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風魔の小次郎 風魔血風録

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88部分:第八話 聖剣伝説その十一


第八話 聖剣伝説その十一

「・・・・・・何かあったな」
「その通りだ、武蔵」
 その忍は武蔵に対して静かに答えた。武蔵も既にそれを察している。
「すぐに誠士館に戻れ」
「誠士館に!?」
「風魔の者達が向かっている」
 こう武蔵に告げるのだった。
「壬生と共に一旦戻れ。風魔九忍のうちここにいない者達が急襲するつもりのようだ」
「そうか。俺達がここを攻めている間にか」
 武蔵はその報告を聞いて全てを察した。
「すぐに動いたか。風魔も愚かではないな」
「今陽炎と妖水は誠士館を離れている」
 壬生はこのことを武蔵に対して告げた。
「私達しかいない。姉上に何かあれば」
「そうだな。下がるしかないか」
「無念だがな。しかしこの者達の首は何時でも取ることができる」 
 壬生は己の手にある黄金剣を見つつ言う。絶対の自信を手に入れたいたのだ。
「だからだ。ここは」
「わかった。致し方あるまい」
「小次郎」
 壬生は武蔵の了承を受けてから小次郎に対して激しい憎悪を露わにさせた目を向けて言ってきた。
「今回の勝負は預けておく。だが次はこうはいかぬぞ」
「わかってるぜ。今度は容赦しねえ」
 小次郎もまた壬生のその憎悪を受け止めて言葉を返す。
「この風林火山で壬生、手前を叩き潰してやるからな」
「できるものならな」 
 自分に向かって突き出されたその豪剣も見ていた。
「やってみるがいい」
「では壬生よ」
「うむ」
「下がろう、今はな」
「わかった。小次郎」
 壬生は武蔵の言葉に頷いたうえで小次郎に顔を向けて言ってきた。
「次に会った時が貴様の最期だ」
「それはこっちの台詞だ!」
 小次郎はこう壬生に返す。彼はまだ闘争心を失ってはいなかった。
「覚えてろよ、そっちこそな!」
「ではまた会おう」
「風魔の忍達、次こそは」
 二人はこう言い残して姿を消した。その直後竜魔は倒れ小次郎と蘭子が駆け寄る。彼はすぐに部屋に寝かされた。そのうえで戻って来た風魔の面々が彼を看病しながら蘭子に説明した。
「つまりだ」
「ああ」
 劉鵬と霧風が主に蘭子に説明する。蘭子も冷静に二人の話を聞いていた。
「竜魔はその鞍馬忍群との戦いで負傷した俺と霧風を逃がす為に」
「一人戦場に残って戦った」
「それで左目を失ったんだな」
「そうだ。だがそれにより超能力が覚醒した」
 劉鵬は言う。周りには風魔の面々が控えている。
「左目を失ったことでな」
「しかしだ」
 だが蘭子はここで言う。
「あの時竜魔の左目は光った」
 そのことを言うのだった。
「あれはどうしてだ。見えているのか」
「見えているとも言えるし見えていないとも言える」
 霧風はその問いに対してこう述べた。
「今の竜魔の左目はな」
「!?それはどういうことだ」
 蘭子は今の霧風の言葉に眉を顰めさせた。
「見えているのに見えていないだと」
「普段は見えないのだ」
 霧風はそれに応えて言う。
「しかし眼帯を外し超能力を発動させた時」
「見えるというのか」
「そうだ。しかしだ」
 今度は劉鵬が述べた。
「超能力の発動はかなりの気力と体力を消耗する」
「そうなのか」
 蘭子はその話を聞いてあることに気付いた。
「それでか。今の竜魔は」
「そうだ。そのせいでだ」
 劉鵬は今の蘭子の言葉に頷く。
「幸い今は命に別状はないがそれでも」
「力を使い過ぎればだな」
「そういうことになる」
 霧風も言った。
「暫く動くことはできない、どちらにしてもな」
「何故そこまでする」
 蘭子は話を聞き終えてから彼等に問うた。
「竜魔は。命をかけてまで」
「主の為には命を賭けて戦う」
 霧風の言葉だ。
「それが我等忍」
「そういうことだ。だからこそだ」
 劉鵬もそれに続く。
「竜魔も。また俺達もな」
「わかっているつもりだったがな」
 蘭子はそこまで話を聞いて沈痛な声を出した。
「しかし。それでも」
「納得してくれとは言わない。だが」
「そういうものだというのは知って欲しい」
「・・・・・・わかった」
 二人の言葉に頷く。それで承知することにしたのだ。
 
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