかな」
「さあ、どう考えれば良いのか……」

ミューゼル少将はヴァレンシュタイン准将が天才と評する人物です。イゼルローン要塞攻防戦でもこちらの作戦を見破りました。厄介な相手ですがその彼が陸戦隊の指揮官になる……、こちらとしては悪い話ではありません。

「宇宙艦隊司令長官は誰に決まりましたか?」
「まだ決まりません。どうも揉めているようですな」
「メルカッツ提督ではないのですか」
「ええ」

ヴァレンシュタイン准将とバグダッシュ大佐が話しています。准将はミューゼル少将の処遇よりも次の宇宙艦隊司令長官の方に関心が有るようです。准将が目を閉じて左手で右肩を押さえました。

右肩はイゼルローン要塞で負傷した場所です。あれ以来准将は考え事をする時は目を閉じ、肩を押さえ擦るようになりました。まるで負傷した傷跡に相談するかのようです。

「メルカッツ提督は生粋の武人です、政治的な行動などする人ではない。軍務尚書エーレンベルク元帥、統帥本部総長シュタインホフ元帥にとっても扱い易い相手のはずです」
「他に反対している人が居ると?」
バグダッシュ大佐の問いかけに准将は首を横に振りました。右肩を押さえるのを止め大佐に答えます。

「例えそうであっても軍事に関しては両元帥の意見が重視されます」
「では?」
「……反対しているのはエーレンベルク元帥、シュタインホフ元帥かもしれません」
意外な言葉です、皆が顔を見合わせました。

「ミュッケンベルガー元帥は威に溢れた司令長官でした。それに比べるとメルカッツ提督は明らかに威が足りない……。艦隊司令官としては有能かもしれない、副司令長官も十分にこなすでしょう、しかし司令長官ではいささか不安が有る……、これは私の想像ですがそう思ったのかもしれません」

“威”というはっきりしないもののために帝国は司令長官を決められずにいる、准将の言う通りならそういう事になります。ワイドボーン准将もヤン准将も曖昧な表情をしています、どう捉えて良いのか分からないのかもしれません。私達の困惑をどう思ったのか、准将は苦笑しながら言葉を続けました。

「同盟にも威に溢れた司令長官が居ましたよ、彼が指揮を執れば必ず勝つと周囲に確信させた……。ブルース・アッシュビー元帥……」
「なるほど、そういう事か……」
バグダッシュ大佐が頷きました。周囲でも頷いている人が何人かいます。

「となると帝国はしばらくの間、司令長官に人を得ず混乱する、そう見て良いのかな?」
「そうなる可能性が有ります」
「チャンスだな、ミューゼル少将は居らず帝国軍は混乱、攻勢をかけるチャンスだ」

ワイドボーン准将が興奮したように声を出しました。周囲もその興奮に同調する中、ヴァレンシュタイン准将だけが冷静でした。
「一、二度は勝てるでしょう、でもその後は最悪でしょうね」
「?」
「帝国は強力な司令長官を任命するはずです」

ワイドボーン准将とヤン准将が顔を見合わせています。
「ミュッケンベルガー元帥が復帰する、そういう事かな?」
問いかけたヤン准将にヴァレンシュタイン准将が笑みを浮かべました。
「違いますよ、ヤン准将。オフレッサーが宇宙艦隊司令長官になる、そう言っているんです」
「!」

その瞬間に部屋の空気が固まりました。クスクスと准将の笑い声だけが聞こえます。
「な、何を言っている。オフレッサーは地上戦が主体だろう、宇宙艦隊司令長官など……」
「総参謀長にはラインハルト・フォン・ミューゼルが就きます。それでも無理ですか、ワイドボーン准将」
「……」

「しかし、そんな事が」
「地上戦でも宇宙空間でも戦争をしていることには変わりはありません。別な何かをしているわけじゃないんです。オフレッサーは軍人ですよ、自分が何をするべきかは分かっている」
「……」
准将が笑うのを止めました。

「敵を叩き潰す、ミューゼル少将に作戦を立案させ各艦隊司令官にその作戦を実行させる、難しいことじゃない……」
「……」

部屋が静まり返りました。准将のいう事は分かりますが私にはどうしても納得いかないことが有ります。
「准将、周囲の提督達はどうでしょう。素直に命令に従うんでしょうか?」

私の問いかけに何人かが頷きました。そうです、いきなり陸戦部隊の指揮官が司令長官になると言っても提督達は納得できないと思うのです。准将は私の質問に軽く頷きました。

「従わなければ首にすれば良い。そして若い指揮官を抜擢すれば良いんです」
「若い指揮官?」
「ええ、今帝国で本当に実力が有るのは大佐から少将クラスに集中しているんです。彼らを抜擢して新たな宇宙艦隊を編成すればいい」
「……」

そう言うと准将は名前を並べ始めました。
”ロイエンタール、ミッターマイヤー、ビッテンフェルト、ワーレン、ミュラー、ルッツ……”全部で十人以上は居たでしょう。

「いずれも有能極まりない男達です。精強無比な艦隊が出来るでしょう。オフレッサーが陸戦、艦隊戦、その両方の最高司令官になるんです。そしてその傍にはミューゼル少将がいる。最悪ですよ……」
そう言うと准将はまた眼を閉じて肩を撫で始めました。







 
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