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風魔の小次郎 風魔血風録

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97部分:第九話 夜叉の窮地その七


第九話 夜叉の窮地その七

「白羽陣を。そうして破るか」
「紫炎みたいに火を使うのは得意じゃないがな。それでも俺には俺なりのやり方があるんだよ。この妖水のやり方ってやつがな」
「それが今のか」
「そういうことだよ。わかっているのなら次はどうするんだ?」
「貴様が心配することではない」
 白羽陣を破られても項羽は冷静なままだった。表情を崩すこともなかった。
「羽はそれだけではないのだからな」
「ああ、それもわかってるぜ」
 妖水は余裕の笑みを浮かべつつまた応えてみせた。
「青いのやら赤いのやらな」
「その通りだ」
 実際に今項羽の左手には青と赤の羽根を数枚ずつ持っていた。妖水の言葉通りだった。
「だが。ただそう思わないことだな」
「どっちにしても破ってやる。覚悟しな」
「流石よのう、妖水」
 陽炎は同志の闘いを見ながら目を細めていた。
「この陽炎も奮い立つわ」
「奮い立つか」
「そうだ。言っておいた筈だ」
 既に彼も竜魔と闘っている。彼の木刀に対して右手の扇で防ぐ。それと共に左手に持っている木刀を振るい反撃を加えていた。その身のこなしは竜魔と完全に互角だった。
「夜叉の絆は何よりも強い。同志の勝利こそが我等の喜び」
「それは風魔も同じだが」
「貴様等風魔と同じにするなよ」
 言いながら左手の木刀を一閃させた。竜魔がそれを受けたところで木刀と木刀の衝撃を利用して後ろに跳びそうして。右手の扇を竜魔に向けて放ってきた。
「むっ!」
「流石に今のは防いだか」
 扇を防がれても陽炎は焦っていない。また別の扇を出すだけだった。
「褒めるのはやぶさかではない。流石だと言っておこう」
「中々潔いと言っておこうか」
「そうだな。そう捉えてもいいぞ」
 言いながらニヤリと笑ってきた。闘いを楽しむ笑みだった。
「どちらにしろ貴様はここで倒れるのだからな」
「随分と自信だな」
「今はサイキックを使えるか?」
 陽炎は竜魔に対して問う。
「使えたとしても命に関わるのではないのか」
 言いながら間合いを詰めてきた。足をすすす、と動かし影の様に前に出て来た。
「若しそうだとしてもこの陽炎、サイキックソルジャーとも闘ってきている。貴様のそう」
「死鏡剣か」
「そうだ」
 言いながら木刀で突きを出してきた。それは竜魔に避けられる。
「それも知っている。武蔵から聞いているぞ」
「情報収集は抜かりないということか」
「情報収集に手段を選ぶ趣味はない」
 今度は扇で打ってくる。しかしそれも竜魔に受けられる。
「聞く相手は選ばぬよ」
「それで防ぐことができるのだな」
「要はかからなければいい。いや」
 今度は竜魔が攻撃を浴びせてきた。それを右手の扇で受ける。
「あれはすぐには放てまい。その力を開放しなければならないのだからな」
「それもわかっているというのか」
「放つ余裕は与えぬぞ」
 また攻撃を浴びせる。今度は続けて放つ。
「勝つのは俺だ」
 二人の闘いも激しさを増すばかりだった。その横では項羽と妖水の闘いは睨み合いに入っていた。妖水の酷薄な笑みが浮かび上がっていた。
 
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