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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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128部分:第十二話 劉備、先祖伝来の宝剣を手放すのことその一


第十二話 劉備、先祖伝来の宝剣を手放すのことその一

           第十二話  劉備、先祖伝来の宝剣を手放すのこと
 赤とピンクの中間色の長い髪にだ。優しい青い目をしている。細い眉も垂れていてそれもまた優しい印象を見る者に与える顔をしている。口元は常に微笑んでいる。
 顔立ち全てが優しくだ。しかも整っている。質素な薄い草色の上着と膝までのスカートを身に着けている。かなり大きな胸が目立つ。
 この少女は今川辺の港町の中にいた。そこで商人達と話をしていた。あまり大きくはない港町であるがそれでも行き交う人はそれなりにいる。
「あの、それじゃあお茶は」
「普通のお茶はあるんだがね」
 商人がこう彼女に返していた。
「そのお茶はちょっとここじゃね」
「そうですか。ないんですか」
「この幽州は最近ね」
 商人は曇った顔で少女に言うのだった。
「あれじゃないか。太守様がいなくて」
「あれっ、いないんですか」
「そうだよ、いないんだよ」
 公孫賛のことは知らないのだった。
「実は」
「そうだったんですか」
「そうなんだよな。青州とかは袁紹様が領主だけれど」
「最近涼州にも出られているそうですね」
「そうそう。四つの州の御領主様なんだよ」
 袁紹のことは知られているのだった。
「ところがね。この幽州は僻地だしねえ」
「そうですよね。異民族もいますし」
「領主様も不在ときた。景気がよくなる筈がないさ」
「困ったことですね」
「袁紹様が来てくれれば有り難いのじゃがな」
 彼女は政治家としては評判がよかった。四つの州を万全にしていることが非常によく知られていた。それで彼女が来ることが望まれていたのだ。
 しかしであった。それについてはこう言われるのだった。
「もっともじゃ。その袁紹様もお忙しくてじゃ」
「幽州はまで、なんですね」
「その通りじゃ。匈奴やら何やらを下に収めたりと大変じゃからな」
「それじゃあ当分は」
「うむ、誰もおらんままじゃ。それでもそこそこ上手くはいっておるがのう」
 やはり公孫賛のことは忘れているのだった。彼女の政治はそれ程悪くはないガだ。それでも完全に忘れられてしまっているのだった。
 しかしだ。少女はここで言うのだった。
「あれ、白々ちゃんは?」
 右手の人差し指を唇に当てて青い目を上にさせての言葉だった。
「何処に行ったのかな。北の方の領主様になったって聞いたけれど」
「まあ今はそのお茶はないのう」
「そうですか」
「黄金茶はな。悪いがじゃ」
 また言う商人だった。
「他のお茶では駄目なのじゃな」
「すいません、どうしてもお母様に飲んでもらいたくて」
「しかしないものはない」
 商人の言葉は変わらない。
「そういうことじゃ」
「わかりました」
 これで話は終わった。少女は商人と別れ港町も後にした。そして暫く山道を歩いているとだった。茶屋を見つけたのでそこに入った。するとだ。
 金髪をリーゼントにさせた黒い目の精悍な男がいた。逞しい身体をしておりオレンジの道着に黒い帯とシャツを着ている。足には下駄がある。
 もう一人は黒い髪を後ろでくくっている彫のある明るい顔の男だ。黒いシャツにオレンジのベスト、それと白いズボンという格好である。彼も逞しい身体をしている。
 最後の一人は長い黒髪を後ろで三つ編みにしている少女だ。青いスパッツに白い道着という格好だ。靴はシューズで黒い目の光が生き生きとしている。
 その三人が茶屋の中でだ。それぞれ餅や団子を食べながら話をしていた。
「それでロバート」
「何や?」
 その彫のある顔の男が金髪の男の言葉に応えていた。
「どないしたんや?」
「どないしたも何もここは何処なんだ?」
「中国らしいな」
「中国か」
「けどお兄ちゃん」
 今度は少女が出て来た。彼女は団子を食べている。
「ここって絶対に現代じゃないよ」
「じゃあ何時なんだ?」
「さあ」
 少女は今の兄の問いには首を捻るだけだった。
「何処なんだろうね」
「わからないか」
「昔なのはわかるけれど」
「そやな。食べ物は今と同じみたいやがな」
 黒髪の男がこれは言った。
 
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