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嫉妬を止めて

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第七章

「それで?ってなるお話でしょ」
「自分のことじゃないから」
「そう、自分のことじゃないのならね」
「お兄ちゃんはお兄ちゃんね」
「そしてお姉ちゃんはお姉ちゃんよ、そうは言っても散々お姉ちゃん自慢してるけれど」
 そうした矛盾はあってもとだ、美優紀は言った。こうしたことは自分でも自覚していたのだ。
「そしてこれ止まらないけれど」
「結局はなのね」
「自分は自分だし」
「考えても仕方ないのね」
「そうよ、結局はね」
「そういうことね、じゃあ私は」
「少なくとも嫉妬することはないわよ」
 他人の兄弟、それに対してだ。
「特にね」
「そういうものね」
「そうよ、というかそんな凄いお兄さんなら」
 美優紀は彩にあらためて言った。
「かえって自慢出来るわよ」
「物凄く強いプロレスラーだから」
「本当にね」  
「そうなのね、よくわかったわ」
 彩もここで遂に頷いた。
「私も」
「そういうことでね」
「ええ、もうこうしたことは言わないわ」
「そうしてね」
「じゃあとりあえずは」
 話が一段落してだ、彩は美優紀にこう言った。
「そのプロレス雑誌見せてくれる?」
「ええ、いいわよ」 
 美優紀は彩の申し出に笑顔で応えた、そして早速制服のポケットからプロレスの週刊誌を出して彩に渡した。
「これね」
「学校に持って来たの」
「たまたまね」
「用意がいいわね」
「お兄さんの記事もあるわよ」
 美優紀は笑ってこうも話した。
「だからその記事もね」
「ええ、読ませてもらうわ」
「そうしてね」
 こうしてだ、彩は兄の記事も読んだ、そこには彼女が今まで知らなかった宏伸の姿があった。
 それで学校の授業と部活の後で家に帰ってだ、玄関でヒンズースクワットをして汗をかいている兄に対してだ。
 只今と言ってだ、そのうえでこうも言った。
「雑誌読んだわよ」
「週刊リングか」
「そう、それね」
「俺の記事あったな」
「インタヴュー受けてたわね」
「緊張したぞ」
 白いジャージ姿でスクワットをしつつだ、宏伸は応えた。汗が滴り落ち足元を濡らしている。 
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