最高の妙薬

「飲めばいいさ」
「とにかくだね」
「今は飲むんだ」
「タスカーの中でも」
「塞ぎ込んでいても飲めるなら飲む」
「それもまたロシアだったね」
「そうだよ、徹底的に飲むんだよ」　
　ウォッカ、この強い酒をというのだ。
「そうすればいいさ」
「じゃあお言葉に甘えて」
「飽きるまで飲むんだ」
　こう言いつつアレクセイ自身もだった、酒を飲みはじめた。アレクセイはウォッカをボトル一本完璧に開けてだった。
　イヴァンにもう一本ボトルを差し出してだ、笑って言った。見ればイヴァンも既にウォッカのボトルを一本開けている。
「気が変わったよ、今からね」
「大学に行くのかい」
「そうするよ」
　赤らんだ顔でだ、飲んでいるイヴァンに答えた。
「今からね」
「また急だね」
「酒がそうさせたんだよ」
　笑ってこう言うのだった。
「だからね」
「今からだね」
「多少酔っているけれど」
　実はロシアの基準でも結構以上にだがこのレベルに自分で設定したのだ。
「大丈夫だよ」
「講義を聞けるんだね」
「だからそうしてくるよ」
「それじゃあね、僕はこのままね」
「飲んでいるんだね」
「飲むことは出来ているから」　
　だからだというのだ、実際にグラスを持って口の方に持って来ている。
「このままね」
「それじゃあね」
「今日はとことん飲むよ」
　もうこうするというのだ、そしてだった。
　イヴァンはアレクセイが大学に行って一人になっても飲み続けた、トイレに行く時以外はとことんまで飲んだ。
　家に帰ったアレクセイが見た彼はというと。
「飲んでるね」
「この通りね」
　すっかり酔い潰れろれつの回っていない舌でだ、イヴァンは答えた。
「酔ってるよ、もうね」
「飲めないかい？」
「もうね」
「そうかい、それじゃあこれからどうするんだい？」
「これから？」
「そうさ、夕食はどうするんだい？」
「もういいよ」
　これがイヴァンの返事だった。
「今日はね」
「もう夕食の分はかい」
「飲んで食べたから」
「ああ、そうだね」　
　見ればテーブルの上の干し肉やチーズは全くなくなっていた、黒パンも置いてあったがそれも一切れもなくなっている。
「食べたね」
「そう、だからね」
「夕食もいいんだね」
「うん、ウォッカも飲んだから」
　見ればボトル三本空になっている。アレクセイが飲んだ分はなおしているのでその三本はイヴァンが飲んだものであるのは明らかだった。
「だからね」
「もう寝るのかい」
「ベッドに行くよ」
「かなり酔ってるみたいけれど行けるかい？」
「それ位はね、じゃあね」
　ふらつきながら立ち上がってだ、イヴァンはアレクセイに応えた。