| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

15部分:第二話 張三姉妹、太平要術を授かるのことその二


第二話 張三姉妹、太平要術を授かるのことその二

「私達旅芸人でして」
「ささやかな心尽くしをね」
「御願い」
「ふうん、そうなの」
「ちょっとねえ。今は」
「袁紹様はここの領主様にもなられたけれど」
 領主の話も出て来た。
「どうされるかわからないからね」
「お金は」
 ないという彼等だった。
「ちょっとねえ」
「悪いね」
「あっ、それなら」
「これ聴いて」
「音楽もあるから」
 三姉妹は今度はそれぞれ楽器を出してきた。そのうえで演奏をはじめる。そして歌も歌う。しかし街の人々はそれを聴いてもであった。
「まあ上手いよね」
「けれどねえ。袁紹様がどう治められるかわからなくて」
「冀州はかなりよく治められてるけれどね」
「并州もそうなんだろ?」
「だけれどね」
 それでもだというのである。
「気まぐれな方だしねえ」
「政治はともかく結構あれな人だしねえ」
「全くね」
 こんな話をするのであった。
「だからどうなるかだよね」
「全くだね。だから今は」
「ちょっとね」
「こういうものしかね」
 痩せた薩摩芋が数本ザルに入れられただけであった。その他には何もなかった。そんな有様であった。
「ええと、どうして食べる?」
「どうしてって。煮るのが一番でしょ」
「焼く?」
 その薩摩芋が入ったザルを手に呆然とする張角に張宝と張梁が言う。
「とにかく。今日はこれだけね」
「寒いね」
「・・・・・・うん」
 木枯らしさえ吹く。その中で呆然とする彼女達だった。しかしここに一人の長い黒髪に眼鏡をかけた服も漆黒の男が拍手しながら来たのであった。
「いやいや、御見事」
「貴方は?」
「先程から貴女達の歌を聴かせて頂いていまして」
 温和な笑みを作って言ってきたのであった。
「感服しました。それでなのですが」
「それで?」
「これをどうぞ」
 言いながら一冊の書を出してきた。それには太平要術の書とある。
「この書を役立てて下さい」
「この本は?」
「私からのささやかなプレゼントです」
 こう言うのである。
「それに貴女達は妖術も使えますね」
「えっ、それもわかったの?」
 張宝は彼の言葉に驚いた顔になった。
「誰にも言わなかったのに」
「はい、わかります」
 男は温和な顔で答えてきた。
「それはよく」
「何でわかったのかしら」
 張角はそのことを不思議に思った。
「内緒にしてたのに」
「けれどその本くれるのね」
「はい」
 今度は張梁の言葉に頷いてみせてきた。
「どうぞ」
「有り難う」
 その本を受け取った張梁だった。
「じゃあ読ませてもらうわ」
「貴女達のこれからのさらなる御発展をお祈りします」
 男はこう言うとすぐに姿を消した。三姉妹はまずは宿に戻った。そうしてそのうえで三人で話をするのであった。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧