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ドラゴンクエストⅤ~紡がれし三つの刻~正式メンバー版

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二の刻・青年期前半
  第三十一話「いざ、ラインハットへ」


「見ていてくれ親父。母さんは絶対に救い出して見せる」

その言葉に応えるかの様に刃に一筋の光が走った。



―◇◆◇―

「なあリュカ、もしかしてお前ならその剣を使えるんじゃないか?あの馬車だってお前が触れる事で元の姿に戻ったんだし」
「いや、俺が伝説の勇者だったんなら親父がその事に気付かない筈は無いだろう。でもまあ、試しに…」

そう言いながらリュカは天空の剣を手に取るが剣は何の反応も見せず、それを見たスラリンは残念そうに呟く。

「何にも起こらないね、リュカ」
「うん、まるでただの棒切れを持っているみたいだ。やっぱり俺も勇者じゃないな。ヘンリーはどうかな?」
「俺か?俺も違うと思うが…、うわっ!な、何だこれはっ!?お、重い……」

リュカは前言通り棒の様に軽々と持っていたがヘンリーが手にすると逆に重すぎて持てない様だ。

「やっぱりヘンリーも違うか。まあ、そんなに簡単に見つかるんなら親父も苦労はしなかっただろうしね」
「よいしょっと、ふう。取りあえず占い婆さんが言ってた道しるべはこの天空の剣の事だろうな。これからどうする?もう一度オクラルベリーに戻って婆さんに占ってもらうか?」

ヘンリーは重さにふら付きながら剣をリュカに渡すとこれからどうするかと尋ねる。

「いや、まずはラインハットを何とかする方が先だ。スラリンが言った様にこの村を襲ったのが魔物だとすると城や城下町の連中もこの村と同じ目にあっているかもしれないから放っておく訳にはいかないよ。それに親父ならきっとそうする筈だ」
「……すまない、リュカ」

あまり良い思い出は無いにしてもやはり父の故郷であり、そして父がその命を懸けて護った場所。
たとえどの様な理由があったにしても、たとえ魔物が行った事だとしても自分の故郷を滅ぼしたラインハットを救おうとしてくれるリュカにヘンリーは頭を下げ礼を言う。

「取りあえずこれからの事は地上に戻って皆で話をするか」

リュカはそう言うと父の手紙を懐へと仕舞い、部屋を後にする際にふと振り向いて見ると机で何かの作業をしていたパパスがこちらを見て微笑む姿を見た気がした。

「頑張るからな、親父」

そして閉じられた扉が開く事は二度と無かった。




―◇◆◇―

地上に戻ったリュカ達はこれからの事の話し合いをする為に教会へと村人達を集め、ラインハットへと行く事を語った。

「そうじゃな、リュカの言う通りパパス殿ならばラインハットを見捨てる事はしないじゃろうな」

リュカから渡されたパパスが残した手紙を読んだ長老は彼の決断を聞いた後、感慨深げにそう呟いた。

「し、しかし長老!ラインハットはこの村を…」
「落ち着かんか。確かに《彼奴等・きゃつら》はこの村を無慈悲に滅ぼした。じゃが、ラインハットの全てが悪と言う訳でもなかろう」
「「「………」」」

長老の言葉に村人達は押し黙るが、やはり納得がいかないのかその目は険しいままだった。
リュカはそんな彼等を見回すと立ち上がって話し出す。

「俺は何も無条件でラインハットを許すと言っている訳じゃない。それに…」
「それに…、何だリュカ?」

ヘンリーは続きの言葉を言いにくそうにしているリュカの肩に手を置いて軽く頷き、それを見たリュカも頷くと改めて村人達に語る。

「こんな真似が罷り通ると言う事は国王はおそらく無事ではいない筈だ。スラリンが言った様に兵士に擬態した魔物がこの村を襲ったという事はラインハットを影で操っているのは光の教団に間違い無い。つまり……」
「つまり何だよ、リュカ?」
「ラインハットの城下町でもこの村と同じ様に苦しんでいる人達が居るかもしれないと言う事だ」

リュカが其処まで言うと村人達の中にもハッとした表情をする者が多数居た。

「だから俺達は明日にでも出発しようと思う」
「…じゃな。正直に言えばずっとこの村に居て欲しいがリュカにはリュカの目的がある。ワシらの我侭でそれを止めさせる訳にもいかぬな」

長老の言葉に何かを言おうとしていた村人達も思い止まった様に俯いていた。

「リュカ殿!何卒我等の同行をお許し願いたい!」
「うん、ボク達も連れて行ってよ!」
「いや、それはちょっと待って欲しいんだ」

共に連れて行って欲しいと言うピエールとスラリンだが、リュカは何故かそれを断る。

「ええ~~!何でだよ!?」
「リュカ殿…」
「二人には俺達が戻るまでこの村を守っていてもらいたい。そりゃあ二人が来てくれるなら心強いがこの村を無防備にはしたくないんだ」
「あ…」
「すみませぬリュカ殿、その事を忘れておりました」

同行を断るリュカに食い付こうとする二人だが、リュカの村を守って欲しいという要望に村の防衛を失念していた事に気付く。

「ラインハットを光の教団から開放すればこの村も守りやすくなる筈だ。そうしたら一緒に旅に出よう、だからそれまではこの村の事を頼む」
「御意、お任せあれ!」
「うん、任せといてよリュカ!」

必ず迎えに来る、その言葉に二人は頷きそれまで村を守り続けると誓う。




―◇◆◇―

「もうワシから言う事は何も無い。お前ならば必ず成し遂げてくれると信じておるぞ」
「リュカ、そしてヘンリーさん。貴方方に神の御加護を」
「頑張っておくれねリュカ。でも無茶だけはしちゃいけないよ」
「光の教団の奴らなんかぶっ倒してくれ!皆の、パパスさんの敵を取ってくれ!」

翌朝、準備を終えて旅立とうとしているリュカ達を見送る為に村人達は集まり、其々にエールを送っていた。

「皆の武器や防具は俺が鍛え直した物を用意しておいたぞ、頑張ってくれよ」

オラクルベリーから此処までの旅で使っていた武器は少々くたびれていたので武器屋を営んでいた親父がピエール達が倒したさまよう鎧などがもっていた武器などを鍛え直してくれ、シーザーには鉄の爪を作ってやり、ブラウンには以前使っていたおおかなづちに棘などを追加したりして強化していた。

「うん、やはり剣の方が使い易いねヘンリー」
「そうだなリュカ。ありがとう親父さん、助かったぜ」
「けっ!そう思うんだったらさっさと《手前・てめぇ》の国とケリをつけて来やがれ」

そう悪態を吐きながらもヘンリーを見る親父、そして村人達の目には以前の様な悪意は無かった。

「ああ、俺は俺のやるべき事をやって来る」
「じゃあそろそろ行くか」
「リュカ殿、しばしお待ちを」
「どうしたんだい、ピエール?」
「どうぞ之をお持ちください」
「これは…《桜の一枝》」

馬車に乗り込もうとしたリュカをピエールが呼び止め、差し出して来たのは子供の頃ベラにもらった《桜の一枝》と同じ物だった。

「先程、忘れ物が無いかと家に寄って見た所、桜の木から落ちて来たのです。まるで持って行って欲しいと言わんばかりに」
「そうか、なら何かの役に立つのかもしれないな」
「では行ってらっしゃいませ、リュカ殿。サンタローズは私とスラリンが守り抜いて見せます」
「うん、頼んだよピエール」

そう言ってリュカはピエールから《桜の一枝》を受け取り、ラインハットへと旅立った。

まず、向かうのはビアンカの住むアルカパ。


=冒険の書に記録します=



 
 

 
後書き
(`・ω・)武器などは別に原作に拘る必要は無いだろうと色々弄って見ました。
リュカとヘンリーは鋼の剣、シーザーにはこの作品オリジナルの鉄の爪、と言っても牙を爪に変えただけですけど。
ブラウンのおおかなづちは公式ガイドブックに書いていた説明文を流用してみました。 
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