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魔法少女リリカルなのはStrikerS 前衛の守護者

作者:niko_25p
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第三十一話 次元漂流者

 
前書き
今回はかなり読み辛いかもしれません。申し訳ありません 

 
少年の口から出てきた次元漂流者という言葉。

遡るは7年前。

アスカから語られる事実とは?





魔法少女リリカルなのはStrikerS 前衛の守護者、始まります。





outside

シン……

アスカの言葉に、隊長室は静まりかえった。

「オレは……次元漂流者です」

なのはは最初、アスカが何を言っているのかが理解できなかった。

次元漂流者。

元いた世界から、何らかの要因で別世界に流れ着いてしまう者の総称である。

「次元漂流者って、じゃあアスカはいつからミッドに……あっ!」

言い掛けたシャーリーがある事に気づく。

「そう。記録が無い所までが日本で、記録のある所からミッドで、だよ」

アスカが答える。

「なぜ、ミッドチルダで生活を?」

シグナムの疑問はもっともだ。

管理外世界とはいえ、地球はミッドチルダと関わりが深い。

ましてエース・オブ・エースの出身地、日本であれば、すぐにでも管理局が送り返すだろう。

「ここまで言ったんです、全て話します。その前に、シャーリー。悪いけど、コレ片づけるの手伝って」

アスカは床に落として割ってしまったコーヒーカップを指した。

「あ、いいよ、私がやるから、アスカは座ってて」

シャーリーが手際よくそれを片づける。

その間に、アスカはどう話すかを考えていた。

自分の過去を。心の傷を。





菜音 飛鳥

アスカは紙に漢字を書いた。

「読めますか?」

なのは、フェイト、ヴィータ、シグナムがのぞき込む。漢字の時点で、シャーリーはリタイアしていた。

「珍しい名字だね。名前の方はアスカ君だもんね。サイネ?」

なのはが首を捻る。

ヴィータ、シグナムもそれなりに漢字は読めるが、これは読めなかった。

「はい、その通り、サイネです。サイネ アスカ」

「それが、アスカの本当の名前……」

シャーリーがアスカをマジマジと見る。

自分に遠慮の無いこの少年は、どんな過去を乗り越えてきたのだろうとシャーリーは思う。

「あ、だからミッドではザイオンを名乗っていたんだね」

ポン、とフェイトが手を叩く。

「どういう事です?」

シャーリーは、分かりませんとフェイトに尋ねた。

「この菜って字はザイって発音する場合があって、こちの音は、オト、ネの他にオンって発音するんだよ。この二つが合わさって、ザイオンになるよ」

「「な、なるほど!」」

合点がいったように、シャーリーとアスカが感心する。

「って、お前までなに納得してんだよ!」

当の本人であるアスカにツッコミを入れるヴィータ。

「いえ、オヤジがオレをミッドに登録する時に、名前をこうしたんですよ。まさかそんな事をしてたとは……洒落た事しやがって」

今更ながら、ウンウンと感慨深く頷くアスカ。

「オヤジ殿はお前の事を考えてそうしたのだろうな」

シグナムの言葉に、アスカは静かに微笑む。

そして、過去の出来事を話し始めた。

「遠い、遠い、笑えない話……です。まあ、気楽につきあってください」






一呼吸置き、アスカは語り始める。

「オレが次元漂流したのは、今から7年前、9歳の時です。

場所はミッドチルダ南部のアルトセイムの最南部の密林地帯でした。

当時のオレはそんな事は知らずに、迷子になったってずっと泣いてました。

1日経っても誰にも会えず、2日経っても同じ。さすがにそうなると考えますね。何とか生き残ろうって」

「待て。次元漂流してきたなら、管理局が捕捉している筈だ。アルトセイム最南部とは言え、発見できないとは考えづらい」

シグナムが疑問をぶつける。

「通常なら、次元震が起きますからね」

シャーリーの言う通り、次元漂流が起きる原因に次元震がある。

重コンビナート事故、航空機墜落、天変地異クラスの災害等の災厄に巻き込まれ、その凄まじいエネルギーによって次元の壁が歪み、次元震が起き、次元漂流する。

入口となる世界で発生したエネルギーが、出口となる世界に流れ込み、次元震動が起きる仕組みだ。

だとしたら、当時の管理局がアスカを発見できないとは考えられない。

「無かったんだよ、次元震。ほとんどな」

「まさか!」

アスカの言葉に、フェイトは信じられないと首を横に振る。

「原因は今も分かってないんです。でも、次元震がなかったのは本当です。その為、オレは半年もの間、密林地帯での生活を余儀なくされました」

「「「「「は、半年も!」」」」」

なのは達が驚くが、アスカは淡々と話を進める。

「きっと、サバイバリティが高かったんでしょうね。オレは何とか半年間生き延びました。ヘビでもカエルでも、何でも食えそうな物は食ってね。

オレが管理局に保護されたのは全くの偶然だったそうです。

忘れたけど、何かの調査団がアルトセイムを調べに来てて、そこでオレが発見されたの事です。

そのまま管理局の保護下に入りました。

オレが日本人である事はすぐに分かったらしいんですが、出身地を絞るのに時間がかかってしまって……」

「どういう事?」

なのはがアスカに聞く。

「半年間、野生児生活をしていたので、コミュニケーション能力が極端に低下していたらしいです。それに、健康状態も悪くて、色々聞き出すにも、まずは治療とリハビリが必要だったんです」

自分の事にもかかわらず、アスカはどこか他人事のように話す。

「どのくらい、リハビリに時間がかかったんだ?」

ヴィータが促す。

「発見されてから約半年……つまり、オレは1年間ミッドに居続けた訳です」

「1年って!」

「そんなに……」

なのはとフェイトの声には、悲しそうな響きがあった。

9歳の子供が何の知識もなく次元漂流して半年の間、誰もいない密林地帯で生き抜き、さらに半年の間、家に帰る事ができない。

どれだけ心細かっただろうか。

ヴィータ、シグナム、シャーリーも声を出せないでいた。

「次元震があれば発見も早かったんでしょうけどね。結局オレは1年間ミッドにいた訳です。

色々管理局が動いてくれて、やっとオレの出身地が分かって、帰れる日がきました」

その時、アスカは苦しそうに眉を寄せた。言葉を切り、大きく息を吸う。

「管理局員に付き添われて、オレは家に帰りました」

「そこで、お母さんとお父さんに会えたんだね」

「…………会えなかったよ。家には誰も居なかった」

シャーリーの言葉に、アスカは違うと言った。

「え……」

なぜ?とシャーリーが聞き返した。

「オレが次元漂流をしてから、父さんと母さんは色々探し回ったらしい。でも、見つからない。

それでも毎日の生活はある訳だから、父さんは仕事を続けながらオレを探していたらしいんです。

母さんも1日中家にいて、何か連絡が有ればすぐに動けるようにしていたらしいんですが……」

アスカの息が乱れる。落ち着こうとしているのか、何度も深呼吸を繰り返す。

「アスカ、大丈夫?」

心配したフェイトが近づこうとしたが、

「大丈夫です」

アスカはそのまま話を続けた。

「半年間、そんな生活をしていたからなんですかね。父さんは……赤信号の横断歩道を渡っている時に、車に跳ねられたんです」

「「「「「!!!」」」」」

「集中力が切れていたんでしょうね。信号に気づかず、即死だったそうです。母さんも……」

「アスカ!辛いなら話しちゃダメだよ!」

たまらずシャーリーがアスカに駆け寄って肩を掴む。

「いいんだ、シャーリー。もうここまで言ったんだ。最後まで話させてくれよ」

弱々しく笑うアスカ。

今まで見た事のない、儚い笑みにシャーリーは涙ぐむ。

「で、でも!」

「いいから座れよ」

アスカに言われ、シャーリーは仕方なく席に戻る。

「父さんが事故で亡くなって、それで限界がきちゃったんでしょうね。後を追うように、母さんは自分で……です」

静まりかえる隊長室。

アスカに何て声を掛けていいのか、誰も分からないでいた。

「……いま話している事は、後付けで管理局の人に聞いた事なんです。オレ、その時の記憶がなくて…両親が死んだ事を伝えた時、まるで感情が抜け落ちたみたいに、能面のようなツラをしていたみたですよ、オレ」

自嘲気味に笑うアスカ。誰もそれに答えられない。

「一回壊れたんですよ、心が。完全に……

泣いてなかったらしいです。ただ無表情に、そこにいただけだったらしくて」

アスカは話を続けた。

「どういう経緯でそうなったのかは知りませんが、オレは陸士099部隊長のドミニクに引き取られる事になりました。今から6年前です。

当時のオレは、とにかく反抗的でしたね。まるで、世界の全てが敵だってくらいにとんがってましたよ。

まして、同年代のいない部隊に放り込まれた訳ですからね。

何かあるたびに喧嘩ですよ。大人相手に殴り合いですよ?かないっこないのに。バカなガキだったんです。

訓練も大人と同じメニューをやって、ついていけずに脱落するんですけど、それでも続けて無茶やって。勝手なことばかりやってました。

それでもオヤジはオレの好き勝手を許してまして。まあ、殴られもしましたけど。

何でもガムシャラにやっていれば気が紛れて、そのうち元気になるだろうって思ってたらしいです。

そんな無茶をし続けて、部隊に入って1年が過ぎた時に、事故が起きました」

「山崩れに巻き込まれたってやつか?」

ヴィータの言葉に、アスカは頷く。

「あの日はいくつかの小隊に分かれて、山中に隠した旗を探すっていう訓練をしてました。朝から天候が悪くて、かなり荒れるかもしれないって通達がありました。

実際、大荒れの天気になって、オヤジから訓練を中止して撤退しろって命令が出されたんです。

でもオレは、それを無視して旗を探しに行ったんです。小隊から抜け出してね。何でだと思います?」

不意にアスカは問題をだす。

「そうだな、自分を周りに認めさせたいとか?今のティアナのように」

シグナムがティアナを引き合いに出して答えるが、アスカは違うと首を振る。

「当時のオレはそんなにポジティブじゃなかったですよ。

オレは旗を見つけて回収して帰ろうとしました。でも、途中から天候が最悪になりましてね。

大嵐になって身動きがとれなくなりました。

どうしようかと思っていた時、地鳴りがし始めて、その直後、地面が消えました」

「え?」

シャーリーが、どういうことかと声を上げる。

「山崩れが起きたんだよ。地面が消えるような感覚で土砂に飲み込まれてさ。

あぁ、もう死んだな、って心底そう思ったんだ。そうしたらさ……心が軽くなったんだ」

「アスカ、それって……」

悲しそうな目をしたフェイトがアスカを見つめる。

「えぇ、その通りです。厳しい訓練も、喧嘩も、命令違反も全て……自分が死にたがってやっていた事だったんです」

「………」

話の内容に、なのはは言葉が出ない。

「土砂に飲み込まれて行く瞬間、あぁ、これで死ねる。これで父さんと母さんに会えるって、単純にそう思って……オレ、死にたがってたんだと理解したんです」

何度目かの沈黙が隊長室を包む。

「気がついた時は病院のベッドの上でした。生きているって分かった時、また心が重くなったって感じました。

ふと横を見たら、泥だらけのオヤジがスゲェ怖い顔でオレを睨んでいるんですよ」

「それはそうだろうな。オヤジ殿は命令違反をして無茶したお前を心配し、同時に怒っているのだろうからな」

シグナムも似たような経験があるのか、ウンウンと頷く。

「オレもそう思いました。命令違反をして死にかけた事に対して怒られるだろうって思ったんですけど、オレにとってそんな事、どうでもよかったんです。ただ、無駄に生き延びたなって思って。

そんな事を考えてたら、いきなりオヤジにブン殴られましたよ」

「「「「「ええっ!!」」」」」

その展開にみんなが驚く。

「馬鹿野郎!って動けないのに何度も。

どうせなら、このまま殴り殺してくれればいいのにって思った時、オヤジがこう言ったんです。

馬鹿野郎!ガキが死にかけて安らかな顔してんじゃねぇ!って」

アスカは顔を伏せて目元を拭った。

「スンマセン……この話をするとちょっと…ね。

殴りながら言うんですよ。

お前が死にたいっていう気持ちを持っていたのは知っていた。それを捨てさせる事ができなかったのは俺の責任だ。

両親が亡くなって、独りぼっちになった寂しさを紛らわす事ができなかったのは部隊の責任だ。

俺達の力不足でお前を救えなかったのは、すまないと思っている。

でも生きろ!何をしてもいい!間違った事をしたら、俺達が全力で止めてやる!生きろ!管理局が嫌ならやめてもいい!

生きろ!両親の分まで生きろ!…てね」

泣いているのを見せたくないのか、アスカは顔を伏せたまま話す。

「……そうだったんだ」

もらい泣きしたシャーリーがアスカを見る。

「見るとさ、オヤジが泣いているんだよ。泣きながら殴ってきて。命令違反の事なんか一言も言わないでさ。

そんなオヤジの姿を見ていたら、オレも泣き出してさ。初めてだったよ。099に入って初めて泣いて。

泣きながら、ゴメンナサイって謝ったよ。何度も、何度も。

こんなに心配して、親身になって、愛してくれる人がいるなんて気づかなかったからさ。

心が熱くなって、この人なら…って思ったんだ。

その時からかな。オヤジって呼ぶようになったのは」

「……いいオヤジ殿だな」

「どうでしょうかね?その時、本当は全治1ヶ月だったのが、殴れたせいで折れた骨がズレて3ヶ月になったんですから」

「え?」

シグナムが思わず声を上げる。

「看護士さんに正座させられて怒られてましたからね…」

ゴン!

シャーリーが机に突っ伏して、オデコを豪快にぶつける。

「アスカ~、話にオチをつけなくてもいいわよ~」

「そんなつもりじゃないんだけど…どういう訳か、099出の奴って行動にオチがつくんだよ」

その言葉にヴィータが苦笑する。

「でもよ、それで家族になれた訳だ?」

「はい、バカなオヤジですけどね。オレを救出してから3日、そのまま付き添っていたらしくて。シャワーぐらい浴びたらいいのに、オレが目を覚ますまで頑として動かなかったそうですから」

「いいお父さんだよ。そうでしょ?」

「高町隊長…はい。バカで乱暴で品がない…自慢のオヤジです」

アスカは笑ってそう答えた。

そのおかげか、重苦しかった隊長室の空気は、いつの間にか軽くなっていた。

「オヤジは仲間を大切にしろって、よく言ってました。味方になるだけが大切にする訳じゃないとも言ってましたね。

反発しあって、腹の底から怒鳴りあって、殴り合って、でも見捨てるなって。

オヤジや099の仲間達はオレを見捨てなかった。だから、オレも見捨てない。

ティアナは大切な仲間だから、アイツが間違った道を進むなら、全力で止めてみせる。

乱入した理由は、そんな所ですね。たぶん」

アスカはそう締めくくり、なのはを見た。

「これが、アスカ・ザイオンの全てです」

アスカの視線を、真っ直ぐに受け止めるなのは。

「うん。ありがとう、アスカ君。ちゃんと話してくれて」

なのはは、はにかんだ笑顔を見せる。

(なんだってうちの隊長達は、年上なのにカワイイんだよ)

ちょっとだけ場違いな事を考えたアスカ。

「ティアナとも、ちゃんと落ち着いて話し合わないとダメだね。聞いてみないと分からない事もあるし。アスカ君みたいにね」

「お願いします、高町隊長。オレだけじゃティアナを助ける事ができません。アイツはフォワードに絶対必要なメンツですから」

アスカが頭を下げる。

「もちろんだよ、アスカ君。誰一人、いらない人なんていないんだから」

優しい笑顔で、なのはは答えた。





隊長室出たアスカは廊下を歩いて自室に戻ろうとしていた。

「アスカ君!ちょっといいかな?」

呼び止められ、アスカが振り向くと、なのはが歩いて近づいてきた。

「隊長、どうしたんですか?」

呼び止められたアスカが首を傾げる。

「部隊長に報告しに行くんだけど、1つ聞いてもいいかな?」

アスカに追いついたなのはが聞いてくる。

「え、と。さっきの事ですか?」

他に心当たりのないアスカ。

「ううん、全然違う事。アスカ君って、お兄さんとか居ない?」

アスカは思いも寄らなかった質問に戸惑いを見せる。

「え?一人っ子です。日本でも、ミッドでも」

「そう……ごめんね、へんな事聞いて」

少し残念そうになのはは答える。

「なんでそんな事を聞いたんです?」

不思議そうに、今度はアスカが聞く。

「えーとね。子供の頃、近くに住んでいた魔導師のお兄さんがアスカ君に似ていたかなって思って。もしかしたらって思ったんだけど、違うみたいだね」

「そうですね。でも、近くに住んでいた魔導師のお兄さんって、日本で考えてみたら、少しシュールですね?」

「あはは、そうだね」

そう言って、アスカとなのはは笑いあった。

 
 

 
後書き
えーと、今回はかなり文章が荒れてしまいました。
かなり読みづらいかもしれません。もうしわけありません。
今回はアスカの語りが多かったので、一人称にした方が良かったのかもしれません。
文章を書くって難しいです。

さて、アスカの過去の傷を今回表してみましたが、いかがだったでしょうか?
次元漂流して、そのままミッドで暮らす事になったアスカ。
実は、このエピソードは相当悩みました。主人公らしい暗い過去にしようと思って、
1ヶ月くらい考えてました。
結構ヘビーな過去だと思います。

最後のほうでなのはが言っていた「近所の魔導師のお兄さん」は結構なキーパーソンに
なります。
ちなみに、派遣任務の時にシグナムが温泉で回想していた人物と同一人物です。

とりあえず、主人子の引き出しは一通り出したので、この山を越えれば新展開にもってけます。
……まだネガティブキャンペーンが続いてますが、さっさと終わらせたいです。

次回、ついにティアナがキレます。それを止める為にアスカのとった手段は?
更に、なのはに対してとんでもない暴言を吐きます。
 
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