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【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。

作者:炎の剣製
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0029話『ある提督の忠告』

 
前書き
更新します。 

 


先日の南樺太島での輸送エリアへの物資輸送を完了した最上達輸送連合艦隊は今度は幌筵(パラムシル)泊地までの輸送を行おうとしていた。
そして輸送を開始しようと港に出ていこうとした時に、ふと背後からとある提督が最上達に話しかけてきた。

「君達、少しいいかい…?」
「ん? なんですか…?」

それで最上が代表で前に出て返事を返す。
それでその提督は少し強張った顔をしながらも聞く。

「君たちは、異世界から来たという話は本当なのかい…?」
「そうですが、なんです…? もしかしてこの作戦に参加するのはダメだという事はないですよね…?」
「そうは言っていない。ただ、まだ上層部が君たちの事を…特に戦艦榛名に憑依してしまったという提督の事をまだ信じ切れていないのが現状なんだ」

その提督の発言に最上の後ろで聞いていた摩耶が少し睨みを効かせながら前に出て来て、

「あん? なんだ…? あたし達の提督が信じられないっていうのか?
うちの提督はな! この世界に突然来ちまって元の世界にいる親とか友人とかとももう会えなくなっちまった。
なのに、それを顔に出さないでこの世界で深海棲艦と戦っていくっていう覚悟を決めてんだ。
それがどれだけ苦しい決断か…あんたに分かるってのか?」

そう言って摩耶はその提督に言い切ってそれでも睨みは効かせたままだった。
その摩耶の過激な反応に驚かされたのだろう、その提督はしばし絶句のような表情をしていた。
だけど少しして持ち直したのか頭を下げてきた。

「すまない…決して君たちの提督を侮辱した訳じゃないんだ。
ただ、そう言ったまだ信じ切れていない人たちが中にはいるってことを覚えておいてほしい。
私としては赤の他人の世界なのに一緒に戦ってくれるという榛名提督には好感を持っている。
だから、決して敵だけじゃないって事も覚えておいてくれ」

そう言ってその提督はもう一回頭を下げてその場を離れていった。
それでしばらくして全員が復帰できたのか、

「摩耶の姐御、ありがとうございます。江風、もう少ししてたらキレてたかもしンないから」
「ボクもだよー。司令官を侮辱されたんだと思ったら少し怒りがこみ上げてきていたかもしれないから」

江風と皐月がそう言って上げそうになった拳を下げていた。

「ですが摩耶姉さん。あの提督の方の言っていた事もあながち嘘ではないと思います。
だから司令官さんがこの世界でしっかりとした地盤を築いていくにはまずは結果を出さないといけないんだと思います」
「難しいものですのね…」
「ああ…」

鳥海の分析による言い分で三隈と摩耶は頭を掻きながら唸っていた。

「とにかくこの輸送作戦を終わらせましょうか。こんなところで時間を食ってしまいましたら司令官さんにも悪いですし」
「そうですね! しれぇがこの世界で安心して暮らしていくためにも私達が頑張らないとです!」

綾波と雪風がそう言ってみんなを元気づけていた。

「そうだよね。ね、初月?」
「ああ。信じ切れていないのなら結果を出せばいい事だからな。照月姉さん」
「それじゃ今日も頑張っていきましょう!」
「はい! 大潮、頑張ります!」

照月、初月と続いて最後に阿武隈がそうまとめて大潮もそう答えて全員は幌筵(パラムシル)泊地への輸送を開始するのであった。












…それから道中警戒をしながらも幌筵(パラムシル)泊地へと何度か輸送を完了してその後に待ち受けている敵深海棲艦を倒している時だった。
不知火から聞いたこの世界でのドロップという現象に一行は立ち会っていた。
捕らわれていた艦娘の魂が解放された光が漏れだしてきて次第に人の形を形成していき、そこには白い髪をした小柄な少女が海の上に立っていた。
そして声を出す。

「占守型海防艦一番艦! 占守(しむしゅ)っす!」
「あ、もしかして国後のお姉ちゃん…?」

最上がそう聞く。

「あ、クナの事、知ってるっす?」
「うん。もう保護してあるよ」
「そうっすか! 嬉しいっす! 占守、早くクナに会いたいっす!」
「そっか。それじゃ一回ボク達の鎮守府に帰ろうか。きっと国後も待っているよ」
「はいっす!…あ、でも一つ頼みたいことがあるっすけどいいっす?」
「なに…?」
「うん。ここのエリアにもう一人魂が捕らわれている艦娘がいるっす…できれば彼女も助けてほしいっす…」

それで先ほどまでの明るいテンションが嘘のように占守は落ち込んでいた。
きっと顔見知りだったのだろう。
それで最上は顔を明るくして、

「大丈夫! きっとその子も助けるよ! だから安心して一回帰ろうか。これから占守の暮らすことになるボク達の鎮守府へ…」
「はいっす!」

それで最上達は輸送も完了していたので鎮守府へと帰る事にした。


…そして次の日の事だけど最上達はこのエリアの敵深海棲艦はまず後回しにしてそのもう一人の艦娘の救出を念頭に置いて捜索をしていた。
そして何度か輸送エリアの付近での深海棲艦を倒した時だった。
またしても発光現象が発生してまた魂が解放されたのだろうと思った。
そこにいたのはアイヌ民族の衣装を着ている女の子だった。
その子は目を開けると丁寧におじきをして、

「イアイライケレ。給油艦、神威でございます」
「よかったよ。なんとか助けることができてよかった。…ところでさっきのってどういう意味?」
「ありがとうって意味ですよ。助けてくれて感謝します」
「そっか。それじゃよろしく」

それで神威を連れて鎮守府へと帰るのであった。
そこでは国後が占守に会えて抱き着いている光景があったり、神威とゆかりのある艦娘が話をする光景があって救出できてよかったと提督は思うのであった。









「それで…最上が聞いたっていう話がさっきの事か?」
「うん。まだ提督の事を疑心暗鬼で見ている人が大半以上はいるみたいなんだ」
「そうか…」

それで少し悲しい気持ちになった。
今は人類同士で争っている事態ではないだろうに…。
内輪もめでもしも深海棲艦にその隙を突かれて敗北してしまったら目も当てられない。

「わかった。報告ありがとう最上。明日のエリアのボスを倒す編成にも最上を編成すると思うから頑張ってくれ」
「大丈夫だよ。提督がしっかりとボク達を労わってくれていることは分かるから。だからあまり根詰めないでね」
「すまない…」
「だからもう~…そう言う所が提督の悪い所だよ?」
「あ、そうか…。すま…じゃなくて、そうだな、ありがとう」
「うん。それでいいと思うよ。それじゃもう今日は休ませてもらうね」
「ああ。しっかりと疲労を取っておいてくれ」

それで最上との話を終えて、

「結果を出さないとな…」
《そうですが、さっきも最上さんが言われましたようにあまり考えすぎないでくださいね?
提督の考えていることは分かりませんが無理をしているのはわかりますから》
「ああ、ありがとう榛名」

榛名に励まされながらも執務室の窓から見える夜空の月を見上げた。


 
 

 
後書き
人間関係が少し複雑になってきました。結果と戦果を出さないとですね。

そして占守と神威を仲間にしました。
明日はE3のボスとの話を書きます。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 
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