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時代が違えば

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第四章

「何でしたら日本人の方にも行かれて」
「美を語り合ってはというんだね」
「そうされてはどうでしょうか」
「それもいいね、しかし」
「今はですね」
「書こう」
 ワイルドは天使に強い声で言った。
「そうしよう」
「はい、ただ神に変な作品を見せないで下さいね」
「私の美をかい」
「神が怒られますので」
「怒ろうとも私の芸術は至上のものだ」
 ワイルドは生前、入獄前のそれを出した。
「神ですら認める程のものじゃないか」
「ですが神は耽美はお嫌いなので」
「そちらの作品はかい」
「神にはお見せしない様に」
「若し見せればだね」
「はい、またですよ」
 天使はワイルドに眉を曇らせて話した。
「ああなりますから」
「流石にあれは私も堪えた」
 入獄、そして牢獄での生活はというのだ。
「私にとっては地獄だったよ」
「そうなりたくないですね」
「ではだね」
「はい、くれぐれもです」
「ああいう思いは死んでも二度としたくないね」
「もう死んでますし」
 天使はワイルドにこのことも突っ込みを入れた。
「ですがそうならない様に」
「わかったよ、ではね」
「はい、書かれて下さい」
 神にはそうした作品を見せない様にしてとだ、こう言ってだった。天使はワイルドに生前の様に書いてもらった。そしてワイルドも今は寛容な下界を見つつ書いた。その状況を羨ましく思いながら。


時代が違えば   完


                        2017・1・23 
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