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英雄伝説~灰の軌跡~

作者:sorano
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外伝~運命が改変された主従の少女達の邂逅~

同日、17:00――――



表彰式の後リフィアの専属侍女長としてリフィアの夕食の準備をしていたエリゼだったが、通信でリフィアからある指示が来た為その指示をこなす為にある部屋を訪れていた。



~モルテニア・貴賓室~



「――――アルフィン皇女殿下、入室させて頂いてもよろしいでしょうか?」

「は、はい。―――どうぞ。」

「―――失礼します。」

部屋の主――――パンダグリュエル制圧作戦にてリィン達に捕縛された後モルテニアの貴賓室に待機させられていたアルフィン皇女からの入室の許可を聞いたエリゼは部屋に入った。

「あ、貴女はリィンさん達と一緒にいた……」

部屋に入室してきたエリゼを見たアルフィン皇女は目を丸くしてエリゼを見つめ

「ご挨拶が遅れて申し訳ございません。――――私の名はエリゼ・シュバルツァー。若輩の身ではありますがリフィア皇女殿下御付きの専属侍女長を務めさせて頂いています。」

「え……”シュバルツァー”という事は貴女もリィンさんと同じテオおじさま達の……」

エリゼの自己紹介を聞いてある事に気づいたアルフィン皇女は驚きの表情でエリゼを見つめた。

「―――はい。私は”シュバルツァー男爵家”の長女でリィン兄様は私の義兄です。パンダグリュエルでの殿下に対する数々のご無礼、誠に申し訳ございませんでした。」

「い、いえ……貴女はメンフィル帝国に仕えている方として当然の事をしただけですから、わたくしは気にしておりませんわ。それに謝罪するのはわたくしの方です。――――申し訳ございませんでした!わたくしがテオおじさま達を頼ったばかりにユミルが襲撃され、テオおじさま達は負傷なされてしまったのですから……」

エリゼに謝罪されたアルフィン皇女は気にしていない事を伝えた後逆にエリゼに謝罪をする為に頭を下げた。



「パンダグリュエルで兄様が殿下にお伝えしたように、私も兄様や父様達同様ユミルの件で殿下を非難するつもりは一切ございません。ですから、どうか頭をお上げ下さい。」

「……寛大なお心遣い、心から感謝致しますわ。それで……わたくしに何か御用でしょうか?」

「はい。リウイ陛下達より命じられたアルフィン殿下の”今後”についてお伝えする為に、この場に伺わせて頂きました。」

「!そう……ですか。……わたくしはこれからどうなるのでしょうか?」

エリゼの訪問の理由を知ったアルフィン皇女は不安そうな表情でエリゼに問いかけた。

「まず殿下は早ければ今夜、遅ければ3日後―――12月9日にリベール王国のグランセル城に移送する予定となっております。」

「え………グ、グランセル城―――リベール王国にですか?何故そんな事になったのでしょうか……?」

エリゼの口から出た予想外の答えを聞いたアルフィン皇女は困惑の表情でエリゼに問いかけた。

「今夜リウイ陛下はアリシア女王陛下達に両帝国間の戦争の和解調印の場を提供並びにリベール王国の代表者の和解調印の立ち合いに応じて頂く交渉に向かう為にリベール王国のグランセル城を緊急訪問をする予定となっております。」

「ええっ!?そ、その……メンフィル帝国が我が国との戦争を開戦してから、それ程経っていませんわよね……?ユミルの件で戦争を仕掛ける程我が国に対して相当な怒りを抱いていたメンフィル帝国が何故、自ら和解を申し出てくれたのでしょうか……?」

「それは――――」

自分の説明に驚いているアルフィン皇女にエリゼはメンフィル帝国がエレボニア帝国との和解をしようとしている事情――――メンフィル・エレボニア戦争で活躍をしたリィンがリウイ達に表彰された際、”褒美”として両帝国の和解を望み、メンフィル帝国がその望みに応える為に和解に向けて動いている事を説明した。



「リィンさんが……………―――!もしかして戦争に参加し、アルバレア公やルーファスさんを討った本当の理由はメンフィル帝国とエレボニア帝国の戦争を和解へと導く為に………?」

事情を聞き終えたアルフィン皇女は驚きの表情で呟いた後ある事に気づき、エリゼに確認した。

「―――はい。エレボニア帝国を占領するつもりでいたメンフィル帝国の意志を変える為には相応の手柄が必要となりますので。」

「そうだったのですか……………わたくし―――いえ、エレボニア帝国はわたくしをユミルで匿って頂いた件も含めてシュバルツァー家から一生をかけても返しきれぬ恩を受けたのですね………本当にありがとうございます。どうかリィンさんにも両帝国の戦争を和解へと導いて頂いた事、わたくしは心より感謝している事をお伝えして下さい。」

エリゼの答えを聞いたアルフィン皇女は複雑そうな表情をしたがすぐに気を取り直してエリゼを見つめて頭を下げた。

「………殿下のお言葉、必ず兄様に伝えておきます。……ただ、メンフィル帝国はエレボニア帝国に対して”和解条件”としてエレボニア帝国の領土をメンフィル帝国に贈与させる事等様々な条件を要求するとの事ですから、その点については調印式が始まる前に心構えをしておいた方がよろしいかと思われます。」

「そ、それは…………あ、あの………エリゼさんの口ぶりですと、わたくしが両帝国の和解の調印式に参加して和解条約書に調印するように聞こえるのですが………」

エリゼの忠告に不安そうな表情をしたアルフィン皇女はある事が気になり、エリゼに訊ねた。

「殿下の推察の通り、アルフィン皇女殿下には現在も貴族連合軍に幽閉されているユーゲント皇帝陛下の”代理人”として調印式に参加し、メンフィル帝国の代表者であるシルヴァン皇帝陛下と和解の交渉をして頂き、そして和解条約書に調印して頂きます。」

「わ、わたくしがお父様の代わりに……………………………そ、その……オリヴァルトお兄様ではダメなのでしょうか……?わたくしはまだ公式の交渉の場に参加した事がない未熟者ですが、お兄様は既に”西ゼムリア通商会議”に参加したのですから、そう言った交渉事はわたくしよりもお兄様の方が適任かと思われます。」

エリゼの説明を聞いたアルフィン皇女は表情を青褪めさせて身体を震わせた後少しの間考え込み、エリゼに意見をした。



「……オリヴァルト皇子殿下に対して失礼な言い方になり申し訳ございませんが、オリヴァルト殿下とアルフィン殿下には決定的な”違い”がありますから、メンフィル帝国はオリヴァルト殿下をエレボニア帝国の”代表者”――――”ユーゲント皇帝陛下の代理人”として認める事ができないのです。」

「え………その”違い”とは何なのですか?」

エリゼの指摘を聞いたアルフィン皇女は呆けた表情でエリゼに問いかけた。

「――――”帝位継承権”の有無です。」

「!!」

そしてエリゼの答えを聞いたアルフィン皇女は目を見開き

「アルフィン殿下はユーゲント皇帝陛下と陛下の正妃―――プリシラ皇妃殿下のご息女である為”帝位継承権”―――つまり、”ユーゲント皇帝陛下の身に何かあった際、エレボニア皇帝に即位できる権利”がある為”エレボニア帝国の代表者”としての資格はございます。対してオリヴァルト殿下は…………」

「はい………お兄様は”庶子”なので”帝位継承権”が存在しない為、メンフィル帝国はお兄様を”エレボニア帝国の代表者”として認めて頂けないのですね…………」

エリゼの説明に続くように答えを口にした後辛そうな表情をした。

「それともう一つ。幾ら和解を申し出たのがメンフィル帝国とは言え、メンフィル帝国が今まで戦争をしていた相手であるエレボニア帝国の都合にあわせる”義理”はございません。その為リウイ陛下達―――メンフィル帝国は和解の件でオリヴァルト殿下に連絡するつもりはないとの事です。――――今までお辛い目に遭い続けていた殿下に更にお辛い事を突き付けてしまい、誠に申し訳ございません。」

「いえ………エリゼさん―――メンフィル帝国の仰っている事に間違っている事はございませんし、元をたどれば戦争勃発の原因の一つはわたくしなのですから、わたくし自身が責任を取って、貴族連合軍によって幽閉されているお父様の代わりにメンフィル帝国との和解交渉に挑む”義務”があるのも事実です。ですから、どうかお気になさらないでください。」

エリゼに謝罪されたアルフィン皇女は決意の表情になって答えた。

「………寛大なお心遣い、心から感謝致します。――――話を戻しますがリウイ陛下達はアリシア女王陛下達に和解の件の依頼に加えて和解交渉並びに調印が始まるまでの期間はリベール王国でアルフィン殿下を保護して頂く事も提案し、リベール王国がその提案を受け入れた際はアルフィン殿下をリベール王国にお預けする予定となっております。」

「え……何故わたくしをリベール王国に保護して頂く提案をしてくださるのでしょうか?」

エリゼの説明を聞いたアルフィン皇女は戸惑いの表情で訊ねた。



「皇族や貴族に対する待遇で過ごしてもらっているとはいえ、アルフィン殿下は現在メンフィル帝国の”捕虜”です。その状況のままで殿下が和解条約に調印すれば、メンフィルが調印の日までにアルフィン殿下に危害を加えたり、脅迫等で調印させたと邪推するエレボニアを含めた勢力が現れる可能性が考えられるのでその可能性を防ぐ為です。」

「あ…………わかりましたわ。わたくしがリベールに保護して頂けるかどうかはいつ頃わかるのでしょうか?」

そしてエリゼの答えを聞いたアルフィン皇女は呆けた後静かな表情で頷いてエリゼに問いかけた。

「緊急訪問をするリウイ陛下達に対するリベールの対応や返事次第になる為、明言はできませんが………早ければ今夜中にリベール王国に殿下を移送する事も考えられます。」

「そうですか………多忙中の所わたくしの”今後”についてお伝えしてくれた事、心より感謝致しますわ。」

「恐縮です。それと殿下をリベールに移送するまでの間は私が殿下の臨時の侍女としてお世話をさせて頂く事になっておりますので、何かございましたら遠慮なく私に用事をお申し付け下さい。」

「エリゼさんがわたくしの…………でしたら早速で申し訳ないのですが、お願いしたい事があるのですがよろしいでしょうか……?」

エリゼが自分の臨時の侍女である事に目を丸くしたアルフィン皇女はエリゼを見つめてある事を頼もうとした。

「構いません。何なりと仰って下さい。」

「ありがとうございます。では遠慮なく………コホン。少しの間で構いませんので、わたくしとお話をして下さいませんか?テオおじさま達からおじさま達のご子息達――――エリゼさん達の話を聞いた時から、機会があればエリゼさん達ともお話をしたいと思っておりましたので………」

「………かしこまりました。若輩の身ではありますが、殿下のお話のお相手を務めさせていただきます。」

アルフィン皇女の早速の頼み事に一瞬目を丸くしたエリゼだったがすぐに静かな笑みを浮かべて会釈をした後アルフィン皇女の話し相手を始めた。



~同時刻・カイエン公爵家専用艦~



同じ頃貴族連合軍のトップである”主宰”のカイエン公爵は”帝国解放戦線”のリーダーであり、かつて”Ⅶ組”のクラスメイトでもあったクロウ・アームブラストとクロチルダと共にパンダグリュエルから撤退したデュバリィからの凶報を聞いていた。

「パンダグリュエルがメンフィルに占領され、ルーファス君が討たれ、挙句の果てには皇女殿下まで奪われておきながら、自分だけおめおめと逃げ帰っただと!?この役立たずが!」

「………………ッ………!」

カイエン公爵に怒鳴られたデュバリィは反論が見つからず、悔しそうな表情で唇を噛みしめ

「パンダグリュエルには”怪盗紳士”と”劫炎”もいたはずよ!貴女だけ撤退したという事はまさかあの二人まで………!」

「…………はい。私達が対峙した”殲滅天使”の話によると二人ともメンフィルの使い手達に討たれたとの事ですわ。」

「う、嘘でしょう!?あのアリアンロードと互角と言われていた”劫炎”まで討たれたなんて……!一体誰があの二人を討ち取ったの!?」

自身の推測を重々しい様子を纏って答えたデュバリィの答えを聞いたクロチルダは血相を変えて声を上げた後信じられない表情でデュバリィに問いかけた。

「No.ⅩはNo.Ⅱ――――”剣帝”も加わったメンフィルの使い手達に、No.Ⅰは”英雄王”にそれぞれ討たれたとの事ですわ……」

「!!そ、そんな………あの二人を失い、”劫炎”を除けば間違いなく”執行者最強”の使い手であるレオンに加えて”英雄王”とまで戦う事になるなんて、どうすればいいのよ………」

デュバリィの報告を聞いて目を見開いたクロチルダは表情を青褪めさせて身体を震わせ

「……ヴァルカンとスカーレットもパンダグリュエルにいたはずだ。あの二人も戻って来ていないという事はまさか……っ!」

一方ある事が気になっていたクロウは厳しい表情でデュバリィに問いかけた。

「……ええ。あの二人も”殲滅天使”率いるメンフィル軍の部隊に討たれましたわ………」

「!!ヴァルカン………スカーレット………畜生―――――ッ!」

そしてデュバリィの答えを聞いたクロウはレン達に討たれた二人の顔を思い浮かべた後悔しそうな表情で声を上げた。



「おのれえええええええッ!薄汚い侵略者共が――――――ッ!貴様らから受けたこの屈辱は必ず倍にして返してくれる!」

「冷静になってください、閣下!私達はまだ正規軍も制圧しきれていない状況である事に加えて”総参謀”のルーファス卿まで失った状況で、メンフィル帝国―――他国との戦争をする余裕はありません!」

怒りの表情で声を上げたカイエン公爵の様子を見たクロチルダはカイエン公爵を宥めようとしたが

「黙れっ!パンダグリュエルや皇女殿下が奪われたのも、ルーファス君が死んだのも全て貴様ら”裏の協力者”共の無能さが招いた事!今回の失態の責任を取ってもらう為にも貴様らにも当然メンフィルとの戦争に手を貸してもらうぞ!」

「な――――私達”裏の協力者”は内戦の”裏側”を担当する存在で、”表側”――――軍と真正面でぶつかり合って戦う存在ではないと最初に約束したはずです!」

カイエン公爵は聞く耳を持たず、クロチルダ達にもメンフィルとの戦争に手を貸すように命令し、カイエン公爵の命令を聞いたクロチルダは絶句した後すぐに立ち直って反論をした。

「貴様……っ!ならばすぐに”緋き絶望”を呼び起こせ!アレさえあれば、メンフィルもすぐに滅ぼせる!貴様ら結社の”幻焔計画”とやらには”緋き絶望”が必要であるのだろう!?」

「確かに”幻焔計画”に”緋き絶望”を呼び起こす事も含まれていますが、今はその時期ではありません!”緋き絶望”を呼び起こす時期もこちらに任せて頂く事も最初に約束したはずです!」

「ふざけるな!肝心な時に役に立たない所か、こちらに甚大な被害をもたらしておきながらその責任も取らないつもりか!?”緋き絶望”をすぐに呼び起こせないのならば、”結社”に応援を頼んで、新たな”執行者”や”使徒”とやらをこちらに回してもらうように手配しろ!」

「そんな簡単に言いますけど、”使徒”もそうですが他の”執行者”達もそれぞれの”使命”があり――――」

カイエン公爵の要請にクロチルダが反論しかけたその時

「……”表”だとか”裏”だとか、そんな事はどうでもいい。肝心な事はメンフィルも俺達の明確な”敵”になって、俺達は正規軍だけでなくメンフィルにも勝つ必要がある。――ただ、それだけだろうが。」

「私も貴方と同じ意見ですわ。今回メンフィルから受けた屈辱、倍にして返さないとマスター率いる”鉄機隊”の”筆頭隊士”として失格ですわ!」

「クロウ………デュバリィ………」

クロウがクロチルダに指摘し、クロウの意見に頷いたデュバリィは決意の表情で自分もメンフィルと戦う意志をクロチルダに伝え、二人の様子を見たクロチルダは言葉を失った。



「その二人の言う通りだ!ルーファス君を奪い、パンダグリュエルと皇女殿下まで奪った薄汚い侵略者共に必ずや私達の怒りの鉄槌を下してくれるっ!」

「ヴァルカン……スカーレット……お前達の無念、必ず晴らしてやるからな……っ!――――待っていろ、異世界の侵略者共!テメェらも纏めて”鉄血”がいる地獄に送ってやる!部外者共が俺達の事情に土足で足に突っ込んだ上俺の仲間達を奪った事、絶対に許さねぇ――――――ッ!!」

そしてカイエン公爵とクロウはそれぞれ憎しみの表情になって、メンフィル帝国と戦う決意を口にした―――――――






 
 

 
後書き
この話でようやくクロウが登場しました……が、既にリィンとは別の意味でフラグを建てまくっています(黒笑)本編や運命の件を考えたら結果はどうなるかわかりきっているでしょう?(大爆笑)このルートでは光と闇の軌跡本編ではクロウと戦わなかった(戦うどころか知り合ってすらいないw)リィン達がクロウとも戦う話は当然ありますので、その時までお待ちください 
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