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歌集「春雪花」

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 過ぎ去りし

  日々を映すか

   朧月

 独り眺むる

    君のなき里



 何もなくなった家の中…幽かな朧月の淡い明かりが射し込む…。

 狭いと思っていた家…ガランとした部屋を見ると、あぁ…こんなに広かったのかと思う…。

 硝子越しに見える朧月…この部屋で見るのも終わりだ…。


 彼のいないこの小さな町…ここで寂しく見上げるのも…もう終わってしまうのだな…。



 惜別の

  荒ら屋に生うる

   しのぶ草

 君の傍えに

    ゆくと思へば



 良き思い出も悪しき思い出も…過ぎ去った日々の中へと流れ行く…。

 長年住み慣れた家…もう立ち入ることさえ無くなるとなると、やはり寂しさが湧くもの…。

 手入れのされない庭に雑草が生えていることさえ、もう見ることはないのだ…。

 あれもそれもと…惜しむことばかり…。


 たが…そう、彼の住む町に近くなる…少しの距離でも彼に近くなると思えば、そう辛くもあるまい…。



 
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