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トシサダ戦国浪漫奇譚

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第一章 天下統一編
  第十八話 到来

 豊臣軍による韮山城攻めから一ヶ月が経過したある日。韮山の地に秀吉の使者がやってきた。使者の訪問で韮山城攻めに参加している武将達全員に召集がかけられた。召集場所は織田信雄の本陣である。
 織田信雄が更迭される日が訪れたか。俺は使者が誰か想像しながら織田信雄の本陣に向かった。
 俺が織田信雄の本陣に足を踏み入れ、使者の姿を確認すると、身体が固まってしまった。

「い……石田治部少輔様」

 石田三成は上座に一人で立っていた。彼の正面には武将達集まり座っている。その最前列には織田信雄と蒲生氏郷が座り、その後ろに残りの武将達が座っていた。俺は一番後ろに座ることにした。一瞬、石田三成と視線が合うが俺は素知らぬ顔をした。石田三成は俺の挙動を気にする様子はなかった。

「関白殿下からのお言葉を伝える」

 俺が腰をかけると石田三成が口を開いた。彼は事務的な口調で、懐から書状を取り出すと、書状の表を俺達に見せた。そこには「上」の達筆な文字が書かれていた。
 石田三成は、恭しい仕草で、両手で書状を持ち直すと書状に一礼した。その後、彼は書状を開いていく。
 織田信雄を筆頭に武将達が平伏する。俺も彼らと同じように平伏した。

「豊臣関白太政大臣秀吉より織田内大臣信雄に命じる。織田内大臣信雄を韮山城攻め総大将の任より解任する」

 秀吉の使者、石田三成、は織田信雄に総大将の解任を伝えた。俺の想像通りだった。
 織田信雄はどんな気持ちで聞いているだろう。平伏したままでは織田信雄の様子は分からない。だが、彼は心穏やかでないだろう。
 織田信雄は考え無しに力任せの城攻めを続けて、城を落とせず、損害だけ出せば総大将を更迭されて当然だ。誰も織田信雄の解任に異議を唱える者達はいない。武将達はようやく織田信雄が総大将から解任されたと安堵しているんじゃないだろうか。

「織田内大臣信雄、蒲生左近衛少将氏郷、細川侍従忠興。右の三名は韮山から陣払いをし、速やかに小田原城攻めに参陣せよ。残りの武将達は韮山城に付け城を建設することを命じる。付け城を建設後は最小の守兵のみを付け城に残し、速やかに小田原城に参陣せよ」

 石田三成は話が終わった。俺が顔を上げると、彼は俺達に書状の中身が見えるように両手で開いていた。確かに秀吉の花押らしきものが見える。

「上使殿、総大将解任の理由をお聞かせいただきたい!」

 織田信雄は石田三成に自分が総大将から解任された理由を問いただした。彼は自分が総大将から解任される理由が分からないようだ。俺は呆れながら織田信雄の後頭部を見た。

「一ヶ月を経過しても未だ韮山城を落城できていない。総大将の解任する理由としては十分だ」

 石田三成は感情の籠もらない顔で織田信雄を見下ろしていた。

「後もう少し。後もう少しだけ猶与をお与えください。必ず韮山城を落として見せます」

 石田三成の淡々とした事務的な態度を気にする余裕は織田信雄には無いようだ。織田信雄は必死に石田三成に頼み込んでいた。だが、石田三成は織田信雄の頼みを意に介す様子は一切ない。石田三成にすれば秀吉の言葉を伝えに来ただけだから、織田信雄が幾ら弁明しようと話を聞くつもりはないのだろう。

「関白殿下は内大臣にお怒りです。兵を悪戯に消耗し一月(ひとつき)経過しても韮山城を落とことができていない。これでは豊臣軍の威光が地に落ちるとお嘆きになられていました」
「だから、もう少し待って欲しいと言っている。必ず韮山城を落としてみせる」

 織田信雄は尚もしつこく石田三成に総大将の解任を保留にして欲しいと食い下がっていた。だが、石田三成は能面のような表情で織田信雄を見下ろしていた。

「では何日あれば韮山城を落とせるのです?」
「一ヶ月。いや十五日あればきっと落とせる」

 織田信雄は慌てながら韮山城を落とす期限を思案し石田三成に告げた。彼の口振りかして口から出任せに違いない。確実に落とせるというならころころと期限が変わる訳がない。石田三成も、織田信雄が虚言を言っていることを理解し、能面のような表情を崩さず織田信雄のことを見下ろしていた。

「約束を守れなければ腹を切ることができますか?」

 石田三成は織田信雄の虚言を聞き終わると間を置かずに恐ろしい条件を織田信雄に告げた。織田信雄は呆けた表情で石田三成の顔を見ていた。彼は石田三成が言った内容を理解できないようだった。彼は内大臣である自分に失敗したら切腹しろと言うなんて思いもしなかったのだろう。俺も流石に石田三成が織田信雄にこんなことを告げるとは思わなかった。多分、秀吉が石田三成に指示したんだろう。石田三成の性格なら織田信雄の頼むを無視して帰りそうだからな。

「十五日で韮山城を落とせなければ、失敗の責任を取って切腹できるかと聞いているのです。内大臣が覚悟を決めておいでならば、関白殿下もお許しになることでしょう。それとも先程言われた言葉は、その場限りの嘘ですか?」

 石田三成は淡々と織田信雄に確認した。織田信雄はようやく石田三成の言っていることを頭で理解したのか顔を紅潮させた。

「治部少輔、先程まで大人しく聞いておればつけあがりおって! 何故私が腹を切らねばならない」

 織田信雄は興奮気味に石田三成を非難した。総大将を解任されたにも関わらず、しつこく地位にしがみつこうとするお前が悪い。俺以外の武将達も織田信雄のことを痛い人を見るような目で見ていた。

「私は関白殿下の上使です。内大臣、私への無礼は関白殿下への無礼。今日の件は関白殿下にご報告させていただきます」

 織田信雄ははっとした顔に変わり石田三成に対して平伏した。

「気が動転してしまい無礼なことを言ってしまいました。無礼をお許しください。何卒お許しください」
「できない相談です。今日の件は必ず関白殿下にお伝えいたします」

 石田三成は織田信雄の頼みをきっぱりと断った。織田信雄は顔を上げると狼狽えた様子で動きを止めていた。
 織田信雄がようやく大人しくなった。全ての武将達が居る中で石田三成から許可を貰っておこう。俺が韮山城攻めを継続する許可の言質を取っておかないと、俺のような小身は後で他の武将達に因縁をつけられかねない。

「上使殿、お頼みしたいことがあります!」

 俺は座ったまま手を上げ大きな声で石田三成に声をかけた。
 石田三成は織田信雄から視線をはずし俺のことを見た。彼は相変わらず俺を無表情のまま見た。

「相模守、何のようだ? 私は忙しい。要件があるならさっさと言え」

 石田三成は数日前に会った時の気さくな様子は全く感じられず、聚楽第で一緒に仕事をしていた頃と同じ様子だった。俺は一瞬同一人物なのかと戸惑ったが気を取り直して石田三成に韮山城攻め継続の許可を貰うことにする。

「上使殿、私に城攻めの機会をお与えください。私ならば一月(ひとつき)で韮山城を落としてごらんにいれて見せましょう」
「関白殿下から伺っている。猶予は一月(ひとつき)。韮山城を落とせなければ切腹してもらう。それで問題ないな」

 石田三成は相変わらず事務的に淡々と俺に韮山城攻めの許可を出した。俺は「問題ありません」と即答した。

「何故だ!? 相模守に許可を出して、何故私には許可を出さない」

 織田信雄が声を荒げ俺を指刺しながら石田三成を非難した。

「許可を出さないとは言っていない。内大臣、韮山城攻めに失敗した場合に責任を取って切腹するというなら許可を出す。だが、あなたは切腹するつもり意思がない。これでは許可を出せる訳がない」

 石田三成はそこで言葉を切り、織田信雄のことを凝視した。その表情は織田信雄と話すことを面倒に感じているように見えた。

「あなたは忘れていないか? あなたには小田原城への参陣命令が出ている。参陣命令を無視し韮山城攻めを続け、それに失敗すれば切腹以外に責任を取る方法はない。相模守は韮山城攻めに失敗すれば潔く切腹すると言っている。あなたはどうなのだ?」

 石田三成は織田信雄の我が儘な要求を理路整然に論破した。織田信雄は言葉につまり沈黙してしまった。

「内大臣、どうされるのだ。韮山城攻めに失敗した場合、あなたは切腹をするのか?」

 石田三成は冷徹な表情で織田信雄を見下ろした。織田信雄は石田三成へ向けた視線を怖ず怖ずと逸らした。

「関白殿下のご命令通りに小田原城に参陣いたします」

 織田信雄は消え入りそうな声で石田三成に答えた。石田三成は視線を武将達に戻す。

「命令は以上である。各自各々の役目を全うせよ。私は直ぐに小田原に戻らせてもらう」

 石田三成は気力を無くした織田信雄を無視して立ち去ろうとした。

「上使殿、待っていただきたい!」

 去ろうする石田三成を止める者がいた。その人物は福島正則だった。今回は蜂須賀家政も加わっていた。どうしたんだ二人とも。二人とも横顔しか見えないが石田三成のことを睨み付けている。

「相模守の韮山城攻めの許可は取り下げていただきたい」
「断る。これは関白殿下と相模守の間で取り交わされたことだ」

 石田三成は福島正則の要求をきっぱりと拒否した。

「相模守は未だ十二で今回の戦が初陣です。正気で言っているのですか?」

 福島正則は厳しい表情を石田三成に向けながらも言葉を選び石田三成を非難した。石田三成は福島正則の非難を気にしている気配はない。それが福島正則の気持ちを逆なでしたのか、福島正則の表情は一層険しくなった。

「相模守が韮山城攻めを継続するにあたり、それに失敗した場合は切腹して責任を取ると言っている。関白殿下も相模守の覚悟に心を動かされ許可を出された。何が問題だ?」

 石田三成は事務的な態度で福島正則に抗弁した。彼の口振りに福島正則の表情に怒りの感情が表れた。彼は拳を強く握りしめる。その所為で彼の拳の肌から血の気が失われ白く変わっていった。

「お前はそれを黙って聞き入れここに来たということか?」

 福島正則の声は怒りで震えていた。彼は上使に対する敬語を使うことを忘れていた。

「佐吉! お前は短い間とはいえ相模守の面倒をみていたのだろう。何故、関白殿下を諌めなかった。相模守は十二だぞ!? お前は正気か!」

 福島正則は劣化の如く怒り声を荒げた。

「市松の言う通りだ。お前には血が流れているのか!」

 蜂須賀家政が福島正則に同調して石田三成を非難した。二人の様子に石田三成は無表情で俺のことを見た。

「相模守、お前は韮山城攻めを単独で攻め落とせと関白殿下から命令されたのか?」
「いいえ、私が願い出ました。ただし関白殿下は大手門を破り砦を一つ落とせば韮山城はもう落ちたようなもの。その後に城攻めに参加したい武将が名乗りでれば、お前の裁量で協力させるか判断すればいいと言われました」

 俺は秀吉との遣り取りを思い出しながら石田三成に答えた。

「福島左衛門尉、相模守の話を聞いただろう。私は相模守と関白殿下の会話を側で全部聞いていた。今の話は全て事前に取り決められた内容だ。内大臣がつつがなく総大将の務めを成し遂げ、韮山城を落としていれば相模守の出番は無かった。関白殿下も内大臣が真逆一月(ひとつき)かけても韮山城を落とせないとは思っていなかったのだろう」

 石田三成は織田信雄を横目で冷徹な視線を送りながら言った。彼の態度と会話の内容を聞いていた織田信雄は身体を怒りで震わせていた。

「その言い方ならば関白殿下は相模守一人に城攻めを命じることは本意でなかったということだな?」

 福島正則は真剣な表情で石田三成に聞き返した。石田三成は感情の籠もらない表情で福島正則のことを見ていたが口を開く。

「関白殿下のご本意ではない。だが、関白殿下は相模守に許可を出された。一度出された許可を取り下げることはない。福島左衛門尉、お前でも理解できるだろう」
「相模守が城攻めをする考えを撤回し、関白殿下にお詫びすれば問題ないことだ。この私も一緒にお詫びする」
「私もだ」

 福島正則と蜂須賀家政が共に俺のために秀吉に謝罪すると言い出した。

「駄目だ。相模守は関白殿下に願い出て関白殿下は許可を出された。私達が口出しすることではない」

 石田三成は福島正則の提案を聞くつもりがないようだ。

「き、貴様が相模守の無謀な計画を黙って見過ごしたことが全ての元凶だろうが!」

 福島正則は石田三成に掴みかかる勢いで前へ進み出るが、周囲にいた武将三人が慌てて福島正則を抑えつけた。だが、福島正則は大人しくなる気配は無く、自分を押さえつける武将達に「放せ!」と怒鳴りつけ暴れ回った。彼を抑える武将達は彼に殴られようと必死に抑えつけていた。

「福島左衛門尉、私が何時失態を犯したというのだ? 私は関白殿下と相模守の話を聞いていただけだ」

 石田三成の事務的な発言に福島正則の表情は一層険しくなり紅潮した。福島正則の表情は鬼の形相だった。
 
「放せ!」

 福島正則は抑える者達を力尽くで払い飛ばし、足を踏みならしながら俺が座る場所までやってきた。俺は福島正則の剣幕にたじろいでしまった。

「相模守、発言を撤回しろ」

 福島正則は、俺の前に乱暴に座り込むと低い声で俺を睨み付けた、俺に城攻めの計画を撤回しろと命令してきた。その表情は肯定の返事しか許さないと顔に書いてた。俺は彼の迫力に心臓を鷲掴みにされるような感覚に陥るが理性でそれを払い除けた。

「撤回しません」

 俺は福島正則のいい知れない圧迫感に抗い自分の意思を伝えることができた。
 ここまできて韮山城攻めを撤回するつもりはない。撤回すれば今まで行った準備が全て無駄になってしまう。俺の家臣達にも顔向けできない。
 福島正則は右手を動かした。その直後に俺は何が起こったか分からなかった。
 俺の左頬に鈍痛が走ったかと思うと、俺は床を転げ回った。気づいた時には後頭部を押さえつけられ床に顔を押しつけれた格好になっていた。
 苦しい。
 息がしづらい。

「相模守、発言を撤回しろ。意地を張るな。私が一緒に関白殿下に詫びてやる。蜂須賀も一緒に詫びてくれると言っている」

 頭の上から福島正則の声が聞こえた。

「嫌です」

 俺は唇を圧迫する床に抗い必死に口を開いた。俺はくぐもった声で福島正則に拒否の言葉を伝えた。その直後、俺の頭を抑える力が更に強まった。

「い痛でいでで」

 あまりの痛みに俺は苦痛の言葉が口から出てしまった。頭だけでなく右肩の辺りから強い痛みを感じる。

「お前は分かっていない! 城を落とせなければ、お前は腹を切らなければならないのだぞ! 死ぬんだぞ! 分かっているのか!」
「必ず城を落とせしてみせます」

 俺が痛みを堪え福島正則に抗弁する。すると頭と右肩の痛みが取れ、また俺の身体が宙に浮く感じがした。俺は首元を掴まれた状態で険しい表情の福島正則の顔と対面することになった。彼は怒っている様子はない。俺を心底心配しているように見えた。俺と福島正則の間には齟齬があるような気がする。だが、福島正則の反応は暴力的であることをおいといて、いたって正しいと思う。真逆、俺が入念に城攻めの準備を整えているとは思いもよらないはずだ。

「お前が勇気と知恵があることは認める。だが、お前は分かっていない。戦場はお前の思うように思う通りにはならない。四万の大軍で韮山城を攻めても落ちなかったんだぞ。それを初陣のお前が落とせる訳がないだろう。今回は諦めろ。逃げることは恥ずかしいことじゃない。生きていればきっと手柄を上げる機会はやってくる」

 福島正則は俺を頭ごなしに叱りつけることは止め、俺を諭すように説得してきた。俺は福島正則の気持ちがよく理解できた。ここまで心配してくれていることに感謝の気持ちで一杯だ。豊臣秀次とは大違いだ。だが、俺は何も考え無しで秀吉と取引した訳じゃない。韮山城を落とす算段は既に整っている。後は実行に移すだけだ。

「三日の内に大手門を落とし江川砦を落としてみせましょう。出来なければ福島様のご忠告に従います」

 俺は福島正則の厳つい顔を真正面から見据えて言った。

「三日だと!?」

 俺の言葉に福島正則は目を見開いた。だが、俺の真剣な表情からいい知れない自信を感じ取ったのか、福島正則の目の雰囲気が変わり首元を掴む手を緩めた。俺は床に向かって激しく尻餅をついた。
 尻を激しく打ち付けたせいで尻が痛い。俺は痛みのあまり尻をさすった。

「三日だと!」

 もう少し優しく降ろしてくれ。俺が心の中でぼやいていると、先程まで大人しくしていた織田信雄が声を荒げ立ち上がった。

「小僧ほざきおったな。私が四万を率いても落とせなかった大手門をお前はたった三日で落とすだと」

 織田信雄は振り返りこめかみをひくつかせながら俺を睨みつけていた。
 俺が三日で韮山城を落とすと言ったことが勘に障ったようだ。俺の物言いは織田信雄に対する皮肉に聞こえたのかもしれない。

「落とせるものなら落としてみろ!」

 織田信雄は興奮しやけっぱちになり俺に怒鳴った。

「小田原でお前が土下座して関白殿下に許しを請う姿を楽しみにしているぞ。蒲生、細川さっさと小田原に向かう準備をはじめるぞ!」

 織田信雄は石田三成に挨拶すること無く、肩をいからせ足を踏みならし本陣を去っていた。彼の後を蒲生氏郷と細川忠興がついていく。
 蒲生氏郷は本陣の入り口付近で足を止めた。細川忠興は蒲生氏郷に遠慮して足を止める。すると蒲生氏郷は振り返り俺の方を見た。

「こそこそと動き回っていると思っていたが上手くやりおったな。相模守、お前は底意地の悪い小僧だ。次は一枚噛ませるんだぞ」

 蒲生氏郷は意味深な笑みを浮かべ口角を上げた。彼はそれだけ言うと足を止めることなく去っていた。細川忠興は蒲生氏郷の言葉の意味が理解できない様子だったが、蒲生氏郷の後を追うように去っていた。

「相模守、仔細は全て話してもらうぞ」

 福島正則は俺に声をかけてきた。彼の隣には蜂須賀家政もいた。二人とも俺が考え無しに韮山城を攻めようとしているんじゃないことは理解したんだろう。その上で俺がどう韮山城を攻めるつもりか確認するつもりなんだろう。この分だと二人は全てを話さないと引き下がらないだろう。
 俺の作戦の全てを話したくないが、二人とも俺が韮山城を落とせると確信できないと、秀吉に詫びを入れさせるために俺を引きずってでも小田原に連行しそうだ。
 それは不味い。
 江川砦を落とした後は福島正則と蜂須賀家政に協力してもらった方が城攻めを進めやすいに違いない。ここは二人に譲歩するしかない。 
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