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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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117部分:第十一話 孔明、世に出るのことその三


第十一話 孔明、世に出るのことその三

「あの方もそれでああなられたのだ」
「大変だったのだな、二人共」
「そういうことだ。しかし袁術殿はだ」
 趙雲はあらためて袁術のことを話した。
「その袁家の嫡流だ。牧の座も袁家の長老達の推薦で自然となった」
「四代に渡って三公を出したその袁家のだな」
「そうだ」
 また関羽に対して答えたのだった。
「将来最も三公の座に近いとまで言われている」
「袁紹殿も曹操殿も三公は無理か」
「少なくとも家柄はない」
 それはないというのだった。
「袁紹殿はその袁家の長老達から見れば傍流だ。曹操殿は朝廷の清流派からは疎まれている」
 どちらも痛い場所があるのだ。それも彼女達にとっては致命的なものだ。
「実力で手に入れるしかない。しかもかなりのだ」
「何かそれを聞くとなのだ」
 張飛の顔がうなだれたものになっていた。
「二人共気の毒なのだ。けれど」
「けれど?」
「あまり仕えたいとは思わないのだ」
 こう言うのだった。
「何か危ういのだ。それが怖いのだ」
「そうだな。曹操殿も袁紹殿も我々には合わないな」
 関羽もそのことは感じ取っていた。
「やはり我々は暫くの間このまま武者修行を続けるべきか」
「見聞を広めるのもいいじゃない」
 舞はあえて気楽に述べた。
「この世界も結構楽しいしね」
「そうだな。仕えるにしろ戦うにしろだ」
 キングもあえて明るく言ってみせた。
「楽しまなければ何にもなりはしない」
「それでその袁術さんですけれど」
 香澄は彼女のことについて問うた。
「袁家の嫡流で苦労知らずなのですか」
「そうだ。結論としてはそうだ」
 まさにその通りだと答える趙雲だった。
「その結果歌や踊りに夢中で政を省みていない」
「それってまずいわよね」
「ええ、そうですよね」
 それを聞いた舞とナコルルがそれぞれ言う。
「もうそれだけでね」
「危ない雰囲気だ」
「曹操殿や袁紹殿はまず政治を見られる」
 それが彼女達である。
「しかし袁術殿はそういったことにしか興味がない」
「ではこの州は危ないな」 
 関羽はここまで聞いてこう述べた。
「まだ幼い方のようだしな」
「どうなるかはわからん」
 趙雲はこう断りもした。
「しかし北の四州や中原の二州に比べると遥かに危うい」
「そうですね、本当に」
 ナコルルがそれに頷いてだった。そうしながら森の中に入った。
 森の中に入るとすぐに霧に包まれる。それはかなり深かった。
「何だこの霧は」
「かなり深いですね」
 馬岱が関羽に対して応える。
「はぐれないようにしないと」
「そうだな・・・・・・むっ!?」
 ここで関羽は足を踏み外してしまった。そのままずり落ちていった。そこは急な坂道だった。ほぼ直角の浅い崖と言ってもいい場所だった。
「愛紗!」
「大丈夫ですか!?」
「あ、ああ」
 霧の中である。何とか関羽の言葉が聞こえた。
「皆気をつけろ。急に坂になっている」
「それで怪我はないですか?」
「いや、それは」
 馬岱の問いにまずは隠そうと思った。しかしそれは言ったその瞬間に左足に感じた鈍い痛みがそれをさせなかった。正直に言った方が仲間達の迷惑にならないと判断したのだ。
「しまった」
「骨折したのだ!?」
「そこまではないと思うが」
 自分のところに下りてきた張飛に対して答える。霧の中でうずくまりながらこらえる顔をしている。
「だが。少しな」
「捻挫してしまったか」
「そうだ」 
 こう趙雲に答える。
 
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