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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第三章 X《クロス》
  銀白



空が曇っていく。
日がこれから上りきるという時間に、空を分厚い雲が覆っていく。



この場にいるメンバーの大半は彼を知らない。
知ってる者も、あの最終決戦で「奴」の出したレプリカを見ただけだ。




これが、そうこれが



「良い絶望だ」




本物の、災厄の戦士






「何故あんたが・・・・・」

「忘れたのか?クラウド。私も、翼人と言われる存在だったことを」




セフィロス復活。
しかし、彼は体を失ったはずだ。

今までも何度か復活しているが、今回はなぜ・・・・



「この場にはよい絶望が蔓延している・・・・」




セフィロス

漆黒の翼をもった、かつての翼人。



その翼がつかさどる想いは「絶望」

その力が、この場に彼をこうして復活させたのだ。




「そして、これだ」



そういって、セフィロスが「開翼」した。



「なんだと・・・・!?」



クラウドが驚愕する。


彼はもともと片翼だ。
それを一度クラウドから奪って完全なる翼人になり、そしてクラウドはその両翼ともを奪って漆黒の翼人として覚醒した。

色が同じでも、ひとによって司る感情は異なるので彼が「絶望」でクラウドが「勇気」なのはなんらおかしなことではない。



クラウドが驚愕したのは、彼の開いた翼の色。




それは



「美しいとは思わないか?これが・・・・」




キラキラと光を放つ、白と銀の折り合った




「私の翼だ」




彼らがよく知る、銀白の翼だった。





「バカな!!!」

「そんな・・・ことって!?」



理樹が拳を握り、なのはが崩れ落ちる。

まさか、この翼が再び敵に回ることになるなんて・・・・誰が予想していただろうか?



「人々が希望を胸に抱く時は、いつだ?」



セフィロスが語る。
これこそ自分にふさわしいと、翼を見せびらかすように開きながら。



「それは、絶望に立たされた瞬間。わかるか?この翼は、私にも共鳴することができる・・・・」



とはいえ、扱う感情はやはり絶望でしかない。
セフィロスは消滅し、形骸化した「彼」の翼を、こういった形で奪ったのだ。




「絶望したか?」

「・・・貴様・・・・!!!」




「あの時果たせなかった約束を果たそう・・・・」




フッ・・・・ザッッ!!




「!?」

「ッッ!!!」




セフィロスが小さくそういうと、瞬間その姿が消え、クラウドの背後のメンバーのど真ん中に出現した。


「速・・・・」

「お前の大切なものを奪いに来た」




そして、破壊が振るわれた。







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ギンギン!ガァン!!


「グア!!」

「うぐっ!?」



セフィロスの振るう剣をキバエンペラーフォームとヴィータが受けていく。

しかし、二合打ち合っただけでその武器が弾き落とされて身体を切り裂かれていった。



崩れ落ちる二人。
今すぐにではないものの、放っておけば命が危ない。



と、そこにシグナムが切り掛かって行き、そのあとに続いてセイバーも向っていった。



が、攻めていたのは最初の一打ちのみ。
そのあとはすべて防戦一方だ。


「こちらは二人掛かりだぞ!?」

「こいつ・・・剣の英霊である私よりもッ・・・!!」


「フッ・・・・ン!!!」



セフィロスが思い切り剣を振るうと、斬撃が飛び放たれて二人を直撃した。
二人はそれを受けようとするが、触れた瞬間に体ごと吹き飛ばされて地面をえぐる。




「やめろ!!」




と、そこにクラウドが駆け込んでセフィロスの前に立ちふさがる。

しかし、クラウドの剣を撃ちあうこともなく、その大きな面を蹴りあげてセフィロスは彼を相手にすることもなく次々にメンバーへと切り掛かって行った。



刀が振るわれ、そこから炎と電撃が噴き出て五、六人が吹き飛んだ。



何も、特殊なものではない。
ただ単純に、強力な攻撃であるということ。



今や少女たちはその長刀にはめこまれている、マテリアの中に封じ込められていた。



その力を猛然と振るい、今や両翼の旧英雄は、その場にいたメンバーの七割を削り取っていた。





「ディバイン!!」

「トライデント!!」


「バスタァー!」「スマッシャァーー!!」




桜色と金色の、二色の砲撃がセフィロスへと放たれ、大気との摩擦熱で炎を上げながら彼女らの杖から放出される。


それを見ることもなくセフィロスは背後から迫るバスターを真っ二つに切り裂き、スマッシャーの外側二本を相殺させ、最期の金色は召喚したモンスターを盾にして防いだ。

そのモンスターの鎧は爆発によって四方に散り、ほかのメンバーを叩いていく。




しかし、それでも臆すること無く夜天の主がその頭上に膨大なる質量の魔力を叩き落としてきた。

十年来の友人同士だからこその連携攻撃。



だが、直後その場からセフィロスは消え、はやてを真下の地上から吹き上がった火柱が襲った。




気づくとセフィロスは一刀の前に立ち、激しい剣撃を繰り返していた。

セフィロスの一撃に一刀の剣は次々と弾き飛ばされ、しかし一刀の手の中には次々と剣が現れそれを以って応戦していく。

しかし


「こっちが出してんのは剣だけじゃないってのに・・・!!」

「ほう・・・武器だけでなく能力までも写し取る、か」



そのすべてが、セフィロスにとっては初見であるであろうにもかかわらず見切られ、回避、弾かれていってしまう。


そう言った攻防で固まってしまったのか、一刀はそこで剣を手放すべきだったのを、握りしめて受けてしまったために剣を弾き飛ばされてしまうだけでなく腕まで跳ね上がってしまった。
胴体が無防備にさらされる。



そこにセフィロスの手のひらが「そっ」と当てられ、そこから電撃の槍が噴き出そうと爆ぜはじめた。



「させるか!!」



と、直後セフィロスの手と一刀の腹の間に、理樹のバリアが入り込んで、その電撃を見事に防いだ。

だがその衝撃はどうしても通してしまい、一刀の体が後方に吹き飛び、腹の部分の服が吹き飛び身体が地面を抉り飛ばした。




「・・・・ほう」



だがセフィロスは防がれたというのに、全く悔しがることもなくむしろ面白いものを見たといった顔をして理樹へと向かう。

が、理樹のバリアにはさしものセフィロスの刃も通らない・・・というわけでもなく、しかし少し食い込んだところで止まっていく。


しかも理樹のバリアは即座に元に戻すことができるし、流動させればさらにその性能は上がっていくのだ。



それを知りつつ、セフィロスはどんどん切り込んでいく。
さして効いていないというにもかかわらず、まるで敵を嬲るかのように。



そこに、クラウドが追い付いてくる。
セフィロスの腕を切り落とそうと、理樹のバリアに伸びる腕に大剣を振り下ろすクラウド。


だが、セフィロスは長刀から片手を放し、あろうことかその大剣の刃側を掴んでそれを止めた。



「な・・・に・・・・!?」


そして、その剣を投げ飛ばすセフィロス。
クラウドは体を持って行かれて、この場から離されてはまずいと思ったのか、とっさに剣を放してその場から飛ばされるのを防ぐ。


剣を手放してしまうものの、セフィロスの腹に蹴りを入れて理樹から離し、その手に理樹がバリアでの剣を作り出して握らせた。



理樹のバリアに魔晄の力が充満していき、さらに開翼までしてクラウドがセフィロスに切りかかって行った。



大きく振り上げて叩きつけ、セフィロスがそれを軽く体を逸らして回避、踏み台にして今度はこちらがクラウドの上から斬りかかって行った。


それをクラウドは手を放し、後ろから飛んできた理樹のさらなる剣を見ずにつかんでそのセフィロスの剣を受け止めた。



「クラウドさん!!」



と、そこにクラウドの剣を拾ってきたエリオがそれを投げ、もう片方の手に合体剣が戻ってきた。
理樹の剣を放し、即座に両手でそれを構えるクラウド。

しかしそうしている間に、またセフィロスはクラウドよりもエリオに狙いを定めていた。



「クッ!!!」



それを見、エリオが迫るセフィロスの剣をストラーダで受けようとするが、ゾン!!という音と共に受け止めたはずのストラーダが真っ二つに切り裂かれてその胸から血が吹きでる。

その状況にアギト、ファイズが最強フォームに姿を変えて助太刀し、その間に龍騎がドラクランザーでエリオを回収し瞬風に運んで行った。




「やめろ!!」



その背にクラウドが叫び、セフィロスに向かって突っ込んでいった。


それにセフィロス派が応戦して答える。



「「大切じゃないものなんてない」・・・か。ならばお前は、すべてを守りきることができるのか?クラウド」

「なに?」


「これも」

斬ッ

「グオッ!?」




「これも」

ザシッ

「オゥあっ!!」




「すべてお前にとっては大切な「仲間」なのだろう?守ってやれもしないくせに、よくも大きなことを言ったものだ」

「ッッ!!」




傷つく仲間
護れない自分



大切じゃないものなんてない




そうだ。確かにそうだ。
その思いにいまだ変わりはない。



しかし・・・・



今の自分に、それを守ることは出来ていない。




また失うのか。





また、何もできずに?






「そんなことはない・・・・!!」




ギィン!!




クラウドが漆黒の翼を大きく広げる。
そこにチロチロと赤い光の粒子が集まっていく。


しかし、クラウドはすでに一回感情の集束を行っている。


今からそれを行っても、集まるものはなく、ただ力を消費するだけだ。
いうなれば、何も落ちていないのに掃除機を回しているようなもの。エネルギーを消費するだけだ。


だが、それでも彼は止まらない。


「見ろ・・・あんたはやっぱり何もわかっていない」


翼を開き、クラウドが腕をかざしてみんなを表す。
セフィロスの視線が、周囲に向いた。




倒れているもの
膝をついているもの
誰かを抱えるもの



その場にいるものはすべて、もう疲労困憊もいいところだ。



しかし、それでもその目は真っ直ぐにセフィロスを睨み付けていた。





クラウドは何も優秀な戦士ではなかった。



意気込んで村を出て、しかし大した戦士にもなれないでいた、ただの一介の兵士だった。
ただ、ある悲劇に巻き込まれてその身体を力魔洸漬けにされてここまで跳ね上げられただけだ。



そして記憶を失い、戦い、旅の過程で取戻し、それでも戦い続けていただけの男。



本来の彼は打たれ弱い、ただの青年でしかない。



そんな彼が、どうして星を救い、さらにはここまで戦い抜くことができたのか。




「大切じゃないものなんてない・・・・そして、俺の大切なものは・・・・・」




目の前にいる最強の英雄は、守ることを放棄し、攻め滅ぼすことを考えている。

守ることに苦悩したことがない。



自分の存在には悩み苦しんだ彼だが、それしかない。




彼の人生にはそれしかない。


しかし、こちらの戦士は違う。



自身の存在に悩み
護れなかったことを悔やみ
立ち上がることに苦悩し

そして剣を握ることに躊躇いを持って




そして覚悟してそれらを乗り越えてきたのだ。



英雄の乗り越えた階段は一段。
戦士の乗り越えた段数はそれ以上。


どちらが高みにいるかは、一目瞭然。



目の前の敵を倒し、撃ち破るだけなら英雄だ。

しかし、目の前の苦悩を乗り越え、そして苦しみの中を戦い帰還してきた戦士を




――――人は、それに敬意をこめて“英雄(ヒーロー)”と呼ぶ。




「オレの大切なものは、そう簡単に壊れはしない・・・・!!!!」




胸に手を当て、握りしめ、彼に赤き粒子が流れ込む。


チロチロと
ザラザラと


そして、一斉に流れ始めてきた。



「この量は・・・・!」



「・・・・あんたに見せてやる。立ち向かうということの、真の意味を・・・・!!!」






漆黒、立つ






乗り越え、さらなるものを求めるために





to be continued
 
 

 
後書き

こうして復活したセフィロス
そして背に映えるはあの銀白でした!


蒔風
「盗られた!?」


あの翼は蒔風の物である以上「希望の翼」です。

それに彼は劇中で言ったように絶望を以って干渉し、その翼をみごと奪ったわけです。


しかしまぁ・・・次回でセフィロスさんやれそうですけどね!!wwww



第三章の一つ目の事件は、そろそろ終息を迎えます。



ではまた次回

 
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